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弱酸性次亜塩素酸ソーダ水による鶏卵の洗浄効果

岡山県総合畜産センター 中小家畜部  
研究員 森   尚 之

 消毒効果のある機能水として注目されつつある弱酸性次亜塩素酸ソーダ水(以下弱酸性水という)は,医療や食品産業分野で積極的に利用され始めています。弱酸性水の特徴を表1に示したが,一般細菌,ウイルスに殺菌効果を示し,残留性及び金属腐食性が低いなど,扱いやすく殺菌効果をもつ機能水と言えます。そこで,鶏卵の洗浄効果を比較するため,弱酸性水(有効塩素濃度50ppm),次亜塩素酸ソーダ水(有効塩素濃度150ppm)及び滅菌精製水を用いて,食品衛生的に指標細菌として利用される一般細菌数を計測した細菌学的検査及びハウユニットによる卵質検査の調査により,卵殻付着一般細菌数と卵質への影響を比較検討しました。

 各洗浄水の温度を55℃に設定し鶏卵洗浄を行ったところ,各試験区において一般細菌数の減少が認められました。さらに,その効果を洗浄前後の一般細菌数の減少率により検討したところ,洗浄水温度が55℃の洗浄直後では,弱酸性水が滅菌精製水よりも洗浄効果がありました。洗浄48hr後(4℃保存)では,次亜塩素酸ソーダ水及び弱酸性水が滅菌精製水よりも洗浄効果がありました(表2)。卵質の変化は,洗浄直後のハウユニットを測定したところ,洗浄水の違いによる差を認めませんでした。

 以上の結果から,弱酸性水は,次亜塩素酸ソーダ水と同等の洗浄効果を示し,その効果は48時間継続して認められました。
 弱酸性水は,有効塩素濃度が次亜塩素酸ソーダ水より低い状態でも充分な洗浄力があり,鶏卵の品質へ与える影響も少ないことが示唆されました。これは,ハロゲン系消毒薬のうち塩素系消毒薬の特徴である「酸性に傾くほど,消毒効果が高い」ことによるものと考えられます。一般に次亜塩素酸ソーダ水を使用する場合,pHは8以上であり,この状態では水中での塩素の形であるCl2,HOCl,OCl−,Cl−のうち殺菌効力の高いHOClの割合が減少し,殺菌効力の低いOCl−,の割合が増加する(pH10ではほとんどがOCl−)ため,殺菌効力が減弱します。例えば,pH10では,pH5より150倍の塩素量を使用しなければ,同等の殺菌効果が得られないと言われています。今回,有効塩素濃度50ppmの弱酸性水を使用しましたが,弱酸性(pH5.5〜6.5)並びに55℃での使用を想定するならば,低濃度(有効塩素濃度30ppm程度)でも効果があり,卵殻洗浄に有効な素材と考えられます。