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〔特集〕

「自給飼料生産振興について」

岡山県農林水産部畜産課酪農飼料係

1.はじめに
 平成11年7月に制定されました「食料・農業・農村基本法」では,@食料自給率の向上を基本とした食料の安定供給,A資源循環による農業の持続的発展,B農業の多面的機能の発揮等が基本理念として掲げられております。
 特に我が国の畜産は,その飼料の多くを海外に依存してきたことが,食料自給率の低下の一因となっています。そこで,食料自給率の向上等を図る上で,畜産分野においては,自給飼料の生産拡大が重要な課題となっています。
 このため,国はその着実な推進を図る目的で昨年4月に「飼料増産推進計画」を策定し,関係者一体となって飼料増産運動を全国的に展開していくこととなりました。
 今回は,自給飼料生産振興について,飼料増産の必要性と本県における自給飼料生産の現状を踏まえた今後の取り組みをご説明したいと思います。

2.自給飼料増産の必要性
 自給飼料増産の必要性については,はじめに述べましたように我が国の食料自給率向上のために不可欠な位置を占めているだけではなくて,平成11年に取りまとめられました「水田を中心とした土地利用型農業活性化大綱」において,飼料作物は麦・大豆等とともに転作を超えた本作として位置づけられ,その本格的な生産が農業の持続的発展に資するとされたこと,中山間地域等では耕作放棄地等の地域資源を飼料生産に有効に活用すれば農業・農村の振興と多面的機能の発揮に役立つこと,昨年の口蹄疫の発生では,輸入粗飼料が発生原因として疑われたことから自給飼料生産の必要性が再認識されたこと等多岐にわたり大きく,平成22年を目標達成年度とする飼料増産目標では作付面積,収穫量,単収ともに次の表のとおり増加させる目標数値が設定されています。
 この目標を達成するには,相当な条件整備と努力が求められることになりますが,平成12年度からは目標達成に向けた支援措置も順次整備されています。

(飼料増産推進計画における飼料増産目標)
  現 状  目 標
平成10年  平成22年
付面積(万ha) 97 110
収穫量(TDNトン) 390 508
単収(s/10a) 4,040 4,461

3.岡山県の自給飼料生産の現状と今後の取り組み
(現 状)

 本県の自給飼料生産は,平成5年には5,840ゥあった作付面積が,平成10年には4,360ゥに減少し,生産量も作付面積の減少とともに減少し続けており,平成10年には26万6千トンとなっています。これは,平成5年と比べて実に38,880トンもの減少になっています。
 その主な要因としては,
 @ 畜産農家戸数の減少及び飼養規模の拡大,高齢化に伴う労働力不足。
 A 購入粗飼料の梱包輸送・品質の安定性及び円高による価格の割安感等利便性が高い。
 B 中山間地が多い本県では,集約した土地を確保するのが困難。
 C 収穫調整時の天候により収量及び品質が左右される。
 等が挙げられます。

(今後の取り組み)
 国では,「飼料増産推進計画」を具体的に推進していくために,昨年6月1日に全国飼料増産戦略会議を設置し,自給飼料生産の有利性・重要性の啓発,関連制度・施策の普及,啓発資料の作成等を行い,現在,飼料増産運動を全国的に展開しています。
 本県でもこれを受けて,昨年7月4日に岡山県飼料増産推進協議会を設置し,本県の現状を踏まえて関係者一体となって推進していくこととしていますが,水田等の既耕作地や耕作放棄地及び公共牧場の採草放牧地の有効活用等,その地域の実状にあった取り組みを展開していくことが重要であります。
 また,全国的な傾向と同様に,本県でも労働力不足や後継者不足等の課題に取り組まなければならない状況にあり,コントラクターの育成による飼料生産作業の組織化,外部化の推進を図っていく必要があります。
 そして,最近の米の需給・価格動向にかんがみ,国は「緊急総合対策」を決定し,その中で稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)の取り組みについてさらに推進していくことになっています。そして,この推進に当たり,稲ホールクロップサイレージの家畜への給与に対する不安を解消するために平成13年度より「給与実証事業」(2万円/10a)が実施されることになりました。本県では,これまで取組事例がほとんどないため,研修会等を随時開催し,稲ホールクロップサイレージの良さをアピールしながら,「給与実証事業」を積極的に活用し推進していきたいと思います。
 このほかに,土地集積の促進,稲わら等の未利用資源の有効活用,耕畜連携等取り組むべき課題は多くありますが,畜産振興総合対策事業や国産粗飼料増産緊急対策事業等の各種施策を積極的に展開し,多くの課題を克服して飼料増産につなげて参りたいと思いますので皆様のご理解とご協力を今後ともよろしくお願いします。