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〔共済連だより〕

診療検診車運用日誌

農業共済連 家畜臨床研修所  
野矢 秀馬

 NOSAI岡山では,平成6年度に家畜診療検診車を導入し,運用を開始して早6年が過ぎました。事故防止,生産性の向上を目的に運用していますが,なかなか数字として上がってこないのが現状で,悩みの種となっています。しかし関係者の意識改革にはプラスとなっているのではないかと思っています。
 検診は家畜診療所から依頼のあった農家を共済組合,酪農組合,家畜保健衛生所,畜産会,開業獣医師の方々の協力を得て運用しています。
 検診対象は主に乳用牛であり,検診する前には必ず事前調査と現地調査を行い,この調査で問題点が発見できることが多くあり,非常に助かっています。検診には血液検査,牛群のBCS,病気の発生状況,繁殖状況,給与飼料,牛舎環境等を調査し,また牛検データも利用します。検査は血液検査がメインとなりますが,単なる血液検査ではなく,牛群を取りまく多くの情報のひとつとして,分析および検討をしています。そして検診は検診車を使用し,農家の庭先でリアルタイムに結果を出しています。
 乳牛の生産病(栄養のバランスが不良のため発生する病気)と言われるものの多くは,分娩後1ヵ月以内に集中的に発生し,その大きな要因は乾乳期の管理と言われています。分娩前後は牛を取り巻く環境がダイナミックに変化するので,管理が不良では大きなストレスとなり,病気が発生しやすくなっているのです。
 乾乳期の牛群は病気予防という目的で,必ず検査をしています。その検査項目の中で,エネルギーの摂取状況を反映する血中コレステロール値とミネラル代謝で大きな位置を占めるカルシウム値に潜在的な異常値が認められるものが多くいます。すなわち低コレステロール(80r/dL以下),低カルシウム(9.0r/dL以下)のものが認められるのです。
 このような状態で分娩した牛は起立不能,ケトーシスや脂肪肝となり獣医師の診療を受ける場合が多いようです。又産後の肥立ちが悪く,生産性に大きく影響しています。
 牛の血中コレステロールは,ヒトでいう善玉コレステロールがほとんどで,ヒトと異なりコレステロール値の低い方が問題となり,エネルギー不足が疑われます。エネルギー不足は肝障害につながり,またカルシウムが低いと神経や筋肉の機能に障害をきたし,起立不能,食欲不振や胃腸障害となりやすく,エネルギー不足となり,肝障害等の大きな要因となります。
 このように検診では潜在的な異常や,群の状況がある程度わかります。しかし,症状として現れないもの(潜在的なもの)には,畜主も技術者も注意を払うことがあまりありません。潜在的なものを早期に発見し対処することが,これから技術者に必要なことはいうまでもなく,事が起こってから対処する火消し技術者(獣医師)では対応できなくなりつつあり,老頭児獣医師となりつつある私を含め,技術者も頭の切り変えが必要のようです。
 病気予防,生産性向上を目的としていますので,検診依頼は共済連の各家畜診療所に相談してみて下さい。