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〔座談会〕

第11回全日本ホルスタイン共進会・第3回全日本ジャージー共進会開催に向けて

座談会出席者(順不同 敬称略)
岡山県農林水産部畜産課 課  長 有富 敬典
岡山県酪農農業協同組合連合会 代表理事会長 山崎 博文
社団法人岡山県観光連盟 専務理事 頼正 利生
岡山県乳用牛改良協議 会  長 森田 一文
岡山県酪農女性協議会 委員長 安富 三代
(司 会)
社団法人岡山県畜産会 専務理事 赤木 三夫

赤木  お忙しい中,「ファームフェスタ2000inおかやま」座談会にお越し下さいましてありがとうございます。今年,第11回全日本ホルスタイン共進会並びに第3回ジャージー共進会を中心としたファームフェスタ2000inおかおまが岡山県灘崎町のファーマーズマーケット及び周辺で開催されるということで,いろいろと関係者の皆さんがご努力されております。畜産会としても広くPRしてお役に立つように,このように座談会を開催し,「岡山県畜産便り」新春号に掲載する運びとなりましたので,よろしくお願いします。

岡山らしい全共とは

赤木 先ず,実行委員会事務局長の有富畜産課長より,今回の共進会の果たす役割・強調したい特徴をご説明いただきたいと思います。
有富 会期は,平成12年11月2日から5日間の4日間です。会場は既存施設を活用するということで灘崎町に決定されました。当初,ファーマーズマーケットだけで行おうと考えましたが狭いので,灘崎町のご好意により,今度の岡山国体の少年サッカー場建設予定地も活用させていただくこととしました。
 この共進会は5年に1度開催される乳牛のオリンピックです。中四国は初めてで,西日本でも熊本に次いで2回目です。今回はホルスタイン共進会に加えて,岡山らしさという点から第3回のジャージー共進会も併せて開催します。出品頭数もホルスタイン300頭に,ジャージー60頭を加えまして,360頭となり,過去最大規模の共進会です。
 単に共進会だけでなく,消費者と酪農関係者とのふれあい・交流といったものを通じて牛乳消費拡大も図っていきたいと思っています。岡山の観光・文化を県外の人にPRする絶好の機会でもあり,前々回の熊本大会に匹敵する来客65万人を目標にして準備を進めています。
 また,最近の酪農情勢が厳しい環境の中で,安定した酪農経営を進めるためには,乳用牛の個々の能力を向上させることが重要であり,共進会は意義あることであろうと思っております。
赤木 ありがとうございました。続きまして共進会の役割や岡山県らしさを出すということにつきまして,県酪連の山崎会長さんよりお願いします。
山崎 岡山県の現在の酪農戸数が昨年で約700戸に減少しております。実は,熊本大会の次は岡山でと,一生懸命運動しましたが,千葉県開催となりました。この10年間は岡山県だけでなく全国的に,畜産の選抜淘汰が激しく行われた時代であったと思います。その中で岡山県は新しい方策を見つけていかないといけないという意味で今回の共進会にジャージーを併設してくれとお願いしました。これによって700戸の酪農家の精神的な支え,あるいは一つの起爆剤にするという酪農家の思いをもとに,共進会をやり遂げて,明日につなげていこうと思っています。
 そして,岡山県の全酪農家の方に一度は会場にお越しをお願いしたいと思っています。
 4日間で,実質的な経費が5億円以上と大きな負担となり,多くの皆さんのご支援を頂いて開催しますのでどうしても成功させなければいけません。また,今回は初回開催から50年になり一つの節目として派手にならないよう全力で取り組んでいきたいと思います。
 そして,共進会の意義というものを如何に酪農家に結びつけるかが重要であります。
赤木 森田さんは,15年前に,私と岩手大会に一緒に出かけましたが,その当時から次は是非岡山へ共進会を誘致してくれと,積極的に共進会誘致に力を入れられてこられました。その都度全共に出品されている森田さんからひとことお願いします。
森田 岡山の酪農は,前回開催の千葉県,そして熊本県,群馬県,兵庫県,これらの開催県に比べたらやや見劣りがします。そこで全共をやるというのはたいへんです。県及び県酪連の厚い指導をいただき一昨年と昨年で北海道の良い牛を導入するなど全共に向けてがんばっています。
 酪農界は低迷しているけれども,全力で取り組んでいる岡山の力を他県は高く評価してくれていると思います。
赤木 続きまして今日紅一点であります安富さんに,女性の立場から岡山県で全共をやれるということにつきまして,ひとことお願いします。
安富 全共を見学に行ったことがないので,千葉全共に行った人や主人の話を聞くだけで,あまり実際のイメージがわきません。しかし,岡山らしさ,「晴れの国」岡山をだすことがいちばんではないのかと感じます。千葉では非常に花がきれいだったそうです。会場となるファーマーズマーケットの花広場,イベント広場がきれいなので,そんな中で女性が何ができるのかな?ということを考えると,その景観を利用するということが大切だと思います。
 おそらく,私たち女性がお力になり,岡山らしさを出せるのは,催事広場になるのではと思っています。私はそのあたりを協力していきたいなと思っています。酪農女性協議会の委員会でも全共が近づいて気分が盛り上がってきているようです。

