ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り2000年1月号 > 化学発光測定による乳房炎の早期診断法

〔技術のページ〕

化学発光測定による乳房炎の早期診断法

岡山県井笠家畜保健衛生所

 病原菌の感染に伴い,組織に集まってきた好中球などの貪食細胞は,スーパーオキシド(O2)や過酸化水素(H2O2)などの活性酸素を放出し,細菌を貪食・殺菌する。この際に,貪食細胞は微弱な化学発光を行い,且つその発光量は殺菌能力に比例することが知られている。
 この化学発光を増幅して定量する機種が様々開発されており,貪食細胞の殺菌能測定の他,生体高分子化合物の分析,DNAフローブアッセイあるいはATPや代謝活性の測定などに広く応用されている。
 現在,家畜の感染性疾病の診断についても化学発光測定法を応用しようとする試みがなされており,中でも乳房炎の早期診断法として利用する研究が農林水産省家畜衛生試験場で進められている。
 本診断法の特徴として,乳房への細菌感染とほぼ同時に乳房内に集まってくる貪食細胞の抗菌活性上昇度を簡便且つ迅速に検出することである。感染初期から重度の慢性期まで,乳房炎のすべてのステージで診断可能である(図1)。


 

また,乳汁中のたとえわずかな数の貪食細胞でも,その殺菌能を捉えられるため,これまで診断の難しかった乳房への細菌感染のごく初期の段階を検出することが可能である(図2)。
 さらに,化学発光能の上昇は,PLテスターの陽転化と乳汁体細胞数の増加に良く相関することが報告されている。
 乳房炎防除の原則はいかに早く発見し,対策を講じられるか否かにかかっているので,本診断法がその一助となることが期待されている。