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黒毛和種の肥育技術とビタミンA

岡山県総合畜産センター   
大家畜部 額 田 和 敬

1.はじめに

 和牛肥育農家等では10年以上前からビタミンA欠乏飼料を給与し,血中のビタミンA濃度を低い状態にすることで,脂肪交雑を高める肥育が行われてきました。
 肉質がよいものほど血中のビタミンA濃度が低いことがわかっていましたが,最近では,ビタミンAが脂肪交雑の形成に関与する機構も次第に明確になっています。当センターにおいてもビタミンAの給与試験を実施していますのでね,その結果もふまえて述べてみます。

2.増体,肉質に対する影響

 当センターでは平成9年から家畜改良センター,鹿児島県畜産試験場等と共同研究で,一卵性双子及び全兄弟を用いた肥育試験を実施しました。これらの試験から,肥育前期及び中期にビタミンAを無添加で,肥育後期に日本飼料標準の50%量を添加した区(制限区)と,全ての期間に日本飼料標準の50%量を添加した区(給与区)では,枝肉重量で給与区の方がよく,脂肪交雑で制限区の方がよくなっていました。制限区において食欲不振,関節腫脹が一部に見られました。また,肉眼的ではありますが,制限区において肉色が淡い傾向にありました。
 この試験結果や既に報告されている結果からみて,血中のビタミンA濃度と肉質には負の相関があり,ビタミンA濃度が低いほど脂肪交雑がよくなり,また,肉色が淡くなる傾向が認められました。最近の兵庫県中央農業技術センター及び大分県畜産試験場の報告から,肥育前期から中期にかけてビタミンAの投与量を制限すると,増体を維持しながら脂肪交雑がよくなることがわかりました。

3.ビタミンAの給与法

 和牛去勢肥育牛へのビタミンAの給与法は,肥育前期にビタミンAを充分に投与し,血中のビタミンA濃度が80〜100IU/qと正常な範囲になるようにします。肥育中期では,ビタミンAを低量または無投与することで血中の濃度を40〜50IU/qまで下げ,脂肪細胞の分化を高めます。肥育後期には,ビタミンAを再び投与して,血中の濃度を50〜60IU/qに維持し,増体と肉質を保ちながらビタミンA欠乏症を防止します。
 ビタミンAの投与については,ビタミンA無添加飼料に毎日必要量を混ぜて給与する経口投与が一般的ですが,投与が必要な時期に約2カ月間隔で必要量を一度に筋肉注射により投与する方法もあります。
 いずれにしても,血中のビタミンA濃度が上記に示すような値にすることが必要です。そのための投与量は,品種,給与飼料によって違いがあり,まだ明確な基準はありませんが,大分県畜産試験場の例によりますと,飼料に添加する場合,肥育前期にビタミンAを3,000IU/日から7,000IU/日に増加し,肥育中期に7,000IU/日から0IU/日に減少し,肥育後期に5,000IU/日を給与します。
 ビタミンAが欠乏しますと,まず食欲がおち増体が低下し,症状が進むと四肢の浮腫,視覚障害が発生しますので,ビタミンAを直ちに投与しなければなりません。50万IUの筋肉注射ですぐ回復しますが,再発を防ぐために飼料からの経口投与がよいです。

4.ま と め

 肥育の各時期に合った適正なビタミンA量を給与して,ビタミンAの欠乏症を起こさず肉量のある高品質な牛肉を生産していくことが重要です。ビタミンAは肉質に影響する重要な要因と思いますが,ビタミンAの給与技術と同時に飼料成分,ストレスなどの他の条件も合わせて考えながら,安全で美味しい牛肉づくりを目指すことが必要です。