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〔普及現場からの報告〕

べいふぁーむ笠岡(畜産)のさらなる発展へ

井笠農業改良普及センター  森山 靖成

1 笠岡湾干拓地の歴史

 1959年,農林省(現農水省)が食糧増産のために計画し,66年に着手してから24年の歳月をかけ,90年3月末に完成した。
 笠岡市沖の海域1,811fを堤防で仕切って干拓した。486fの農地が分譲され96戸2法人が営農している。

干拓上空からのパノラマビュー

2 干拓地の畜産

 現在,酪農家12戸と肉用牛肥育農家4戸が175.8fで営農しており,今年度さらに肉用牛肥育農家2戸が入植する見込みである。
 99年度の飼養頭数は,乳用牛が約1,700頭,肉用牛肥育牛は1,380頭のあわせて3,080頭である。
 酪農家12戸の内,放し飼いスタイルは4戸おり,1戸当たりの飼育頭数は144頭と県平均(28頭)の約5倍,肥育も345頭と県平均(218頭)を大きく上回っている。

3 特産品の誕生

 干拓の酪農家の女性で結成する笠岡湾干拓酪農婦人部は,入植者間の仲間づくりを図るとともに,牛乳料理の研究・経営安定を目指した簿記記帳や生活設計の勉強会等の活動を行っている。昨年からは,生乳を利用したモッツァレラチーズの加工研究に取り組み,市内の女性組織と連携して牛乳の消費拡大に向けたPRを行うとともに,新しい特産品の開発に取り組んでいる。
 98年から干拓地酪農家の内6戸は,スーパー・フレスタ(広島市)と提携し,生産した生乳を「べいふぁーむ牛乳」のブランド名で岡山,広島県内で販売している。現在の出荷量は日量8トンと開始時の約3倍に伸びている。

4 自給飼料の生産

 干拓地の大部分の土壌は粘土含有量30%以上の強粘質土壌であるが,排水路・本暗きょ等により,土壌の排水性通気性は改善されつつある。塩害についてもほぼ問題はない。
 pHは7〜8を示す弱アルカリ土壌のため,ほとんどの飼料作物の作付けが可能である。イタリアン−麦又はスーダンの体系のほかアルファルファやトウモロコシの栽培も定着している。
 ほとんどはロールベーラーで調整しているが,バンカーサイロで品質の低下を防いでいる例もある。
 広大な草地を有効利用し,大型トラクターが年中休みなく稼働している。

5 畜産農家の経営安定へ

 経営環境の厳しい中,牛の品種改良への取り組み,飼育規模の拡大などの努力が行われている。
 普及センターでは,農家の決算書をもとに新規投資や新技術導入の判断のアドバイスを行っている。一般の農家と異なり,土地の償還金を支払いながら,牛の導入,機械の更新,従業員給与をしなければならない特殊事情がある。

6 家畜糞尿処理の適正化と堆肥の地域内流通

 昨年の畜産環境3法の施行にともない,畜産環境整備機構のリース事業等で,発酵槽や堆肥舎の整備がされつつある。しかし,大規模化がすすんだ現在では,飼料畑への土地還元のみでは十分な処理ができないため,堆肥を干拓地内の耕種・園芸農家や干拓外農家への利活用を図る必要がある。今年度,普及センターでは,干拓地内で堆肥を施用した栽培の展示ほを設けて,堆肥の利用促進のPRをすすめる予定である。

大規模酪農牛舎(フリーストール)