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〔共済連だより〕

「家畜診療日誌」

農業共済連岡山中部家畜診療所 日下 知加久

 私は,主に加茂川町を診療担当区域とさせていただいています。加茂川町は,【畜産を核とした地域振興】をテーマとして取り組まれており,“ブラウンスイス牛”が有名です。
 ブラウンスイスについては,「聞いたことはあっても見たことがない」,あるいは「見たことはあってもどんな牛なのかはよく知らない」という声をよく耳にします。
 そこで,現場の立場からブラウンスイスを紹介させていただきます。
 @歴 史:原産地スイスの乳・肉・役の3用途を兼ねた兼用種。18世紀後半にアメリカで乳専用種として改良が進み,アメリカン・ブラウンスイス種が作成された。
 A外 貌:大きさはホルスタイン種程度毛色は灰褐色淡色。
 B飼養頭数:全国で330頭程度(平成9年2月農水省)が飼養されているが,他の乳牛と交雑されており純粋種は極めて少ないようです(加茂川町は純粋種のみ)。
 C特 徴:性質は比較的温柔で運動能力に富み,傾斜地の放牧に適している。
 D乳成分:表1に示したようにホルスタイン種と比較して乳脂肪率と乳蛋白質率が高いのが特徴です。
 現在,加茂川町内では20頭ほど飼養されています。そして,チーズ,アイスクリーム,ソフトクリームに加工されて販売されています。
 さて,実際に加茂川町内のブラウンスイスとホルスタインを比較してみます。性質は,極めて温厚・物事に動じない・搾乳に関してもおとなしいといえます。ボディコンデションは,飼料効率がよいためか舎飼い(繋ぎ牛舎)ではオーバー気味になりがちです。繁殖関係では発情兆候が弱く,受胎率が低いのが欠点です。この点は,性格が温厚なだけに舎飼いでは特にストレスを貯めやすく,これが繁殖障害の一因ではないかと考えています。アメリカでのブラウンスイスの飼養標準で飼料計算を実施したところ,舎飼いでは当てはまっていないように感じられます。この点は,ブラウンスイスでは特に放牧を条件とした飼養標準の設定といえるかもしれません。現在,主にストックファームと酪農家の2戸で搾乳されています。どちらも放牧を主体とした飼養管理へと移行しつつあります。そして,分娩後初回発情の遅いものあるいは発情兆候の弱いものには,高単位のビタミンE剤(繁殖の向上・ストレスの軽減作用を期待)の投与も併せて行っており,繁殖成績の向上を期待しています。
 家畜診療所としてもブラウンスイスをはじめ,牛の繁殖成績向上による生産性アップで地域畜産振興に貢献できますようがんばります。