出品牛選抜の現状

赤木 続きまして,本県出品牛の選抜の現状につきまして山崎会長よりお願いします。
山崎 本県はホルスタイン30頭,ジャージー20頭の出品枠をいただいています。それに対して,出品頭数の3倍を集めて最終選抜を行うという考えできています。平成12年9月23日に最終選抜を行うことが先日決定しました。そこで,150頭,200頭と候補牛を巡回指導しながら隠れている牛を掘り出していこうとしています。それだけ幅広く見ていけば,どの部分が弱いのかということが判ってきます。経産牛でも産の進んでいるものがどうも弱いようで,昨年5頭ほど緊急導入しており,この牛が活躍してくれるだろうと思っています。そうかといって北海道から買ってきた牛が半年もすれば体型等を崩してしまう可能性もありますので,よい状態を保ったままで全共に行けるようにしなければと思っています。私は大勢の農家を巡回指導してきたことには意義があると思います。
赤木 それでは,候補牛をたくさん持っておられる,大ベテランの森田さんに見通しについて,お願いしたいと思います。
森田 経産牛の10部・11部・12部は県の手厚い支援の中で,北海道がいかなる牛群をもってきても素質的には負けない自信があります。今の牛は改良度が進んでいるだけに3ヶ月で体型を崩してしまいます。すべての人が優良体型牛をいれていますが,牛舎に繋いだ人が,大きなプレッシャーの中で問題点を抱えて夜も眠れないくらい悩んでいます。種付けの時期,それをクリアした人は次の悩みと大変な状況です。これからの残された300日をいかに管理していくかが大切で,管理共進会と私はいいますが,どう管理するかが大きな課題です。
 問題は若牛の1部から9部です。全国レベルの牛が今の時点では1頭もいないと思っています。
 これからもみんなにハッパをかけていきたいと思います。県や県酪連も10部・11部・12部を確保するということでやっきになっていましたが,1部から9部が手薄になっていたと思います。
 私は最終審査が平成12年9月23日では遅いと思います。決まってからの期間が短いだけに,それからの集中指導がやりにくい,それまでに個々に努力してもらわないといけないでしょう。
山崎 最重要だということで対応させてもらった10部・11部・12部が揃ったということで,1部から9部が劣って見えてくるのではないでしょうか。
 若い牛はよく運動させなければいけませんので運動器の補助,良い乾草を食べさせないといけないので乾草の補助をしています。
 ジャージー共進会は農林水産大臣賞の関係で出品頭数60頭と決まりました。そのうち20頭が岡山県に割り当てられました。ホルスタインに比べて,ジャージーの改良は10年遅れていると思います。岡山のジャージー,日本のジャージーということではなく全体的に遅れています。強さであるとか産乳性はそこそこですが,背線などはよそに比べて遅れていると思っています。そうはいっても岡山では蒜山しかいないということで,受精卵で対応しましたが,受精卵の着床率が悪い上に,できたものは雄と雌が半々になるわけですから効率が悪い。しかし,ここ2年で我々の目から見てもジャージーは変わってきました。やっぱり共進会に対する考え方が変わってきているのです。牛の良いのをマッチングすればいい成績が取れるのではないかと思っています。
森田 余談ですが,酪農大学校第二牧場は岡山県共のレベルを遥かに超えている牛がたくさんおり,選抜を誤っているなと感じました。
有富 牛を見てそういう指摘,選抜をしていただきたいと思います。
山崎 ジャージーは数が少ないしホルスタインよりも難しいだろうと思っています。
森田 ジャージーは確実に全頭入賞してもらわなくてはなりません。ホルスタインも全頭入賞を目標にしています。

