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畜産における茶ガラの利用性について

岡山県総合畜産センター 栗 木 隆 吉

1 はじめに
 平成13年4月1日に施行される食品リサイクル法では,食品関連業者(食品卸業,食品製造業,食品小売業,食事の提供を行う事業者)による食品廃棄物の減量化とともに,飼料や肥料などの原材料として再生利用を促進することとなっている。しかし,現状ではその再生利用率は食品廃棄物全体のわずか17%であり,今後に大きな課題を残している。
 一方,お茶に含まれる様々な機能特性(体によい働き)が知られるようになり,ペットボトルの採用とあわせてちょっとしたお茶ブームとなっている。お茶には様々な生理効果が知られており,その機能成分として特徴的なものはカテキン類である。お茶に含まれるカテキン類は,種類により異なるものの乾物中に10〜25%も含まれている。その機能性としては,抗酸化,抗菌,消臭,血圧上昇抑制,血中コレステロール上昇抑制などの多様な作用が知られている。また,ビタミン類も豊富で抗酸化作用を示すビタミンC及びE,β−カロチンが豊富に含まれている。

2 茶ガラの利用性
 お茶の消費が進むにつれて,当然ながら茶ガラの排出量も増える。とりわけ,飲料としてのお茶ブームは,事業者からの食品廃棄物を増やす結果となっている。この茶ガラには,もとのお茶に含まれる機能成分がかなり残存しており,食品廃棄物として取り扱うのはもったいない話である。
 お茶や茶ガラの畜産における利用については,これまで次のような効果が報告されている。
 @ 肉の保存性向上
   ビタミンEやカロチノイドが筋肉内に蓄積され,肉の抗菌化力が向上し,保存中の品質劣化を抑える。
 A 家畜の健康維持
   カテキン類の抗菌性により病原菌を抑える。
 B 肉色の改善
   肉色の大きな要因である肉色素のミオグロビンは,鉄分を含むヘム部分から成り立っており,カテキン類は生体への鉄分の吸収を抑制することから,間接的にミオグロビンの生成を抑制し,肉色が濃くなるのを抑える。
 C 臭気の低減
   ふんや堆肥などの悪臭を抑制する。

3 茶ガラの特性
 まず,当センターではお茶飲料を生産している県内企業の実状とそこから排出される茶ガラの特性について予備調査を行った。
 A社では,月平均1トン程度の茶葉を使い飲料を生産している。その種類は緑茶だけでなく,ウーロン茶や麦茶,紅茶など多種であり,季節により生産量や割合が異なる。また,その製造方法は基本的には家庭でお茶を入れるのと変わりがなく,大きなタンク内で熱水により抽出され,抽出液のみがこされて充填ラインに運ばれ,残った茶ガラはタンク下部より取り出される。そして,水と空気圧を利用して施設外にある廃棄物用のホッパーに送られる。そのため,ホッパー内の茶ガラは水滴が落ちるぐらい水分含量が高い。また,製造計画によりホッパーにたまる茶ガラの内容は一律でない。
 表1は,抽出タンクに堆積された茶ガラについてその一般成分を調べた結果であるが,水分は78.4%であった。また,カテキン類については表2の通りであり,乾物換算すると約8%であり,抽出後もかなり残っていた。

4 発酵試験

 先にも述べた通り茶ガラは水分含量が高く,排出も一定しないことから,畜産の現場で利用するためには保存方法の検討が必要である。お茶に含まれるカテキン類は抗菌力が高いが,乳酸菌類に対しては効力が弱いといわれている。そこで,畜産では一般的な技術である乳酸発酵によるサイレージ化を検討した。
 10%脱脂乳培地で14時間,38℃で培養した乳酸菌スタータを茶ガラに対して1%添加し,38℃で発酵試験を実施した。また,茶ガラに対してブドウ糖を1%添加した区(添加区)と添加しなかった区(無添加区)を設定した。その結果,発酵の程度を示すpH(図1)は,貯蔵期間を通じて無添加区ではほとんどが変化がなかったが,添加区では貯蔵5日目まで顕著に低下し発酵が旺盛に進み,茶ガラだけでは発酵は進みにくく,スタータの活力を向上させるブドウ糖などの添加が必要であると考えられた。また,水分含量がかなり高いことから,水分調整剤の利用も発酵を促進する点では有効と思われる。

5 県内における茶ガラの利用状況
 お茶については,すでに添加された飼料が販売されており,県内でも肥育牛に給与されている例がある。茶ガラについては,和気町の国友牧場で給与されている。同牧場で扱っているのは御津町にある食品加工メーカーから排出される紅茶ガラである。この食品メーカーでは紅茶ガラに乳酸菌スタータを混合し,10s程度に小分けしてビニール袋に詰めた状態で保存されている。国友さんは月に1度これを取りに行き,後期飼料に対して約5%配合して給与している。紅茶ガラは夏場でも保存性が良好で,添加により牛の食い込みも影響されないとのことであった。

6 ま と め
 実際に茶ガラを利用する場合,食品メーカーにより茶ガラの品質などが異なると予想され,期待される機能作用の検証とともに排出の実状にあわせた利用システムの検討がポイントである。また,茶ガラに限らず地域の事業者からでる食品廃棄物について,食品リサイクル法の施行を契機に飼料資源として見直すことは価値あることと考える。