ホーム>岡山畜産便り > 岡山畜産便り2001年2月号 > 超早期母子分離について |
最近,和牛繁殖における新しい子牛生産技術として注目を集めているのが超早期母子分離技術です。
酪農においては,母乳を生産物として出荷するので,子牛を母牛から分離し,代用乳や人工乳を用いて人の手で飼育します。
一方,和牛の世界では,母子を同居させ母乳を利用して子牛を飼育します。しかし,子牛の下痢が多発したり,規模拡大がむずかしいといった問題があります。
これらの問題に対処するために,酪農でおこなわれている技術を導入し,分娩後の早い時期に母子を分離して,子牛を人工哺育するという取り組みがなされています。
超早期母子分離方式の最大のメリットは,繁殖成績の向上です。
母牛は,子牛に初乳のみを与えその後は泌乳しなくてよいので,ホルモンバランスは速やかに正常に戻り,栄養状態に負荷がかからないことから明瞭な発情兆候を示し,11か月1産が可能となります。
また,子牛をつけたままの単房による飼育では,発情を見逃しがちでしたが,母子分離を実施することにより,ただちに群飼ができるので,発情観察が容易になり,発情の見落としが少なくなります。
また,分娩後短期間で母子分離をおこなうので,分娩房の使用期間がこれまでの2・3か月から半月程度に短縮でき,大きなスペースをしめる分娩房を多数用意する必要がなくなります。この余ったスペースを利用して,母牛の増頭が可能となります。
他にも,子牛への授乳のための増飼いが全く不要になるので,飼料費を削減でき,同じ飼料を給与すればよいので母牛の群管理が可能となります。母牛の飼養管理が単純化するので,結果として多頭飼育が可能となります。
一方,子牛にとっての最大のメリットは,下痢の減少です。子牛,特に新生子牛は,疾病に対する抵抗性が低いので,母牛と同居させると細菌感染しやすく,いったん疾病にかかると作業や治療費に大きな負担を強いられることになります。加えて,その後の発育にも悪影響を及ぼすことが多くなります。
また,母牛の乳量による差がなくなるとともに,授乳量が正確に把握できることから,子牛の斉一性が高まります。
また,早くから濃厚飼料・粗飼料を給与するため,第一胃の発達がよく将来食い込める子牛ができるという利点があります。
デメリットとしては,母牛の代わりに代用乳を与えなければならないので,朝夕の作業が増えること,代用乳・人工乳の購入代金,カウハッチ等の子牛を収容するスペースとコストがかかることです。
以上のように,本方式にはデメリット以上に多くのメリットがありますので,繁殖経営の効率化のためにもぜひ取り組んでみてください。