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〔普及現場からの報告〕

細霧冷房装置の作動条件について

岡山県農業総合センター総合調整部  
技術普及課旭分室 佐 藤 和 久

 最近,防暑対策として細霧冷房装置を設置する酪農家が増えてきました。細霧冷房装置は,細かい水滴を畜舎内に断続的に霧状噴霧し,気化熱を奪うことで畜舎内の気温を下げようとするものです。
 昨年度,岡山農業改良普及センターでは細霧冷房装置を設置した酪農家(1戸)について畜舎内気温,湿度を調査し,細霧冷房装置の作動条件を検討したので,その概要を紹介します。

1.調査の方法

 平成12年9月5日〜13日(運転5日〜8日,停止9日以降),畜舎内に温度・湿度記録計を設置し,外気温・湿度(岡山測候所)との比較により有効性・問題点を検討しました。気温(乾球温度とみなした)と相対湿度から湿球温度を推定し,以下の式(Bianca)で乳牛の体感温度を求め,効果の指標としました。
体感温度=乾球温度×0.35+湿球温度×0.65

2.調査結果

 細霧装置の運転期間中(但し気温約27℃以上で作動するよう設定されている),舎内の気温は舎外より低く,特に日中の高温(30℃以上)時には最大10℃の温度差がありました。しかし,体感温度差は小さく,舎内の方が高くなる場合もありました(図1)。この原因は湿球温度,つまり湿度にあり,舎内の湿度の推移を検討する必要があると考えられました。

 そこで相対湿度の推移をみると舎内が常に舎外より高く,特に日中(午前10時〜午後6時)に舎内外間の相対湿度差が拡大する傾向がみられました(図2)。

これは細霧の作動時間帯にほぼ一致しました。さらに絶対湿度(空気中に含まれる水蒸気量)について同様にみたところ,この時間帯に舎内の絶対湿度が上昇していました(図3)。

 以上から,細霧噴霧が畜舎内空気中の水分量を上昇させ,体感温度の低下を妨げあるいは上昇させる場合のあることが推測されました。
 このことを相対湿度別にみると,舎外湿度が50%以下の場合は絶対湿度が上昇せず,体感温度が低下し(図4),細霧の効果があがっているものと考えられました。

 一方で,湿度が50%を超えると細霧作動が体感温度を上昇させ,このような場合には体熱放散に最も重要な夜間(夜10時〜翌朝4時)においても体感温度が高く,高湿度条件下で昼間に蓄積された水分が,夜間の体感温度の高止まりに関与している可能性が考えられました(参考:図1)。
 細霧装置の作動条件として気温27℃を設定している事例を多く見ます。しかし,今回の調査結果から,作動条件としては湿度が重要と考えられ,調査酪農家に対し普及センターが湿度計の設置を指導し,湿度50%を目安とした作動管理をするようにしました。

 調査の概要は以上の通りですが,当初考えていた以上に舎内湿度が高いことに驚かされ,外部の空気を積極的に取り入れることの重要性も再認識できました。