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ネズミの生態と防除方法について

岡山県津山家畜保健衛生所

 畜産分野におけるネズミによる被害は,飼料を直接食べられる食害だけではなく,畜舎の配線ケーブルの咬害,さらにサルモネラ菌などの汚染による食中毒をはじめとする人畜共通感染症の病原体の媒介など,衛生的・経済的に多岐に及びます。
 このような被害を防ぐために,ネズミの防除は重要な問題ですから,その生態と併せて対策について考えてみたいと思います。

○ネズミの種類と生態
 ネズミの仲間は,全ほ乳類の半数を占めるほど種類が多く,わが国では約20種が知られています。このなかで,特に問題となるのは,イエネズミといわれる3種類(ドブネズミ,クマネズミ,ハツカネズミ)です。これらの特徴を挙げると,ドブネズミは,一番大型で性質は貪欲・凶暴,行動パターンは平面的です。クマネズミは,ドブネズミに比べスマートで一回り小さく,性質は臆病・慎重,行動パターンは立体的です。最後に,ハツカネズミは,他の2種に比べかなり小型で,性質は穏和,渇きに非常に強いのが特徴です。
 特に,その生態から防除対策上重要なのが,行動様式が三次元的で警戒心が強く,殺鼠剤に対する抵抗力の強いクマネズミです。

○ネズミの防除方法
 ネズミ類に対する防除方法については,現在各種の方法が考案されていますが,大きく分けて下図の環境的防除,化学的防除および物理的防除の3方法に分かれます。
 これら3方法の中で,基本となるのが環境的防除方法です。これを重視しないと他の2つの方法の効果が半減するばかりでなく,失敗に終わることもあります。今回は,基本となる環境的防除方法について紹介したいと思います。
 まず,餌をなくすことです。ネズミは大食で一日に体重の3分の1ほどの量の餌を食べ,数日食べないと餓死してしまうこともあります。よって,餌になる飼料の管理をしっかりすることだけでも,有効な防除につながります。
 次に,巣を作らせないことです。巣は,繁殖に不可欠で,営巣場所を与えると大発生につながることもあります。よって,営巣場所となりやすいダンボール箱などを整理するとともに同じ場所へ長く物を置かないことが重要です。また,巣材として雑巾,紙屑,ビニール袋など身の回りのものが用いられるので要注意です。
 最後に,通路をふさぐことにより,出没範囲をできるだけ小さくしていくことが重要です。
縦横の貫通孔を塞ぎ,換気扇は目の細かい(1p未満)金網で,その他は出入り穴より大きめの金属板などで塞ぐようにします。
 以上,ネズミの防除方法に関して簡単にまとめましたが,条件に合わせて,単独での使用よりも様々な方法を組み合わせていくことが重要です。

環境的防除方法(施設改善)

・餌となるものの排除(餌を与えない)
・営巣場所の撤去と巣材の除去・維持管理
 (巣・隠れ家を作らせない)
・侵入防止対策(通路をふさぐ)

化学的防除方法

・殺鼠剤 急性毒
      慢性毒(血液凝固防止剤)
・忌避剤 味覚忌避剤
      嗅覚忌避剤

物理的防除方法

・生け捕りトラップ
・粘着トラップ
・超音波忌避器