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クローン子牛の発育状況

岡山県総合畜産センター 経営開発部
専門研究員 小田 頼政

1.はじめに
 クローンとは,一個の細胞または生物から無性生殖的に増殖した生物の一群で,遺伝子組成が完全に等しい遺伝子・細胞または生物の集団と定義されており,クローン技術とは遺伝的に同一な個体を作製する技術です。家畜において,自然発生的に生じるクローンには一卵性双子がありますが,その生じる割合は極めて低く,牛では1,000回の分娩に対し1例前後とされています。クローン牛を人為的に作出するためには,1)受精卵を2つに切断して,それぞれの切断受精卵から個体を作出する方法「分割卵」,2)受精後発生初期の受精卵の細胞を核移植して,個体を作出する方法「受精卵クローン」,3)皮膚や筋肉などの細胞を核移植して,個体を作出する方法「体細胞クローン」があります。現在,一般的にクローン子牛と呼ばれるのは,受精卵または体細胞(成体および胎児の細胞)クローン技術で生産された子牛がこれにあたります。

2.岡山県のクローン牛の生産状況
 平成12年6月30日現在のクローン牛の生産状況は,全国では,受精卵クローン牛541頭,体細胞クローン牛158頭が生産されています。岡山県では,受精卵クローン牛4頭,体細胞(胎児細胞由来)クローン牛2頭が生産されています。品種別では,ホルスタイン種3頭(雌子牛3頭),黒毛和種3頭(雌子牛1頭,雄子牛2頭)です。これらの子牛は,現在育成中であり,将来的には,雌のクローン牛は繁殖,泌乳性等および相似性の調査に,雄のクローン牛は肥育して畜肉等の相似性の調査を実施する予定です。

3.クローン子牛の発育状況
 1)ホルスタイン種
 生時体重は,受精卵及び体細胞クローン子牛ともにホルスタイン登録協会の標準値(40s)に比べ7〜18s重たかったが,生後5ヶ月齢で,体重および体高ともに約1ヶ月の発育遅延が認められています。これは,クローン牛の特有のものではなく,生後3ヶ月齢までの哺育期初期に下痢が発生したことにより増体に影響したものと考えられます。

 2)黒毛和種
 生時体重は,和牛登録協会の平均値(雌子牛31.4s,雄子牛38.0s)よりも雌子牛で約12s,雄子牛で約3〜5sホルスタイン種と同様に大きい成績でした。生後4ヶ月齢では,雌子牛および雄子牛ともに体重・体高の発育値は平均値以上です。

体細胞クローン子牛

4.おわりに
 クローン産子は,発育基準に比べ,ホルスタイン種ではやや悪く,黒毛和種では良好な発育になっており,なんら人工受精で生まれた産子と差がない発育状況を示していますが,今後も発育調査を続けていく予定にしています。
 クローン技術は,これからの畜産振興に必要な繁殖技術と考えていますが,問題点も多く残っています。第1点は,クローン技術の安全性を疑問視するような消費者の声です。受精卵クローン牛由来牛肉では,「受精卵クローン牛」あるいは「Cビーフ」という自主的な表示販売が行われています。牛乳は現時点では販売は非常に困難となっています。また,体細胞クローンの生産物は,クローン乳牛から生産された生乳の区別が求められていることから,販売はできないことになっています。第2点は,登録の問題です。クローン技術により能力の高い雌牛を造成しても血統登録が得られないため,繁殖に供すると和牛産子の価格に大きな影響を与えることになります。これらの課題がフィールドでのクローン技術の実用化への停滞を招いているのも現状です。
 しかし,クローン技術の応用は,岡山県総合畜産センターとしましても農林水産省や関係県と連携を取りながら,低コストでの良質な畜産物の供給方法として不可欠な技術と考えており,更に研究を進めていくことにしております。