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加茂川町ストックファームのこころみ

岡山県総合畜産センター    
経営開発部 谷田 重遠

 岡山県の中心を自負する加茂川町のキャッチフレーズは「ハート オブ 岡山」であり,吉備高原の主要な部分を占めている。農林統計上の中間農業地域に区分されるように,県下の典型的な中山間地といえる。岡山市,倉敷市に1時間以内という通勤圏にあることから,農業の担い手の高齢化は例外なく進んでいる。
 新農業基本法にうたっている「農業者の自立と持続的な農業の推進」は,中山間地では非常に具体化の難しいテーマである。耕作放棄の農地は全国で12千ヘクタール,県下でも9百ヘクタールに達している。これらの主な要因は,担い手の不足による離農と考えられる。例えば,酪農経営でみると高齢の経営者は,多くが毎日の搾乳・給餌そしてふん処理の重労働が廃業の主な要因になっている。その結果として,経産牛20頭の経営であっても規模縮小することなく廃業という経過をとっている。
 昭和43年から加茂川町営牧場は地域内の乳用牛預託育成牧場として運営を行ってきた。また,自然流下式畜舎が地域内に多く存在したことから,牧場内にフン尿処理施設を県下に先駆けて設置した。しかしながら,公共育成牧場の役割は,農家戸数の減少及び畜産経営環境の変化と運営経費の高騰などから見直しを余儀なくされ,昭和50年代には県下に20近い牧場が存在したが,昨年4月現在では半減している。
 加茂川町の公共牧場は,平成6年に地域内の畜産生産基盤の確保と町民全ての牧場として,新たなスタートに町営牧場から「ストックファーム」と名称を変更した。これまで,「町民の憩いのエリア」として,草地,畜舎など景観を重視した配置・整備が行われてきた。また,アイスクリームや肉加工の工房を併設して岡山・倉敷に近いメリットを生かした工夫もされている。中山間地のイメージとしては,棚田,過疎,不便などマイナスの要素が多いが,公共牧場の持つプラスの要素を生かして多機能牧場への脱皮を図っている。
 平成11年2月1日現在の加茂川町内における乳用牛及び肉用牛の飼養頭数及び戸数は,表のとおりで,平均規模も一部の大型経営を除くと県の平均に達しない。畜産生産基盤の確保という観点から,総合畜産センターと連携して「乳牛借り腹」によるET和牛生産に取り組んでいる。乳価が低迷するなかでの酪農経営の収益性の確保と繁殖和牛の導入による労力の軽減で経営の維持継続を図るとともに,優良(育種価の高い)和牛の地域内生産及び流通そして遊休農地の活用を柱としてすすめている。
 町は牧場内にET和牛用哺育施設を整備し,ET和牛のヌレ子を一括購入体制を取った。家畜保健衛生所,農業共済連岡山中部家畜診療所及び総合畜産センターは,ET推進のため酪農家の巡回指導と繁殖管理を中心とした研修会も開催,農業改良センター及び振興局のサポートなど関係機関が協力して支援体制も整備されてきている。
 公共牧場への逆風,都市への通勤可能な立地条件などを発想の転換で地域特性として生かそうとしている。和牛繁殖農家では,遊休農地の電牧による放牧の実証も開始された。酪農家と和牛農家の連携による畜産農家の自立と公共牧場を核とした地域における持続的農業をめざした加茂川町の取り組みに今後ともおおいに期待したい。

ストックファームの全景              ET和牛子牛のほ育育成