ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り2001年7月号 > 汚水の脱色技術あれこれ!!

〔特集〕

汚水の脱色技術あれこれ!!

岡山県総合畜産センター         
飼料環境部環境衛生科 脇 本 進 行

 家畜尿汚水を活性汚泥法などで処理した場合,多くの例では,排水は赤褐色や茶褐色を呈しています。これら処理水が清冽な河川に流入すれば非常に汚いイメージを与えることになります。また,最近では神奈川県など放流水の色に関する基準を設ける自治体も出てきており,今後,我々畜産関係者も排水の色の問題についても認識していく必要があります。
 今回,繊維工業業界等の分野で利用されている最新の脱色技術とあわせ,当センターで行っている酸化チタンを利用した浄化処理水の脱色技術について紹介します。

1.様々な脱色技術

 産業界では排水の着色の問題については,特に繊維工場等の排水が大きく注目されてきています。繊維染色や染料合成工場からの排水は着色が濃く,その対策が求められています。これらの排水は多くの染料,助剤,薬剤が含まれ染色工程も複雑であり,水質,水量の変動も著しい。また,染色色素は本来染色が落ちないように作られるため,一般に分解されにくいと言われています。これらの業界を中心として工業分野での排水に関する脱色技術の特徴や欠点をまとめると表1のようになります。これら脱色技術の開発が進められていますが,まだ畜産への応用は,コストの面からも十分とは言えない状況にあります。環境問題が広く叫ばれている今日では畜産分野でも注目していく必要があると考えられます。

2.岡山県総合畜産センターで取り組んでいる酸化チタンを利用した脱色技術

 当センターでは,畜産排水に多く見られる茶褐色や赤褐色をした処理水の脱色に酸化チタンを利用して効率的脱色法の研究をすすめています。

 (1) 脱色の原理

 酸化チタンによる脱色は,紫外線を受けることにより酸化チタンに電子が生じ,これが水分子と反応することで強い酸化力を持ったO2−やOHが生成する。色素分子がこれらと反応して水や二酸化炭素などの低分子物質に酸化分解されます。

 (2) 試験の概要

写真1 ポリオレフィン担持酸化チタン 写真2 酸化チタン脱色装置

 これまでの研究では,酸化チタンの形態は粉末であるため分離しにくく,脱色後の回収方法が問題となっていました。平成12年度には民間企業との協力で改善し,酸化チタンをポリオレフィンに定着させた約5oほどの粒(オルガノ社製 写真1)を利用しました。試験は写真2に示す酸化チタン脱色装置(固定床方式)を使用し,表2に示す通り試験区を設定,汚水の流速とpHの違いによる脱色率の変化を調査しました。

 (3) 結  果

  ア 各試験区におけるpHによる違いではpH3調整区がpH5調整区より脱色率が高く,流速では20L/hrが10L/hrに比べ良好な成績が得られました。これは酸性化で着色原因物質の分解が促進されたこと,流速を高めることにより酸化チタンへの接触面積が拡大した結果と考えられます。
    各試験区における脱色率の経時的変化は図1に示すとおりで,8時間後の脱色率は1区67.6%,2区37.0%,3区30.9%,4区61.4%でありました。(写真3)

写真3 酸化チタンによる脱色処理水

  イ 処理水の性状は,COD除去率は33.3%〜51.1%となり,色素の分解に加えてCODの除去効果も認められました。
    これらの結果を踏まえて,本年度はさらに効率的な装置等の開発を含め実証に取り組んでいく予定です。


(豆知識)

酸化チタン(TiO2)とは

 酸化チタンは,もともと化学繊維,塗料,インク,化粧品などに利用されていた白い粉の物質で,ここ30年ほどで急激に需要が増えた物質です。この物質は光触媒能を有し,紫外線照射下で酸化チタン表面に接触している物質を酸化分解する事ができます。この能力を利用して除菌や脱臭用のフィルターや汚れが付きにくいセメントなどが開発され実用化されています。また,酸化チタンは超親水性であることが確認され,これらを利用して技術開発・商品化も進められています。