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「利花号」現場後代検定成績速報

岡山県総合畜産センター
研究員 平本 圭二

 岡山の和牛は従来から,増体の素晴らしい牛として高い評価を受けてきましたが,この増体能力を維持しつつ,さらに肉質面の改良に力点をおいた種雄牛作りを行っています。
 このたび,一昨年から現場後代検定を実施していた「利花号」の一部が終了しましたので,その成績概要をお知らせします。

1.利花号の概要
 本牛は平成8年2月12日,岡山県総合畜産センターで生産されました。血統的に見ると父牛「利幸土井号」は,資質・肉質面の改良が期待される兵庫(田尻)系の種雄牛です。
 利幸土井号の産肉質成績(フィールド及び現場検定21頭)は5率71.4%,上物率100%と非常に良好な成績でした。当時(社)全国和牛登録協会並河会長の薦めもあり,平成6年度岡山和牛育種組合の指定種雄牛として選定され,特に育種価の高い雌牛との計画交配により計画的な種雄牛作りを行ってきました。
 母牛の「はなや6」は脂肪交雑0.881(上位5%),ロース芯面積4.649(上位5%)で肉質の改良がおおいに期待出来る雌牛でした。 このように,産肉能力の高い両親から受精卵移植技術を活用し,藤良系と兵庫(田尻)系の系統間交配によって作出された本牛は,体型,資質面で将来を期待され順調に発育してきました。

2.利花号の枝肉成績
 枝肉成績については表1に示したとおり,非常に優秀なことが証明されました。
 23ヵ月齢出荷の3頭は,枝肉重量382.8s,ロース芯面積47.3p2,BMS uス均7.0,と月齢の若い時期からでも脂肪交雑が入っていることがわかります。
 また,現場後代検定4頭の成績では,平均月齢28.8ヵ月齢,枝肉重量472.0s,ロース芯面積48.8p2,BMS uス均6.0で,発育,肉質面いずれも優れたものでした。血統的に見ても多様な交配で,肉質も安定しており,岡山純系の雌に対する交配は特に優れた成績となっております。
 (社)全国和牛登録協会吉村局長の評価でも「ねらいどおりではないか,現場検定の成績も安定した枝肉でありおかやま和牛の改良に期待できる」とのコメントがありました。
 表2の主な種雄牛のフィールド検定成績で見てみると「沢幸土井号」月齢29.1ヵ月齢,枝肉重量386.8s,ロース芯面積50.6p2,脂肪交雑BMS 5.6,「北国7の8号」月齢28.7ヵ月齢,枝肉重量437.6s,ロース芯面積52.0p2,脂肪交雑BMS 5.0であり「利花号」の検定成績は枝肉重量,脂肪交雑とも大きく上回り肉質,増体に特に優れています。このように,本牛が今後の改良に大きく貢献できると考えられます。
 なお,検定の全てが終了するのは平成13年3月となります。