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「良質粗飼料生産のすすめ」

家畜病性鑑定所 松 本 兼 治

(畜産物生産を取り巻く環境)
・ 昨年3月末日,「口蹄疫」の発生が92年ぶりに宮崎県で肉用牛に確認されその後,宮崎県で2戸,さらに北海道で1戸に発生しました。全国の畜産関係者の日夜にわたる全力を上げた防疫活動の結果,9月26日には国際的に,口蹄疫清浄化復帰が認定されました。なお,本病発生の原因として,「輸入粗飼料」が疑われています。

・ 世界に目を転じますと,ヨーロッパ諸国ではここ数年「狂牛病」が猛威をふるっています。さらに,英国では昨年8月に豚コレラが発生,引き続き本年2月には,24年ぶりに「口蹄疫」が発生し,フランスでも発生が確認されました。さらに,近隣諸国への伝播も危惧されております。また,台湾,香港等でも「口蹄疫」が発生しています。まさに,海外悪性伝染病の日本への侵入阻止へ向けた「危機管理体制の確立」がより一層重要となっています。

・ 昨年5月,鶏用配合飼料から検出された遺伝子組換え飼料(スターリンク)混入問題は,飼料用穀類の90%をアメリカ等からの輸入に依存するわが国畜産の今後に,大きな影響を与えています。

(安全・安定の確保と栄養の理解を)
・ 21世紀の社会では,あらゆる分野で「安全性の確保」がキーワードとなる事から畜産物と畜産環境の安全性確保技術の開発は重要な課題となっています。そのためには,自給飼料生産と家畜排泄物の有効利用をさらに推進する必要があります。

・ 当所では,良質な飼料給与の一助として自給粗飼料成分分析を行っています。また,本年4月より新たに,牛中心(当面)の「堆きゅう肥分析」を行います。一般成分分析は,水分,窒素,リン酸,加里,炭素,pH等です。積極的な活用をお願いします。

・ 自ら生産した粗飼料(生草,乾草,サイレージ等)の成分を理解され,より効率的な飼養管理を実施してください。一般成分(水分,蛋白,脂肪等)とリン,カルシウム,マグネシウム等のミネラル類や硝酸態窒素などを検査しています。それぞれの成分の過剰・欠乏を知らず知らずのうちに起こしてしまう前に粗飼料成分分析の実施をおすすめします。

・ ミネラル類は,全ての代謝性および栄養性疾患に重要な役割をはたしています。リンが欠乏すると食欲が低下したり普段は食べないものを食べるようになったりして生産効率が低下することが知られています。カルシウムやリンのバランスが正常でないと「くる病」や「骨軟症」の原因となりますし,カルシウム給与が過剰では他の無機物の利用が低下してしまいます。また,マグネシウムが欠乏すると,けいれんや成長停止を起こすとされています。硝酸中毒についてもよく知られており,身震いや起立不能,呼吸速迫等を呈し急性経過では突然死することも稀ではありません。

・ 良質粗飼料生産は「土作り」が大切であり,疲弊した土壌を活性化させるには,家畜の堆きゅう肥の有効利用が重要なポイントになります。今後,家畜排泄物の取り扱いは法律で規制されますが,今こそ,家畜堆きゅう肥を耕作地へ還元し,輸入飼料に頼らない自給飼料に基づく家畜生産の推進を展望してください。

・ 粗飼料や堆きゅう肥の分析をご希望の場合は,お近くの家畜保健衛生所を通じて申し込んでください。手数料は「一般成分分析:1,050円・ミネラル等1成分:580円」です。