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乳牛の哺育育成について
〜出生時から離乳までのポイント〜

高梁家畜保健衛生所

 近年,乳牛の遺伝的能力の改良が向上し,かつてスーパーカウといわれた年間泌乳量10000s以上の牛も珍しくなく,非常に高い遺伝能力をもった牛が容易に入手できる時代になりました。しかしながら,遺伝的能力が良い牛でもその素質を最大限に引き出すにはそれ相応の育成が必要ですが,現在のところその能力が充分に発揮される育成がなされている状況とはいえません。胎児,新生児期から初産までの育成期間はその牛の生涯生産能力の大半を決定する非常に重要な期間です。ここではそのうちで出生から離乳までの各時期について飼養上のポイントを示します。

1.出生時,出生直後(子牛の生存,発育,抵抗力に関する重要な時期)
 ・呼吸の確認,臍の周りの消毒をしたあとタオルケットのようなもので子牛を拭きよく乾かす。完全に乾けばすぐに親から離し,外に出す(冬でも)。
 ・良質な初乳を生後30分以内に約2リットル給与する。初乳の給与は親牛に任せない方が良い。親牛に任せると飲んだ量が判らない上に,乳頭が衛生的でないことが多い。初乳は生後24時間以内に総計6リットルを数回にわけて給与する。

2.生後1週間
 ・生乳または代用乳を給与する。生後4日目ごろから水とスターターの慣らし給与を始める。
 ・この時期は呼吸器病や消化器病が起こりやすく以後の発育に影響するため,特にカーフハッチやペンの内部は良好な換気と敷料を糞尿に汚れていない状態にしておくなど衛生面に配慮する。目安としては,人間の子供をそこで寝かしても問題がないぐらいにする。子牛同士の接触も極力無いように工夫する。

3.離乳までの期間
 ・初乳から代用乳または全乳への移行は急激に変更をおこなうと下痢を起こすことがあるため,両者を混ぜながら2〜3日かけて行うようにする。代用乳を給与する際は濃度,温度および給与時間を常に一定にすることがポイントである。
 ・第1胃の発達を促すために乾草よりもスターター給与に重点を置く。また,スターターを食べやすくし,かつ第1胃内の微生物増殖を促すためにも新鮮な水が必要なため常時自由飲水できるようにする。

 以上,子牛の出生時から離乳期までの飼養上の重要なポイントを示しました。育成は即生産につながるものではありませんが,確実に将来の戦力を養う仕事です。健康でバランス良く効率の良い牛を育成するためには以上の点に留意し,日々の観察(牛の前を通るときは必ず)を実施すべきです。そうして高い遺伝能力を最大限に引き出してください。