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〔共済連だより〕

「家畜診療日誌」

岡山南部家畜診療所 亀森 泰之

 牛糞処理だけでも酪農家に過重な問題を投げかけている今日,平成12年度からは生乳検査体制の岡山県一本化と中央酪農会議の指導に伴い,乳質のペナルティーが改定されることとなり,更なる悩みが覆い被さってきました。
 乳質に関しては,産地間競争により都市部に遠い地方ほど良質牛乳を生産せざるを得ない経緯がすでに存在しているため,特に細菌数や体細胞数に関しては以前より低い数値を示しているみたいですが,地域条件の良い地方の酪農家の中には,つい最近まで「白ければ牛乳である」と考えていた人たちも見受けられ,その人たちにとっては,厳しい時代になったと感じていると思われます。
 今年の4月に入り実際サンプリングが終わりその結果が各農家にファックスされた後,ぽろぽろと慢性乳房炎の牛が姿を消しだしたのです。酪農家各自は牛群検定成績や日頃の搾乳管理よりすでに体細胞の多い個体は把握しており,治療しても治らない,或いは面倒だという考えから肉転という処理に走っていると思われます。
 私は10数年前,牛乳の生産調整が叫ばれ出した時,ある一戸の酪農家が「飼育頭数を増やし,もっと乳を搾りたいが乳量枠がないので搾れない。その乳量枠を少しでも沢山貰うためには,良質乳を出荷していればそのうち乳価も上がり,乳量枠も増やしてもらえるのではないか」と一生懸命乳房炎対策をしていた人を思いだしました。その酪農家も当時は人並みの乳質の数値でしたが,乳房炎対策に取り組み始めた数ヶ月後には,努力の結果体細胞数は常に10万以下,脂肪も無脂固形も基準値以上になりました。この酪農家の牛は平均産次が4産以上で高齢の牛が沢山いました。その乳房炎対策の内容は,乳房の異変を感じたらすぐにPLテスターで乳質チェックを行うということのみだったのです。そして,異常があったら迷わず迅速に診療を依頼すると同時に,乳房に熱があれば氷嚢で冷やしてやり,熱がなければ温罨法を施すという応急処置を行いました。更に常日頃より牛舎内の清掃,消毒を行うという最も基本的な事を的確に行った結果,発症時には症状の改善が速やかに行われ乳質も維持されました。また安易に慢性乳房炎の牛も淘汰せず乾乳期などに徹底的に治療することで良くなっていきました。我々人間が病気や怪我をした時は何をするでしょうか。無闇に薬ばかり飲んだり注射をしたりはしないはずです。風邪であれば氷嚢で冷やし,捻挫して足が腫れれば湿布をするでしょう。そうすることで本来の薬の効果も上がり,速やかに症状の改善がなされるのです。牛は決して機械ではありません。人間と同じ動物なのです。そして酪農家にとっては家族であり,会社組織でいえば社員なのです。
 このようなことも踏まえて,我が岡山南部家畜診療所においては,今年度に入り繁殖検診と乳房炎対策を重点目標として,家畜保健所や酪農組合とも協力して正しい搾乳方法,予防法そして乳房炎発生時の対処方法などに関して農家にビデオテープの貸し出しをしたり,パンフレットの作成を行って指導して行き,少しでも酪農家のお役に立てたらと実施しています。