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肥育用飼料としてのもみ殻の給与

岡山県総合畜産センター    
専門研究員 額 田 和 敬

1 はじめに

 肥育牛に粗飼料を適切に給与すると,反芻胃の機能が維持され,効率的な肥育ができます。
 肥育農家では一般的に粗飼料として稲わらが利用されていますが,稲わらの多くは輸入に頼っており,口蹄疫の発生以来,国産稲わらの供給体制の整備が急務となっています。しかし,農作業の機械化等により稲わらの確保はまだ難しく,また,価格も高いなどの問題があります。
 最近,この稲わらの代替粗飼料として,入手し易いもみ殻の利用が注目されています。
 そこで,当センターのもみ殻を給与した肥育試験の結果を中心に,もみ殻の給与方法を紹介します。

2 一般成分と栄養価

 日本標準飼料成分表によるもみ殻の一般成分と栄養価を表に示します。稲わら,乾草(チモシー)と比較して,粗蛋白質,粗脂肪,可溶性無窒素物量が低く,粗繊維,粗灰分量が高くなっています。粗繊維において消化され難いリグニン等が多く,粗灰分も殆どが消化されない珪酸です。
 このような成分的特性のため,粗蛋白質,可溶性無窒素物及び粗繊維の各消化率が極めて低く,DCP0.3,TDN12.7とかなり低くなっています。

3 加工処理

 もみ殻は表皮をリグニンと珪酸の硬い殻で構成され,形態的にも先端に芒(のぎ)という鋭いとげや表面の剛毛があるため,そのまま多く給与すると消化器粘膜を損傷する恐れがあります。
 もみ殻をそのまま給与する場合もありますが,多くは飼料としての利用性を高める目的で加工処理されます。アンモニアや水酸化ナトリウムによる化学的処理,粉砕や膨軟化による物理的処理,ふすまや水を混ぜてサイレージ化する生物的処理の方法があります。
 化学的処理や生物的処理では,栄養価そのものが改善され,物理的処理では作業労力の軽減,飼料としての取り扱い易さ及び嗜好性が改善されます。

4 黒毛和種去勢牛への給与

 無処理もみ殻及び粉砕もみ殻を9〜26ヵ月齢まで給与した肥育試験を実施しました。無処理もみ殻区及び粉砕もみ殻区とも,もみ殻を濃厚飼料の10%混合した飼料と乾草を給与しました。
 DGは,肥育中期において粉砕もみ殻区の成績がよかったが,肥育全期間ではほぼ同じ0.85s前後となり,慣行の肥育と違いがありませんでした。
 飼料摂取量は,濃厚飼料,もみ殻及び乾草とも肥育期間によって若干変動があるものの,肥育全期間では大きな違いはありません。もみ殻の全期間の摂取量は両区とも0.73s/日と同じでした。
 内臓については両区とも異常が見られませんでした。
 これらのことから,この程度のもみ殻の給与量では,粉砕の有無が肥育成績に影響しないと考えられ,稲わらの代替飼料としてもみ殻の利用が可能と思われます。
 最近の当センター以外の報告では,肥育前期に無処理もみ殻を25%給与しても,DG,採食,反芻機能に違いがなかったとの試験成績があります。
 また,もみ殻を給与した数種の報告をまとめると,全体的にもみ殻は粗飼料としての機能を十分果たせると結論づけています。

5 乳用種去勢牛への給与

 11〜17カ月齢まで,無処理もみ殻を濃厚飼料の10%混合した飼料と稲わらを自由採食させました。
 DGは僅かにもみ殻区が悪くなっていましたが,もみ殻を給与することで,濃厚飼料の採食量が僅かに増加し,稲わらの採食量が激減しており,粗飼料の代替飼料としてのもみ殻の給与効果が認められました。
 しかし,もみ殻区の一部に,第4胃及び十二指腸粘膜の充血が見られ,もみ殻自体の形状等の影響による消化器障害の発生が懸念されます。
 一方,もみ殻を稲わらの2/3程度の代替にととめれば,増体成績及び健康状態も良好であるとの報告もあります。

6 給与方法

 もみ殻をそのまま利用することもできますが,もみ殻を無処理のまま給与することは,消化器粘膜を傷つけ,鼓脹症,消化器疾患の発生原因になることもあるので,粉砕,膨軟化処理することが望まれます。粉砕・膨軟化処理したもみ殻は,無処理のもみ殻に比べ若干コストがかかるものの,長期間給与しても鼓脹症等の発生が少なく,また,飼料としての取り扱いも便利になります。
 もみ殻の給与方法としては,単味で給与するより濃厚飼料と混合することで,嗜好性が向上し,採食量の増加が図られます。また,稲わら,乾草等の他の粗飼料を併用すると,採食量の向上,鼓張症の発生予防などの効果が期待できます。
 もみ殻の給与量については,無処理のもみ殻を給与する場合は,濃厚飼料量に対しもみ殻を10%,他の粗飼料を5〜10%の割合とします。粉砕・膨軟化処理したもみ殻では,20%程度混合して問題がないと言われていますが,安全性を考えて15%までとします。もみ殻の給与量が多くなりすぎると,反芻胃内の滞留時間が長くなり,飼料の食い止まりが生じるので注意して下さい。

7 おわりに

 もみ殻は,比較的安価で入手し易い未利用資源ですが,僅かに牛舎の敷き料として利用されているにすぎません。飼料としての利用を考えると,牛が好んで食べる粗飼料ではありませんが,稲わら等の粗飼料の代わりに,給与方法に注意しながら上手に利用すれば,発育,肉質等に問題はなく,飼料費の削減が期待でき,生産コストの低減が可能となります。