岡山らしいイベント

赤木 続きまして,この共進会では乳牛だけの共進会ではなく,岡山県の良さをPRしていかなければいけません。そういうことで観光連盟の専務さんの方から特にPRしたい点についてお願いします。
頼正 観光岡山のサイドからいいますと,一つは2000年が岡山の後楽園の築庭300年という記念すべき年にあたっていること。もう一つがこの共進会を全国的な大きなコンベンションととらえていることです。全国各地から,たくさんの方が集まってくるわけですが,岡山というイメージが全国レベルでいいますと低いというのが我々の実感で,岡山の認知度を高めなければいけないと感じ取ったわけです。そういう意味で,共進会によって,ふれあいと交流ができることで,岡山の良さというものをおおいにPRできるのではないかと考えます。
 夏から秋にかけて今年の大型観光キャンペーンを実施します。その大型キャンペーンの中のメインイベントとしてこの共進会を位置づけ,観光サイドからもPRしていきたいと思っております。我々とすれば来ていただく多くの方々に,岡山県の良さを味わってもらって楽しんでもらうルートづくり,観光コースづくりを十分提案して,岡山に来て良かったという印象を持っていただくようにと考えております。
赤木 県の畜産課長さんからもお願いします。
有富 晴れの国岡山ということで全国的にPRされているわけですが,イベントについても全部晴れるという言葉に関連したゾーンを作っています。例えば,ふれあいゾーンは日溜まり広場,グルメゾーンについては太陽食堂,イベントゾーンは青空劇場,ふるさと自慢ゾーンは小春日市場というふうに…。
イベントの主な内容は,展示ゾーンでは酪農の新しい機械や技術などの展示を考えています。牛乳乳製品を酪農関係者だけでなく一般の方にも広く知っていただこうということで,例えば,搾乳コーナーを設けて体験ができるようにしたいと思っています。変わったところでは,県内だけでなく幅広く,中四国で有名な郷土芸能などに参加を要請しています。いずれにしても,岡山を良く知っていただく機会ですから,酪農関係だけでなく幅広い参加をいただいて,多くの方が来ていただけるような催しにしたいと思っています。

県産農畜産物のPR

赤木 続きまして岡山県には多くの畜産物・乳製品があり,これをPRするのにも絶好の機会です。
 安富さんは自分でも乳製品を作っておられますので,乳製品のPRについてお話がございましたら宜しくお願いします。
安富 酪農は女性が支えているので,私たち女性部がファーマーズマーケットまで出向き,4日間,乳製品をPRしたり試食をしていただきたいのですが難しいかなと感じています。
 全戸参加していただきたいということは山々なんですけれど…。個人的にはアイスクリームを販売していますが,酪農をしながらそちらもするという難しさがあります。しかし,是非ともやりたいことは牛乳を使ったものを試食してもらうことで,岡山の特産のものを使ってやりたいと考えています。
山崎 大枠は中央の団体でやってもらった方がよいと思います。例えば,牛乳の紹介パネルなどは全国牛乳普及協会でやってくれるとか,すみ分けしていかないとだぶってしまうんです。実行委員会において詰めておくことが先ですね。そのあと,地元の方がどういった形で行うかということが大事でしょう。
有富 もうひとつ,農畜産業振興事業団が全国規模の畜産特産物フェアを毎年行っています。これが事業規模で3,000万円ですが,それを全共でやろうという話になっています。これは全国からの畜産乳製品を持ってきて試食や販売をしますので,多くの消費者の方を集めるためには効果があると思っています。
安富 私たち女性協議会を,(実行委員会の)メンバーに加えていただけたら少しでもお手伝いができるのではないかと思っています。
森田 全国ネットでは岡山らしさがでないのではないでしょうか。岡山らしさをだそうとすれば,やはり女性部の人に中心になってもらいたいのですが,きつければ,二交代でも対応していただいて,1戸から2度くらい参加してもらうような雰囲気をつくっていかなければ,岡山らしさがにじみ出ないと思います。
山崎 酪農婦人部だけでは難しいので,商工会の婦人部の方々にも協力していただきたいと思っています。何も乳製品だけでなく特産品もPRしてもらえばよいわけです。
赤木 頼正さんは全国をまわっておられます。そういう立場から岡山らしさをだすという点で何かお考えがございましたらお願いします。
頼正 イベントでお客さんを集めるのには食べること,物を売ることが必要です。観光PRだけしてもだめで,物を売って,試食して,体験するというのが良いですね。こうしないとお客さんが来てくれません。そういう意味で,できるだけたくさんの物を売り,好きな物を食べてもらう。乳製品,肉製品だけでなく,例えば,ばらずしや魚もあります。こういうものを寄せて一緒にやるという形をしていかないとなかなか盛り上がりに欠けると思います。
赤木 イベント関連で畜産課長の方が計画されていることがあればお聞かせ下さい。
有富 一番頭が痛いのは,来客65万人を計画していることです。そのため有名タレント等を呼ばなければ人はなかなか来てくれません。これにはお金がかかります。どのような人を呼ぶかは最終的に施設整備をした後の予算次第で決まるでしょう。

