ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り2001年2月号 > 県内自給粗飼料中の硝酸態窒素含量の実態と簡易測定法

〔技術のページ〕

県内自給粗飼料中の硝酸態窒素含量の実態と簡易測定法

岡山県総合畜産センター 馬 場   彩

1.はじめに
 飼料自給率の向上や海外悪性伝染病の侵入防止等を図るため,自給粗飼料の増産が緊急の課題となっており,全国的な取り組みがなされている。その一方で,土地基盤の確保を伴わない経営規模の拡大によって,適正量を上回るふん尿が農地に還元され,作物の品質低下を招いている。特に,粗飼料中の硝酸態窒素濃度は,ふん尿の多量施用によって増加し,こうした粗飼料を反芻家畜に給与した場合,中毒を起こすことが危惧されることから,生産現場において飼料中の硝酸態窒素含量を事前に把握し,適正な給与指導を行うことが極めて重要である。そこで,県内における自給粗飼料の硝酸態窒素含量の実態を調査するとともに,簡易な測定方法について検討したので紹介する。

2.県下の実態
 県内産自給飼料として,イタリアンライグラス乾草15点,イタリアンライグラスサイレージ24点,スーダングラスサイレージ12点を用い,液体クロマトグラフ法で硝酸態窒素を測定した。その結果は表1に示すとおりである。

 イタリアン乾草では危険値といわれる乾物中0.2%を越えるものはなかったが,イタリアンサイレージで2点(8%),スーダングラスサイレージで4点(33%)について,危険値以上のものがみられた。特にスーダングラスサイレージでは0.4%以上のものもあり,ロールベール向け草種として利用が高まっているが,伸長期に硝酸態窒素を蓄積しやすい草種なので注意が必要である。
 なお,硝酸中毒に対する予防対策として,生産段階では,完熟堆肥の適正施用(牛ふん堆肥では3〜4t/10a),若刈りを避ける(特にスーダングラスでは出穂期以降の収穫),蓄積が心配されるものは低減化のためサイレージとして利用することなどがあげられる。また,給与段階では,高濃度の硝酸態窒素を含む粗飼料は給与しないことが基本であるが,やむなく給与しなければならない場合は,表2に示すように,一度に給与せず多回給与する,あるいは硝酸態窒素濃度の低い飼料と組み合わせて給与するなどの工夫が必要である。

3.簡易型反射式光度計による簡易測定法
 硝酸中毒予防のための粗飼料給与指導をより効果的に行うためには,現場においてサンプリングし,即結果が出せることが有効である。最近注目されている簡易型反射式光度計は,RQフレックス(Merck社製)という商品名で,軽量(寸法19×8×2p,重量275g,写真参照)で持ち運びも容易であり,抽出液に浸した試験紙(硝酸イオン用)をセットするだけで短時間(60秒)で硝酸態窒素濃度測定できる。
 当センターにおいて液体クロマトグラフ法用の抽出液を用いて表1の粗飼料中の硝酸態窒素濃度をRQフレックスで測定したところ,両者の間に高い相関(R2=0.9531)が認められたことから(図1),硝酸態窒素の簡易測定法として十分利用可能と考えられる。しかし,公定法による抽出法は,乾燥,粉砕,振とう,ろ過といった繁雑な操作を要し,即応性の求められる現場での利用においては,より簡易な抽出法が必要であることから,当センターでその検討を行った。
 牧草サイレージの場合,3〜5pに切断した材料10gに490pの水を加え,手で3分撹拌後,90秒の静置でほぼ実測値に近い値が得られた。しかし,利用に当たっては,乾草や茎の太い作物では,材料をさらに細切し,撹拌時間も長くする等,注意が必要である。

簡易型反射式光度計(RQフレックス)