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〔地域情報〕

BMW技術を活用した養豚の環境改善

勝英地方振興局 畜産係

 近年,国民の環境意識が強まる中,畜産経営に起因する環境問題が大きく取り沙汰されるようになりました。
 このような背景から,昨年7月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が制定され,家畜ふん尿処理の施設整備とその管理が義務づけられることとなりました。
 こうした中で今回,BMW技術を活用した環境対策に取り組んでいる奈義町内の2戸の養豚農家について紹介します。
 まずはじめに,BMWとはバクテリア(B)とミネラル(造岩ミネラル・M)と水(W)の頭文字をとったもので,岩石と腐植土からなるバイオリアクターの作用で,バクテリアが有機廃物(尿)を栄養源として代謝し,最終的にミネラルとバクテリア及びその代謝産物を豊富に含む生物活性水を生成させるものです。この生物活性水は脱臭効果のほか,腸内細菌叢の改善等による飼養成績の向上など様々な効用が見い出されています。
 最初に紹介する農家は,母豚200頭を飼養するA養豚ですが,平成10年度家畜ふん尿処理システム化施設設置事業により,既存施設を改良した容量120q3の尿処理プラントと飲水プラントを設置しました。
 飲水プラントは6キロリットルのホーロータンク3槽を結合したもので,第1槽には飲水改善用バイオリアクター塔1基,第2槽に自然石(花崗岩と軽石)を設置し,汲み上げた地下水はこのプラントで生物活性され,飲用水として豚に与えています。
 一方,尿処理プラントは原尿槽,第1〜3曝気槽及び処理水槽(調整・沈殿)の5槽からなり,第1曝気槽には尿処理用バイオリアクター塔2基と自然石を設置し,第2槽以降は曝気のみにより処理しています。設置3ヶ月後に処理水を検査した結果を表1に示しますが,最終槽ではBODが1/15程度まで減少し,特に第1曝気槽では1/10にまで減少しています。大腸菌群も最終槽では非常に少なくなっており,臭いは全く無くなっています。ここで生成した活性水は耕種農家の畑に液肥として施用したり畜舎内に散布しており,豚舎内外の臭いが少なくハエも減少しました。
 もう1戸は母豚120頭を飼養するB養豚で,同じく平成11年度家畜ふん尿処理システム化施設設置事業により尿処理プラントを設置しました。処理層は6槽(既存4槽に2槽を増設)容積67.16q3からなり,第1曝気槽には,尿処理用バイオリアクター塔及び自然石を取り付けました。最終処理水は臭いが全く無く,生物活性水として耕種農家の畑に散布しています。

 このBMWプラントについては,最近では全国各地に設置されていますが,このプラントの大きな有用性として第1に低コストであること。豚尿はBODが3000r/l以上と非常に高いことから,従来の活性汚泥法で処理しようとすれば,処理容積,コストともに膨大なものになります。第2に有用産物を生成することが挙げられます。BM技術は放流することを目的とせず(植物濾床や濾過処理装置等を設置すれば放流可),生成された生物活性水は,まさに「宝の水」として種々の方面で活用できることです。
 現在,BM技術協会が全国100ヵ所以上の施設から収集した成績についてまとめてみると,次のような実例が挙げられます。

 @ 畜舎に散布することにより畜舎の臭気が減少,これによりハエの発生が減少した。
 A 家畜に飲水として投与することによりふんの臭いが減少した。
 B 牛に飲水させることにより毛づやがよくなり,食欲が増進した。
 C 液肥として野菜畑に散布することにより収量が向上し,農薬量が減少した。
 D 繁殖雌牛に飲水させることにより繁殖成績が向上した。
 E 抗病性が高まった。
 F 肉豚の肥育成績が上がった。
 G 採卵鶏に飲水させることにより破卵率の低下,産卵率が向上した。

 最後に,畜産環境問題については多くの農家で実感していることでありますが,処理機械施設等の設置には多額の費用を要すこと,採算性が低い部門であること,などから二の足を踏んでいるのが現状ではないかと思います。しかし,BM処理技術は比較的安価で,かつこれが畑や肉を肥やし,畜舎内外の悪臭を低減させ,家畜が健康になる「宝の水」を作り出すのであれば,その費用は安いものであります。
 今後,一段と厳しさを増すことが予想される環境問題の中にあって,畜産経営が存立するためには,このふん尿の適正処理は避けては通れない最重要課題であります。