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〔新技術〕

搾乳ロボットについて

農業総合センター 技術普及課 佐藤 和久

 酪農の新技術として搾乳ロボットが関心を集めています。そこで搾乳ロボットの長所短所等,参考となる情報を紹介したいと思います。


1.搾乳ロボットとは?
 搾乳ロボットは個体識別,乳房清拭,ティートカップ装着・離脱,ストール外への誘導といった搾乳に関連した一連の作業を自動的に行うシステムです。なお,現在販売されている搾乳ロボットは放し飼い方式に適したもので,繋ぎ飼いに適したものは開発されていません。値段は,写真のボックスタイプの場合1基36百万円程度(搾乳牛頭数50〜60頭対応)します。このほかパーラータイプと呼ばれる機種もあり,それぞれ適応規模や長所短所があります。また,1基当たり年間120万円程度のメンテナンス契約料と65万円程度の消耗品費が必要です(ボックスタイプでの例)。

2.搾乳ロボットの長所・短所
 搾乳作業から解放され,省力化できることが最大の長所です。また導入後,乳量が10〜15%増加した例が多くあります。さらにホールディングエリアが不用となる等,同じ施設面積でより多くの搾乳牛を飼うことが可能になると言われています。
 一方,精神適拘束時間が長い(24時間)のが最大の短所です。ロボットのトラブル発生の心配から頭が離れることはないでしょう。また,牛群の中にはロボット搾乳の不適牛も必ずおり,これを排除するか別途搾乳しなければなりません。

3.搾乳ロボット導入における課題
 搾乳ロボットは「人間が使うもの」ではなく,「牛に使ってもらうもの」です。搾乳ストールに牛が自発的に入ってくれなければ導入のメリットはでません。搾乳ストール進入には釣りエサ(濃厚飼料)の魅力が必要ですが,TMRの飽食給与の場合には思うように進入しない場合も考えられます。また,搾乳ロボットは汚れた乳頭もきれいな乳頭も同じように清拭するため,牛体を清潔に保つことがこれまで以上に要求されます。このほか牛の運動性を確保するため肢蹄病や暑熱対策もより重要となります。さらに,ロボットから出力される数値から牛の状態を的確に読みとり,適切な処置ができることも経営者の能力として求められるところです。
 以上のように,ロボット搾乳を軌道に乗せるには解決しなければならない課題が多く存在しており,これらの課題をクリアーできることが導入の条件でもあります。

4.最 後 に
 搾乳ロボット導入を検討する場合には,何のために導入するのかをよく考えるべきでしょう。中でも一番考えなければならないのは,導入で浮いた時間を何に使うかです。自給飼料生産?規模拡大?糞尿処理?家族との生活時間?それともパチンコ?……そこを関係者も交え,よく相談することで本当の経営上の問題点と搾乳ロボットの必要性の程度が把握できると思います。