共進会場へのアクセス

赤木 会場に行くため,皆さんご存知のように交通の便利が悪いので交通渋滞が予想されるのですが,シャトルバスの運行など交通アクセスについて畜産課長よりお願いします。
有富 メインの道路はR30号ですが,これだけを頼りにしたらたいへんな渋滞になってしまいます。自家用車で来られる方には極力,会場から離れたところに駐車場を確保することを考えています。具体的には環境保健センターで5,000台,そこが一番大きなところですが,そのほかにも岡山駅操車場跡地,また,県外からの人たちのことを考えて水島インターの近く等に駐車場を確保し,そこからシャトルバスで運びます。会場の近くには関係者だけの駐車場を考えています。それともう一つ,全国に対して公共交通機関を利用していただくようにPRしていかなければなりません。JRについては宇野線の臨時列車を交渉中です。そうすれば,備前片岡駅から歩いてすぐですから。
赤木 観光連盟の頼正さん,県外から来られる人が多いと思うのですが,ご要望がございましたらお願いします。
頼正 やはり一番重要なことは足の確保です。どういうルートをつくってあげるかということが重要です。まず,自家用車の人にはシャトルバスがあります。公共交通では,瀬戸大橋線の臨時列車があれば良いのですが,観光サイドから要望したいのは,倉敷とのルートをつくって欲しいということです。
 岡山,ファーマーズマーケット,倉敷の三角形のルートが絶対いるのではないかと思います。できれば,ファーマーズマーケットから倉敷に直通バスもバス会社にお願いしていただけたら,我々観光サイドからありがたいのですが。
山崎 シャトルバスというのは良い考えです。渋滞が予想されるのでバス専用のルートが必要ではないでしょうか。
 千葉では駐車場を離れたところに用意していましたがほとんど使われなかったようです。一番多かったのはJR。駅から歩くのに1q以上ありましたが,それでもJRを使っていました。
 備前片岡駅から500mなら,そちらの便数を増やした方が確実なんじゃないかと思います。
有富 瀬戸大橋線は無理ですが,宇野線は運行できる限り対応しましょうというお話でした。茶屋町からの臨時列車を考えています。

成功に向けて

赤木 最後になりますけれど,共進会の成功に向けて,一言ずつお願いします。
山崎 これだけ大きなイベントで成功するということは,とにかく共進会で優秀な成績を得るということです。全頭前にでるんだと,ということを目標にしています。大きな負担を酪農家にお願いするわけですから,酪農家の人を午前10時に出て,午後4時に帰れるようなバスを組み立ててでも,すべての酪農家が参加するようにしたいと思います。これも全共を成功させることだと考えています。
森田 成績イコール成功だと考えています。ジャージーは全頭入賞で,ホルスタインも全頭入賞をめざします。全頭入賞させれば2桁の優等賞がでるであろうと思っています。これからの管理次第ですが,確実に名誉賞を取りにいきます。
安富 私も生産者の立場で全戸から全員参加を願い,末端までお伝えできればと思っています。余力があれば,催事の方も協力したいなと思っています。
頼正 県外からのお客様に対する「暖かいおもてなし運動」を昨年からすすめています。やはり旅館やホテルに泊まる,バスに乗る,タクシーに乗る,夜,飲みに行く,岡山の人に接して良い印象を是非持っていただきたいと思います。このことを観光業界あげて実践していきたいと考えています。
有富 優秀な成績をあげるのは当然なのですが,それに加えまして65万人のお客様に来ていただくことが成功だと考えています。先ほど頼正専務が言われましたとおり,お客様が来たときに特に,交通の便とか食べ物関係に手落ちにならないようにしたいと思います。
 いずれにいたしましても2000年という節目の年での記念すべき一大イベントですから,全国から来られた方が,岡山へ来て良かったなあといってもらえるようにしたいものです。今後とも,県とか畜産関係だけということでなく,幅広い協力をいただいて成功させたいと思っております。
赤木 皆さん方には大変お忙しい中,貴重なお話を賜り,ありがとうございました。今回の共進会は乳牛の祭典だけでなく,岡山らしさをPRできる場としても,成功できるようお祈りいたしまして,本日の座談会を閉じたいと思います。