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〔特報〕

92年ぶりに発生した本邦の口蹄疫について

岡山県農林水産部畜産課

 平成12年3月25日,宮崎県の肉用牛農家に発したした口蹄疫は,関係者の希望的観測をよそに,国内最大の畜産地域,北海道においても5月11日に発生が報告された。
 口蹄疫は,口蹄疫ウイルスが原因で,牛,羊,山羊,豚などの偶蹄類に感染し,極めて伝染力が強く,死亡率は低いものの感染した家畜は産業上の利用価値が無くなり,畜産業に計り知れない影響を及ぼす。このため,世界で最も恐れられている病気であり,国際獣疫事務局(OIE)の最も警戒度の高いランクAに指定されている。

 現在までの発生概要
・H12.3.25 宮崎県宮崎市(肉用牛肥育農家)1戸  10頭 症状あり
・H12.4.3 宮崎県高岡町(肉用牛繁殖農家)1戸  9頭 症状なし
・H12.4.9 宮崎県高岡町(肉用牛繁殖農家)1戸  16頭 症状なし
・H12.5.11 北海道本別町(肉用牛肥育農家)1戸 705頭 症状なし

 いづれも,「家畜伝染病予防法」及び「海外悪性伝染病防疫要領」に基づき,病気のまん延を防止するため,殺処分,消毒,移動制限等の厳重な措置が講じられた。
 このウイルスは,血清型で大きく7つに分けられるが,それぞれに多数の免疫型があり,牛に親和性の高いもの,豚に親和性の高いものなどいろいろであり,症状にも差がでてくる。おまけにインフルエンザウイルスのように,変異を起こしやすい。
 このため,ワクチンで防御するのは極めて困難であり,清浄国で発生すれば,移動制限と感染した家畜の殺処分方式が防疫の基本となる。
 なお,ひとたびワクチンを使用すれば,ワクチンを接種した家畜すべてがいなくなり,その後一定期間発生がないとわかるまでは清浄国と認められない。そうなれば口蹄疫の衛生条件のために,今まで日本に輸入できなかった国からの安い畜産物が輸入されることになるのである。
 このウイルスは,通常風に乗って伝播していくことも知られている。従って宮崎で最初発生した時には発生地を中心として半径50q以内で移動制限措置がとられた。その後今回のウイルスの特性として,風で伝播すると考えにくいことから OIE の防疫の最小範囲である10qに縮小された。しかも幸運なことに今回のウイルスは伝染力があまり強くないようで,有効薬剤で消毒すれば侵入を防止できる可能性が高い。
 この病気の特性からして,宮崎県では3戸のみの発生で終息したのは,関係者の不眠不休の努力のたまものであると頭が下がる思いである。
 残念ながら,北海道でも同一タイプのウイルスによる発生が認められ,現地では厳重な体制が敷かれており,本県でも侵入防止対策の強化を関係者の皆様にお願いしているところである。
 今回の発生では家畜にほとんど症状が出ないので,摘発も血液検査が頼りであるが,国内唯一の検査機関である農林水産省家畜衛生試験場では24時間体制で対応し,既に52,000検体以上を検査している。
 北海道の移動制限地域の血清検査はほぼ終了し,現在は発生農場と疫学的関連のある農場の検査が実施されている。
 なお,本県でも,血清疫学調査の一環で,農家にご協力頂き,22戸78頭分を送付し,すべて陰性との回答を頂いた。
 さて,いったいどこからこのウイルスが侵入してきたのか?
 輸入粗飼料説も浮上してきているが,確定されていない。現在のところ,北海道と宮崎での発生を関連づけるものはなく,感染経路は不明である。
 また,日本の近辺でも3月に韓国,4月にロシア,モンゴルとウイルスの免疫型は異なるものの立て続けに発生があった。韓国も,モンゴルも20年以上発生のなかった国である。この事態を受け,OIE は6月20日から「東アジア地域における口蹄疫に関する緊急会議」を東京で開催する予定であり,日本も防疫対策の改善,原因究明のための情報入手に期待を寄せている。一刻も早い感染経路の解明が待たれるところである。
 最後に,口蹄疫の侵入防止をはかるため,県では当面次の体制をとっていますので,御理解,御協力をお願いします。

1.移動制限地域からの牛,豚,羊,山羊等の家畜や汚染物品の移入禁止。
  それ以外の北海道からの導入は市場が中止されている間は自粛。
2.本年2月以降に北海道と交流のあった農家の把握及び立入検査
3.農場,畜舎等の出入りの際の車両,長靴,作業服などの消毒徹底
4.口蹄疫が疑われる症状の早期発見と通報
5.口蹄疫清浄国以外から輸入された粗飼料(一部例外を除く)については飼料,敷料利用を自粛
6.農家,家畜市場への定期的な立入検査
7.北海道,韓国,モンゴル等口蹄疫発生地域の畜産関係施設の視察の自粛
8.畜産物残さを給与する場合には十分に加熱
9.家畜市場開催時には厳重に車両消毒を実施