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〔特集〕

ロールベール・ラップサイレージの調製と利用技術

社団法人 岡山県畜産会  
川上 昭美

1.はじめに
 酪農および肉用牛経営の安定を図るためには,自給飼料を低コストで生産し,効率的に利用する技術の定着化が必要であります。
 このような中で,ここ数年急速な普及をみているロールベール・ラップサイレージ体系は,作業の高能率化,天候に比較的左右されない収穫調製作業,サイロ等の施設費の低減など多くのメリットがあり,今後も普及するものと思われます。しかし,調製技術には今尚問題点があり,平成11年度岡山県自給飼料調製技術共励会の成績についてみますと全般的には品質が向上していますが,今後改善を要する点が多く見られます。ここで,ロールベール・ラップサイレージの調製と利用技術の基本について検討し,良質のサイレージが安定的に調製できる技術の確立を図りたいと思います。

2.自給飼料調製技術共励会の成績
 平成11年度岡山県自給飼料調製技術共励会のサイレージの部の出品点数はイタリアンライグラス22点,スーダングラス・スーダン型ソルガム14点でありました。このうちロールベール・ラップサイレージがイタリアンライグラスで18点(82%),スーダングラス・スーダン型ソルガムで14点(100%)となっており,ロールベール・ラップサイレージのウェートが高くなっています。
 表1はロールベール・ラップサイレージのみについて品質評価をとりまとめたものでありますが,材料の草種についてみますと,イタリアンライグラスは全般に良質の製品ができていますが,スーダングラス・スーダン型ソルガムについては品質の劣る製品があり,今後改善を要する点があります。
 水分については極端に低いものから高水分のものまで幅が広く,特に高水分のものに酪酸含量の多い品質の劣るものが見られます。
 DCP・TDN含量は材料の生育ステージが関係しており,収穫の遅れたものに含量の低いものが見られます。また,土壌や堆きゅう肥,雑草を一緒に拾い上げ,梱包したものは品質が悪くなっています。

3.ロールベール・ラップサイレージ体系に適した草種と栽培のポイント
 年間を通じてロールベール体系にするためにはベーラーの特性から茎が細いグラスタイプのものに限定されるため,その体系に適した草種の導入が基本となります。
 寒地型永年牧草ではオーチャードグラス,トールフェスク,アカクローバ,シロクローバ等の混播牧草は周年利用でき適草種です。また,アルファルファも水分調節を行なえば良質のサイレージができます。
 秋冬作ではイタリアンライグラスが収量が多く,茎が細いので最も適しています。エンバク,ライムギ,オオムギは生育が進むと茎が硬くなりますので早目に収穫すると良質のサイレージが調製できます。
 春夏作ではスーダングラスかソルガムのうちスーダン型の細茎の品種を使用し,播種量を普通栽培の2倍量ぐらいにして密植することによって茎を細くし,梱包しやすくします。他に,栽培ビエ,ローズグラス,ギニアグラスがありますがいずれも早く硬くなり家畜の嗜好性が良くありません。
 転作田などで排水の悪い圃場ではリードカナリーグラスを栽培し,出穂初期までに刈り取ると良質のサイレージができます。

4.サイレージ調製技術のポイント
 (1) 材料を適期に刈る。
 一般に若い生育時期のものほど乾物中の栄養価が高いが,余り若いうちに刈れば限られた面積からの飼料成分収量が低下し,しかも,品質の劣るサイレージができやすい。一方,生育が進み過ぎると乾物収量は増加しますが硬化し,家畜の嗜好性が低下します。したがって,牧草類は,イネ科牧草で穂ばらみ期から出穂初期,マメ科牧草で出蕾期から開花初期が適期と言えます。
 (2) 材料の水分含量を調節する。
 ロールベール・ラップサイレージの調製に適した水分含量は40〜50%と言われており,刈り取り直後の牧草類は約80%の水分を含んでいますので予乾を行ない水分を落さなければなりません。
 予乾日数は刈り取り時期や収量によって異なりますが,モァーコンディショナーの利用や反転回数の増加によって短縮することができます。
 一般に水分含量が少ない方が良質のサイレージができます。しかし,35%以下に低下しますと開封後の変敗が急速に進みます。
 (3) 密封して気密状態にする。
 梱包後なるべく早くラップして密封し,気密状態にします。ロールベールサイレージの場合は,固定サイロ利用の場合より密度が低いのでいっそう密封を早め,梱包後3時間以内にラップすることが重要です。梱包後,密封時間の経過とともに,ベール中心温度が上昇し,密封が24時間遅れた場合,密封後2〜3日後に50℃前後まで上昇し,品質が低下していることがわかっています。
 (4) 夾雑物の混入を防止する。
 材料を刈り取り集草する時に土砂や堆きゅう肥,雑草が混入すると,サイレージ発酵を阻害する雑菌や微生物が混入しており,酪酸発酵を助長して品質を低下させますのでその防止に努めなければなりません。そのためには,牧草の反転や集草作業中に,レーキを余り深く地面に接触させないことと,回転を早くしない配慮が必要です。
 (5) ラップサイロの鳥・虫害を防止する。
 ラップサイロの保管場所が雑草に覆われている場合には,ネズミや昆虫が住みつき,被害を被ることが多いので保管場所は常に清潔な状態に保つことが重要です。
 カラスなどの鳥害対策としては,ラップサイロの上空をテグスやひもを張り巡らすか,防鳥ネットや防風ネットで全体を覆う方法があります。

5.ラップサイロの省力的な解体・給餌方法
 ロールベール体系では調製したラップサイロの解体〜給餌の省力化が大きな課題になっています。解体・給餌の省力化は牛の飼い方や牛舎の構造に深く関連しています。例えば,パドック等の舎外の放し飼いでは,ロスの多発に注意すれば草架等の利用によって極めて省力的に行えます。しかし,舎内の繋ぎ飼いでは,ベールの解しや切断,運搬,さらにはTMR給与で混合作業も加わることになり,毎日の作業であるだけに,一層の省力化が望まれるところです。
 ここでは,舎内でのいくつかの方法を紹介します。
 (1) 人力による解体方法
  @ロールベールを従置きにし,ベール表層から巻戻し方向に,層状に解す方法
  Aベール外周から中心方向にカッターやナイフで切り開く方法
  B対頭式牛舎の中央通路で,巻戻し方向に転がしてマット状に解体する方法等があります。
 (2) 機械を利用する解体方法
  @レシプロ刃等の切断専用機でベールを大きく輪切りや従切りにする方法で,切断によって取り扱いやすくなりますが,人力解体と同様に運ぶ手間が残ります。
  Aトラクターけん引式の切断・給餌の兼用機で,各種の切断機構の違うタイプがあります。いずれも走行しながらベール外周から切断して給餌していきます。給与量のむらが避けられませんが機械走行が可能な牛舎ではかなり省力化が可能です。
  B複数の切断刃付きスクリューをもつトラクター牽引式大型ミキサーを使い,ベールを解体・切断しながら濃厚飼料と混合調製し,一気にロールベールのTMRに調製を行うもので,切断長も短かくなり高能率ですが,80PS程度以上のトラクターが必要であり,また,部分解体が難しく1回の調製量が多くなるので大規模経営向きです。