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〔普及センターからの報告〕

循環を基本に,健全な酪農経営をめざす!
─ 宇治酪農部の研究会活動 ─

高梁農業改良普及センター

1.はじめに
 高梁市宇治地区の6戸の酪農家は,びほく農協酪農部の支部組織として,日頃から先進事例視察や研究会等を行い,各自の経営改善に熱心に取り組んでいます。
 今回は,健全な酪農経営は「土→草→牛→糞尿→土」の基本的な循環の中で,安全で良質な自給飼料を生産し,利用(給与)を行い効率の良い生乳生産に結びつけること,をテーマに夫婦そろって研究会を開催しました。
 その概要を紹介します。

2.研究会の内容
 普段から自給粗飼料の生産・利用には関心が高く,岡山県の自給飼料調製技術共励会や高梁市単独の飼料成分分析事業に各農家とも積極的に参加しており,栄養価や発酵品質,VBNや硝酸態窒素等の(分析)値は,ほぼ把握しています。
 その各酪農家のデータを普及センターが処理・加工し,日本標準飼料成分値や県の自給飼料共励会審査報告等を参考に比較・検討することで,傾向とその値の意義及び利用(給与)上の留意点について認識を深めました。
 また,今年度秋にびほく農協酪農部(高梁市と普及センターが協力)が実施した,飼料畑・草地等の土壌調査事業の分析結果を基に,健全土壌の目標値(基準値)と比較・検討を行いました。
 各農家とも具体的な数値を知ることで,フン尿の過剰還元傾向について認識を新たにし,今後の改善対策についての質問や意見が活発に交わされました。
 さらに,フン尿の多量連用に起因する硝酸態窒素やカリを過剰に含む(自給)粗飼料の問題に関して,簡易に測定する方法を紹介し,実際の酪農家サンプルで測定を行いました。

3.今後の課題
 各農家とも限られたほ場でフン尿を還元処理しているため,飼料作物栽培利用面からは適正量を超えた施用が現実に行われています。特に土壌の交換性加里(K2O)の過剰傾向は顕著でこれを改善すること,つまり投入量を制限したり,しばらく休止する必要があります。
 しかし,そのためには処理施設や飼料基盤の拡大整備等にそれなりの投資や期間・労力がかかります。
 健全な酪農経営を存続するには,循環の基本に立ち返り,基盤に見合う飼養規模でいくか,飼養規模に見合う基盤を確保整備するか,それとも全く別の方法・考えで行くか,酪農家によって経営条件は違いますが,それぞれが見直す時代が来たような気がします。