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〔特集〕

環境問題に対する取り組みについて

岡山県総合畜産センター    
飼料環境部 古 川 陽 一

1.はじめに

 「家畜ふん尿処理利用適正化法」の施行により,ふんの堆肥化は定着しつつあります。一方,尿汚水主体の畜舎排水については,大きな課題となっています。
 今回は,これら畜舎排水処理に対する当センターでの成果と今後の取り組みについて紹介します。

2.簡易活性汚泥法における曝気時臭気の推移

 牛尿汚水の圃場散布時の臭気低減をねらい,尿汚水直接曝気を試みました。その結果,圃場散布時臭気は半減し,散布は曝気開始後2〜3日目が適当と考えられましたが,曝気時の臭気抑制という課題が生じました。
 以上のことから,活性汚泥法に準じて曝気槽に活性汚泥を投入するとともに,尿汚水を毎日一定量投入して曝気時臭気の低減試験を行いました。尿汚水投入量は活性汚泥曝気槽に対して,BOD容積負荷量で0.4(1区),0.8(2区),1.6(3区),3.2(4区)s/k・日及び尿汚水直接曝気(5区)としました。
 アンモニアの発生(図1)は,BOD容積負荷量1.6kg以上で300ppm以上に対し,1,2区では汚水投入直後1区10ppm,2区40ppmと少なく,その後1区で6時間後,2区では21時間後にそれぞれ検知できなくなりました。一方,硫黄化合物系臭気は投入直後0.3〜1.0ppm程度でしたが,以後急激に低下しました。1区では6時間目で0.001ppm以下に,2区においても21時間目で0.001ppmまで低下しましたが,その他の区では21時間が経過しても0.01ppm以上にとどまりました。このことから,圃場散布を目的とした簡易曝気法においては,BOD容積負荷量は0.4s/k・日以下とする必要があると考えられます。

図1 アンモニア揮散量の推移

3.ミルキングパーラー排出汚水の処理

 県内においてミルキングパーラー方式を採用している酪農家について,排出汚水の処理方法を調査しました。その概要は表1のとおりです。これら排出汚水の処理法は土地浸透または圃場還元,放流,ふん尿との混合処理に分類され,放流にしても沈殿,曝気など何らかの前処理が行われていました。また,ミルキングパーラー導入に伴う使用水量の増加から,ミルカー等の洗浄水をパーラー内の床洗浄等に再利用する例もみられます。

 なお,これら排出汚水の水質は,採取時間,貯留法等が大きく異なり一概には言えませんが,本調査の平均値では,pH6.3(4.5〜8.4),BOD776ppm(37〜1773),COD573ppm(163〜1468),SS854ppm(393〜1960)T-N108ppm(39〜321),T-P29ppm(7〜66)であり,大腸菌群数は105MPN/100pでありました。
 調査農家のうち,簡易浄化施設(曝気槽4.2k,土壌植物濾床28u等)を有する農家(経産牛65頭,育成牛18頭)について,1年を通じて水質調査を行った結果,冬期に若干能力低下が認められるものの,年間を通じてほぼ安定した浄化能力を認めました。
 また,洗剤,消毒剤の混入するこれら排出汚水が活性汚泥に及ぼす影響を調査した結果,洗剤,消毒剤をマニュアルに記載されている標準使用量では浄化能力に問題は認められませんでした。

4.今後の取り組み

 畜産環境問題に対する取り組みは,ふん尿の処理を中心に進められてきましたが,近年,他産業を含めた地域リサイクルが研究の主題となってきています。このような情勢を受けて,当センターでは環境問題に対して次の課題に取り組んでいます。

 (1) 低コスト尿汚水処理施設実証試験
 河川への放流及び今後想定される下水道への投入等を念頭に,乳牛約40頭規模尿汚水処理モデル施設(600万円程度)により,実証検討をすすめます。処理施設はこれまで研究してきた活性汚泥法,生物膜法による浄化と酸化チタンによる脱色を組み合わせて実用化を図ります。

 (2) 畜舎排水処理,利用に関する現地調査
 水田等への液肥利用を前提として,フィールドにおける尿汚水処理及び尿の肥料成分の実態を調査し,今後の試験研究及び指導のための基礎資料とするとともに,尿成分,ふん尿混合率等の簡易推定法を検討します。

 (3) 生ゴミ等有機資源リサイクル技術の確立
 地域循環型社会への関心が高まる中,生ゴミと家畜ふんの混合堆肥化による資源の循環促進に期待が寄せられています。そこで,生ゴミ堆肥化の課題である水分,臭気等について,収集システムを検討するとともに,スクープ型堆肥化施設における発酵の季節的変動,悪臭の抑制など実用化に向けた実証研究をすすめます。