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〔普及現場からの報告〕

酪農家と和牛農家が共存共栄

 −津山市受精卵移植研究会の取り組み−

津山農業改良普及センター

 本県における受精卵移植は,昭和57年,県の試験研究機関での技術開発をかわきりに,今日まで各地域のグループで取り組みがなされてきているが,高度な技術が要求されるとともに,コスト面等から成果をあげているグループは少ないようである。そのような中で,受精卵移植技術の定着に積極的に取り組み,着実に成果をあげている津山市受精卵移植研究会(永礼幸雄会長)の取り組みを紹介する。

1.当研究会の概要

 当研究会は,平成元年,県下でいち早く受精卵移植を活用した乳牛の改良と和牛の増産を図ることを目的として11人で結成された。現在は会員も41人(酪農家30人,和牛農家11人)に増え,和牛の改良にも重点を置いている。

2.研究会の取り組みとその成果

 (1)優良な供卵牛の確保

  津山市では,独自に優良肉用基礎雌牛の保留事業を実施しており,この事業で認定された保留牛を供卵牛として活用することと雌産子の地域内保留を義務づけるなど優良な供卵牛が多数確保できる体制が整っている。

 (2)受卵牛の確保と移植

  研究会には30人の酪農家が入っており,受卵牛が多数確保されている。採取した和牛受精卵は会員である酪農家の乳牛に移植を行っており,生産された子牛は,供卵牛の飼養者である和牛農家が引き取っている。受精卵移植によって得た子牛は,原則として地域内に保留することとしている。
  平成10年度までの採卵,受精卵移植実績は,表1のとおりである。乳牛は99頭に移植し33頭が受胎,和牛は219頭に移植し90頭が受胎している。うち,乳牛,和牛合わせて90頭が分娩している。酪農家では,一昨年から雌雄判別卵(乳牛)の移植も始めた。

 (3)成 果

  このような取り組みの結果,和牛農家では,改良速度が早まり,育種価が着実に高まってきた。酪農家から和牛子牛を買い戻すことで子牛生産頭数の増加(=飼養規模拡大)にもつながっている。酪農家においても,牛群改良のほか,受精卵移植によって得た和牛子牛を和牛農家に販売することで経営安定につながっている。(以上のことが評価され,平成10年度岡山県農林漁業近代化表彰を受賞。)
  このように酪農家と和牛農家が連携することで,共存共栄の体制が確立されている。