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〔特集〕

鶏卵の計画生産と価格安定制度について

岡山県農林水産部畜産課

1.はじめに

 最近の鶏卵需給の動向は,平成10年末以降,生産量が年々減少し続ける中で,消費は回復する傾向で推移してきました。
 また,卵価については平成11年に入り2月を除いて前年を上回り,4月以降大幅に上昇したことから,生産者の意欲が高まり,ひな餌付け羽数も増加するなど,平成12年度の国内生産量は前年を上回る水準に回復しています。
 鶏卵については,需要に見合った供給体制の整備,需給の安定を目的として,昭和49年以降農林水産省の指導のもとで,鶏卵の計画生産を推進しています。また,鶏卵の価格の安定を図るため昭和41〜43年に卵価安定基金が設立され,採卵養鶏経営の安定化を図っています。
 今回は,鶏卵の計画生産と価格安定制度について説明をしたいと思います。

2.鶏卵需給調整協議会

 現在の鶏卵の計画生産は,農林水産省の指導により鶏卵需給調整協議会(以下「需給協」)が推進の母体となっており,需給協は全国,地域(地方農政局段階),都道府県,市町村(又は地区)段階にそれぞれ設置され,岡山県では,県段階に岡山県鶏卵需給調整協議会(以下「県需給協」),市町村・地区段階に7つの需給協が設置されています。
 鶏卵生産者は規模の大小を問わず,採卵用成鶏めすを1,000羽以上飼育していれば需給協の指導を受けることとなります。また,50,000羽以上の鶏舎収容可能羽数を有する生産者には,羽数枠が配分されており,この羽数枠に見合った計画生産の指導を実施しています。
 各市町村・地区需給協は生産者,市町村・農協職員,県職員等で構成され,年2回の飼養状況調査(5月,11月)及び地域の計画生産に関する指導を行っています。
 県需給協は,各地区需給協,岡山県養鶏協会及び各関係団体(県,経済連,烏城養鶏農協,配合飼料基金協会)から推薦された委員で構成され,県内飼養状況調査の取りまとめ,県全体の養鶏振興を視野に入れた計画生産の指導を行っています。

3.羽数枠に即した指導

 現在,鶏舎収容可能羽数50,000羽以上の鶏卵生産者に対して,県需給協は羽数枠を配分しています。羽数枠は県内の養鶏農家の健全な発展を促進するために配分されるもので,生産者自らがお互いに協力して鶏卵の計画生産を行うための割当羽数という考えのもとに配分されるものであり,生産者から羽数枠に変更や増羽の申請があった時は,市町村・地区需給協並びに県需給協により協議することとしています。
 この羽数枠を超過して採卵用成鶏めすを飼養していることが需給協の羽数調査により確認され,減羽の指導に従わなかった場合,卵価安定基金及び配合飼料価格安定基金に加入できなくなるほか,農業制度資金の融資が受けられない等の措置が執られます。

4.鶏卵の計画生産に係る当面の緊急措置について

 景気の低迷等により平成10年度以降,低卵価が続いたことから,現在,鶏卵の生産を増加するような羽数枠の配分等を中止する措置が全国で執られています。この措置は,平成11年2月から実施されており,実施期間については平成12年2月の全国協議会において平成13年末まで延長されることとなりました。平成13年度以降については,平成13年2月の全国協議会で協議されることとなっています。

5.卵価安定基金

 昭和41年に社団法人全国鶏卵価格安定基金が,昭和43年に社団法人全日本卵価安定基金が設立され,鶏卵生産者の経営の安定を図るために,卵価低落時の補てん事業(鶏卵価格安定対策事業)を実施しています。
本年についても,6月以降,補てん基準価格(169円)を標準取引価格が下回っているため,補てんが行われている現状にあります。
 生産者は,それぞれの卵価安定基金の会員である農協等(県経済連,烏城養鶏農協)と鶏卵価格差補てん契約を結ぶことで鶏卵価格安定対策事業に参加することができます。基金の造成については,図に示すとおり,生産者は契約数量1s当たり5円,基金の会員団体が1.75円を,国が16億円を積み立てて基金を造成しています。岡山県では生産者の負担を軽減するために生産者積立金の1/5を助成しています。
 卵価の異常低落時の補てんについては,毎年各基金の理事会で決定される「補てん基準価格」を「毎月の標準取引価格」が下回った場合,その差額の90%が支払われることになっています。
 補てん基準価格は,近年の鶏卵情勢,生産費等を勘案して決定され,また,毎月の標準取引価格については,全国の規格卵(SS〜LL)の加重平均価格が用いられています。
 このほか,卵価安定対策として,椛S国液卵公社が鶏卵の市場隔離事業を行っています。これは,卵価の異常低落時に市場から鶏卵を買い取り,凍結粉卵として一時保管し,卵価が回復すると市場に流通させるという事業です。

6.おわりに

 我が国の鶏卵の自給率は96%と畜産物の中では最も高い位置にあります。一部で韓国からの殻付き卵の輸入の記事がありましたが,衛生的な面等から殻付き卵については今後とも国内生産が100%を占めると思われます。
 このことから需要に見合わない過剰生産を行うと,卵価は低迷することは必然的です。養鶏経営の安定化を図るための価格安定制度につきましても鶏卵の計画生産を前提としての制度となっていることを念頭に置きまして,生産者をはじめ関係者の皆様の一層のご理解と御協力をお願いしたいと思います。

鶏 卵 の 価 格 安 定 基 金 制 度 の 概 要

   基金の目的:鶏卵の生産出荷の全国的かつ計画的な調整を基礎として、鶏卵価格の変動により生ずる鶏卵生産者の損失を補てんすることにより、鶏卵の生産及び価格の安定を図り、もって養鶏経営の健全な発展と国民食生活の改善に資することを目的とする。


平成12年度補てん基準価格 169円/Kg
補てん単価の算定法  (補てん基準価格−毎月の標準取引価格)×90%
※補てん基準価格は、毎年、理事会で決定。