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〔地域情報〕

「有機資源ネットワーク21推進事業」始動する!

東備地方振興局農林水産事業部農業振興課

 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が昨年11月1日に施行され,家畜ふん尿の適切な処理及び資源としての利活用が義務づけられることになりました。
 当管内の有用微生物を用いた良質堆きゅう肥生産の推進については,昨年の「畜産だより」11・12月号でご紹介をさせていただいたところですが,良質堆きゅう肥を生産しても利用されないまま野積の状態のところも見受けられました。
 この原因を調べてみると,需要先確保が十分でなく,特に近くの耕種農家の顔もあまり知らない状況にあり,堆きゅう肥の利用促進を図る上において,畜産農家と耕種農家の接点をいかに作るかが当面の緊急課題であると考えました。
 そこで,平成11年度は,「第1回東備地区堆きゅう肥共励会(牛糞のみ)及び講演会」に,耕種農家の方々にも多数参加してもらい,多少なりともお互いの顔を知ってもらうことができました。
 また,講演会には,岡山市高松農協市川光政氏を招き,「家畜農家と連携した土づくりと野菜や果樹等の栽培について」の講演をお願いし,堆きゅう肥に対する理解を深めていただきました。
 堆きゅう肥は,作物への効果の速効性が明確でないことや散布作業に労力を要すること等が,利用促進の上で大きなネックとなっています。
 しかし,堆きゅう肥等による土づくりと化学肥料・農薬の低減を一体的に行うことを目的とした「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」が昨年10月に施行され,また消費者の安全志向の高まり等から今後,有機農産物の需要はますます増加することが予想されます。
 耕種農家も今後生き残るためには,消費者ニーズに沿った農産物を生産することが必要となり,堆きゅう肥の利用を真剣に考える時期を向かえたと思います。
 このようなことから,今年度から東備局管内でも,管内全市町・農協の負担をお願いし,堆きゅう肥の利用について耕種農家とのネットワークシステムを確立する目的で,次のとおり「有機資源ネットワーク21推進事業」を推進することとしました。

 1)管内すべての市町(1市9町)に堆肥効果の実証展示のためのほ場を設ける。
 2)ほ場の土壌分析を実施する。
 3)管内畜産農家で生産された堆きゅう肥の成分分析を実施する。
 4)土壌及び堆きゅう肥の成分分析結果に基づき,堆肥の施肥量を決め,堆肥の斡旋を行う。
 5)作物の生育・収量調査を実施し,堆きゅう肥の効果判定を実施する。
 6)判定結果に基づき,他の耕種農家へのPR及び利用の促進を図る。 

 今年度は,事業の開始が遅れ,概ね播種や作付けが終わっていたため,堆きゅう肥の効果を判定するためのほ場の選定が難しい状況下にありましたが,管内各農協から秋冬野菜生産農家を中心とした10ヵ所の実証展示圃場の推薦があり,事業を実施することにしました。
 耕種農家の方に堆きゅう肥の要望を聞いたところ,種類では牛糞9戸,豚糞1戸で,土づくりを目的にされた方が大部分でした。
 また,事業推進上,一番のネックとなりそうでした散布に関しては,1戸を除き,すべて協力が得られました。
 一方,堆きゅう肥の供給側の畜産農家の選定は,「地域で生産された堆きゅう肥は地域で利用」を原則に考えましたが,散布後,雑草が生える等の問題が生じないよう,昨年度の「東備地区堆きゅう肥共励会」上位入賞3名の堆きゅう肥を中心に選定しました。
 これら畜産農家の方に対し,堆きゅう肥の運搬等依頼したところ,全ての方が快く引き受けてくれ,利用を促進してもらえるならと,散布しやすいようにと袋詰めや,堆きゅう肥代や運搬料も無料にしてくれた方もありました。
 今年7月,事業の理解を頂くために,普及センター作物担当者,農協営農指導員の方々と一緒に実証展示ほ場農家の実態調査を実施しました。
 今まで,堆きゅう肥を全く利用していなかった農家は10戸中6戸ありましたが,意外と堆きゅう肥の利用には抵抗がなく,むしろ他の野菜生産グループの人を紹介してくれるなど思わぬ成果がありました。
 また,化学肥料のかわりにと鶏糞や豚糞堆肥の斡旋依頼もありました。
 今後,堆きゅう肥の利用を促進するためには,速効性があまり期待できない牛糞堆肥の施肥効果の判定をどのように行うか,作物ごとに必要な成分を含む堆きゅう肥作りをどのようにするか等,色々と難しい課題もあります。
 畜産農家サイドの課題としては,耕種農家に堆きゅう肥を安心して利用してもらうためには,発酵過程において,雑草の種子や病原菌が死滅する温度を維持するとともに,悪臭・汚物感のない堆きゅう肥生産が基本になると思います。
 今回は,堆きゅう肥共励会で上位入賞の方に堆きゅう肥の提供をお願いしましたが,畜産を営んでいる方全員の堆きゅう肥が地域内ですべて利用されるよう,継続して良質堆きゅう肥の生産指導を実施すると同時に,今後畜産農家と耕種農家とのネットワークがさらに太いパイプで結ばれるよう普及センター,家畜保健衛生所,農協等のご協力をいただき,努力したいと考えております。