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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

岡山西部家畜診療所  山本 幹男

 昨年秋の「共済連便り」に“喉元過ぎれば暑さも忘れる”というテーマで夏季の暑さも涼しくなった秋には忘れてしまい防暑対策も来夏の宿題となり,それが毎夏繰り返されるという内容を寄稿しました。
 今年も盛夏の候,再び寄稿の機会を得て暑熱の話題を書かざるを得ません。
 岡山西部家畜診療所管内の8月中旬までの夏の状態は去年の梅雨頃の冷夏,夏後半の残暑と違い,梅雨より暑く多湿状態が長く続いた。
 夜間は熱帯夜が有るものの割合過ごしやすいという実感です。
 そのせいか熱射病という病名をカルテの筆頭に掲げる件数は少ないのですが,気温が20℃を越すとストレスが生じるといわれる牛体は鬱熱状態でそれがベースとなり合併症を引起すことは周知の事実です。
 高体温症(熱射病)は高い外界温度と長時間の激しい筋肉運動が主因ですが,特に温度が高く,牛体が肥っていたり,厚い被毛に覆われていたり,また換気の悪い牛舎へ長時間拘束されていることが問題になります。
 また副因としては,視床下部の損傷,脱水による高体温,筋肉の活動や代謝作用による熱の過剰生産が挙げられ,特に泌乳牛は直腸温,心拍数,呼吸数の上昇がみられる。
 肝臓に貯蔵されているグリコーゲンは急速に消費されエネルギーを得るために蛋白代謝が亢進します。
 呼吸困難と口内乾燥のため食欲不振となり,体重減少と筋肉の脱力がみられ,起立困難となり,すでに肢蹄疾患があると起立不能に陥り廃用に結びつくのです。
 このように体温上昇が確かに生理機能に変調を来し,様々な障害の根本原因になりますので,体温を上げない工夫が必要です。
 また1日の内の何時間だけでも高体温を下げてやる工夫を考えなければなりません。
 その点では気温が下がる夜間に防暑対策をすべきでしょう。乳牛の体温は夜間に高くなり,明け方に最も低くなるという日内リズムを持っています。
 夜間の温度低下により体熱放射が可能となり,乳牛は正常体温を維持することが出来ます。
 熱帯夜が続くと熱射病となり採食量,乳量の低下となり,夏季における夜間温度を把握することは最も重要となります。
 次ぎに飼養管理ですが,まず生産に必要な養分を摂取させるには,減退する食欲や利用率の低下を補うためにできるだけ良質の飼料を給与することと,食塩などのミネラルも余分に給与することです。飼料は気温と体温が低い早朝に十分に採食させて体熱量を高め,気温の上昇に対応する蒸散反応の促進を図ることと,夜間はできるだけ涼しくなって給与することが望ましい。
 夜間においても送風や野外飼育を考えるべきでしょう。
 牛舎環境の暑熱対策は制御できる温熱要因を適切に管理することで暑熱時には体の外と内のどちらか,または両方の熱負荷を少なくすることと,放熱を促進させることになります。
 管内でも具体的には,今年から牛舎内に水を噴霧し,扇風機でそれを飛ばすことにより,牛舎内温度を低下させ防暑効果を挙げている農家を見うけます。
 様々な防暑方法がありますが,できうる方法の中から組合わせたり,現在すでに備えているものを改善して,牛舎温度を下げて,今年の暑い夏を乗越えさすよう切に望みます。