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〔地域情報〕

加茂川町ストックファーム

〜公共育成牧場の新たな展開〜

岡山地方振興局農業振興課畜産係

 加茂川町は吉備高原に位置し,近年は過疎化や高齢化に悩まされているが,諸般のマイナス条件を逆に町の魅力に結びつけ,個性的で活力ある町づくりを展開している。そのスピリットはキャッチフレーズ「ハートオブ岡山」にもよく表現されており,中山間の豊かな自然と暖かな人の心がそこにある。
 こうした町ぐるみの活性化の取り組みの中,昭和43年に町営の公共育成牧場として発足した加茂川町ストックファームも,当初は文字どおりの乳牛育成の場であったが,平成5年から「牧歌的な景観づくり」及び「都市住民との交流」をテーマに牧場の施設改造が始まり,地どりの加工施設や天体観測施設「ガリレオ」も整備され,都市住民に魅力的な農業施設として,今や町の活性化の重要拠点に変貌しつつある。そして,平成10年から「畜産を核とした地域振興」をテーマとして新たな取り組みが始まっている。

◆ブラウンスイス・アイスの製造・販売
 平成2年に町に導入されたブラウンスイスは,既に酪農家の手作りチーズの原料生産牛として定着しているが,全国的にも珍しい品種であることから,さらにアイスクリームやソフトクリームに加工して販売することとなった。平成10年に加工施設を整備し,平成11年8月に販売を開始したところ,好評のため,同年12月にはカナダから新たに4頭のブラウンスイスを町有牛として導入し,専用の搾乳施設も平成11年度整備中である。

◆ET和牛子牛の哺育・育成
 町は酪農家と連携して生産されたET和牛子牛を買い上げ,本年度整備中のカウフィーダー(自動哺育器)で哺育・育成する事業に着手する。これにより,酪農家はET和牛子牛の生産を副業として安心して取り組めるようになるし,和牛子牛の出荷増頭や繁殖雌牛の改良促進も期待される。

◆多機能型の和牛繁殖牛舎の活用
 多機能型の和牛繁殖牛舎では,農家が農繁期や病気などで飼育が困難になった時や,繁殖障害の治療などを目的として和牛を預かる。また,複数サポーターによる和牛飼育も予定しており,単なる預託と異なって,その利用目的は多岐にわたり幅広く農家を支援することとなる。平成11〜12年度に整備する予定である。
 このように今後,加茂川町ストックファームは公共育成牧場の枠を越え,畜産農家にとって幅広い支援施設として,また町の6次産業化及び交流の拠点として機能していくことになり,関係者の期待も大きいことから,形の整備と併せて周りを思いやる暖かなハートいつまでもと願ってやまない。