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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

津山家畜診療所 西 崎 完 治

 牛の飼養形態は従来より複雑化している。それに伴い病勢も違っており同じ病気一つみても治りにくくなっています。
 その傾向は乳牛で著しく,肉牛においても同様の傾向に有り当診療所管内の病気,死亡廃用事故の発生状況を見てもここ数年間,同じ疾病が多く,発生件数についても飼育頭数は減少しているが事故頭数の減少は認められない現状です。病気,死亡廃用事故とも単独疾病ではなく合併症が多く認められており死廃事故の多い疾病は次のとおりです。 

 乳牛の疾病
  運動器疾患………関節周囲炎,関節炎,
          蹄底潰瘍
  第四胃変位………右方,左方
  肝炎………………脂肪肝
  ダウナー症候群…産前産後起立不能症
  乳房炎……………急性乳房炎
  熱射病・心不全 

 肉用牛の疾病
 子牛
  下痢症……………白痢
  コクシジウム……血便または白痢後2〜3日後の血便
 肥育牛
  尿石症,四肢腫脹する疾患
        ……ビタミン不足
  鼓脹症……………飼料添加剤(モネンシン)の中止

 以上の中から死亡廃用事故の多い乳牛では乳房炎,肝炎,運動器疾患について見ると同じ急性乳房炎で有っても従来は大腸菌が主であったが,最近ではオガクズに由来するクレブシエラ菌に起因するものも多く,発熱は39℃から微熱程度で乳房の腫脹,硬結はあまり認められず,乳汁は水様性で起立不能を呈する。治療により治った場合でも泌乳停止し経済的に被害も多い。
 肝炎(脂肪肝)も多く,脂肪肝の発生は乾乳期の過剰なエネルギー摂取による肝臓内の中性脂肪の蓄積と泌乳初期の代謝エネルギー不足による体脂肪組織から肝臓への脂肪動員,乾乳期肥満防止のため給与飼料の極端な制限と分娩後の低栄養の脂肪肝が認められる。
 運動器疾患では依然として多発している関節炎,関節周囲炎は蹄底潰瘍,疣状皮膚炎等の蹄病に起因しているものも多い。
 子牛では白痢の数日後血便を伴うコクシジウム症の発症を認め治療経過も長く体力の消耗も激しく成長の遅れも認められる。
 肥育牛では肉質の追求からビタミン剤投与の中止により尿石症,四肢腫脹し,また盲目に近い症状を呈するもの,モネンシンの中止により鼓脹症等消化器疾患が群単位で発症するものも認められています。
 これら複雑化した疾病は他疾病の誘因となり,これらを防止するには牛群,個体の食欲,糞の状況等を把握した上で栄養管理,削蹄(診療所では削蹄師会,市,農協所有の3台削蹄枠の貸出を実施),夏季防暑対策等適正な飼養管理等が重要となります。
 家畜診療所としても乳牛,肉牛とも飼養管理による疾病予防のほか個体診療もまだまだ重要であると考えており畜主,獣医師の連携による病気の早期発見,治療また経営の基本である繁殖成績を向上させるため繁殖検診の実施により分娩間隔を短縮させ生産性向上に努めています。