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〔地域情報〕

ダチョウによる町おこしを夢見て

井笠地方振興局農林水産事業部畜産係

 岡山県の西部,浅口郡の中央に位置する金光町は,全国に金光教発祥の地として知られています。また,毎年春と秋の2回開催される「植木祭」で知られる,植木の町でもあります。現在,金光町内には酪農家が1戸,採卵鶏農家が1戸と必ずしも畜産の盛んな地域ではありません。
 そんな金光町で,今,ダチョウによる町おこしを夢見る人がいます。
 金光町大字佐方の藤沢繁行さんは,地域振興の目玉としてダチョウの産業化を目指しています。まず,平成10年7月に試験的に沖縄県から1組のつがいを導入し,続いて平成11年2月に加茂川町からもう1組つがいを導入しました。約400uの飼育場は全て藤沢さんの手作り。自ら沖縄県等の先進地を視察して作り上げたものです。また,彼らのために30aの水田を借り上げ,飼料(主にアルファルファ)を作付しています。
 ダチョウといえば,背中に少年を乗せ,草原を軽やかに駆けていくイメージがありますが,成鳥ともなると体長2m,体重100sを超え,目の当たりにするとかなりの威圧感があります。そのうえ,長い喉を膨らませて鳴くその声は,まるでウシガエルです。
 そのダチョウの肉は赤身でくせがなく,低脂肪・低カロリーが健康志向の世相に乗り,次第に消費量を伸ばしていきそうな気配です。また,鶏卵の20〜25倍にもなる卵には食品としての需要以外に装飾品としての需要もあり,こちらは「エッグアート」として知られています。羽毛・皮革については既に様々な製品が販売されていますが,角膜・腱の医療分野への応用も現在検討されているところだそうです。
 藤沢さんのところでは,将来的には,食肉として出荷する方向で考えています。現在,孵卵機を導入し,飼育羽数の拡大に向けて試行錯誤中とのことです(この記事が掲載される頃には人工ふ化第1号が誕生している予定です)。また,食肉については町内の飲食店「和可菜」と提携して,ダチョウのフルコースが楽しめるよう取り組んでいます。
 当振興局としても,関係機関と連携を取りながら,この新しい「家畜」に注目していきたいと考えています。

写真1:ダチョウの未来について熱く語る藤沢繁行さん

写真2:金光町での生活にもすっかり慣れたダチョウの夫婦