ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り2001年8月号 > 超早期母子分離技術の活用について

〔普及現場からの報告〕

超早期母子分離技術の活用について

阿新農業改良普及センター

1 はじめに

 和牛繁殖経営において,子牛の下痢は発育不良の大きな要因になっています。最近,この対策の一つとして「超早期母子分離技術」を導入する農家が増えています。阿新地域でも平成11年に,宮崎県の事例を視察したのがきっかけとなり,この技術に取り組んでいる農家がいます。そこで,いままで取り組んだ実績の中から得られた内容を紹介します。

2 取り組み内容

 超早期母子分離技術とは,従来母子同居で母牛に子牛育成をまかせていたのを,分娩後すぐに(3〜5日)母子を分離して人工哺育(75〜90日離乳)により子牛育成をする方法です。新見市井倉地区では,和牛繁殖農家5戸(飼養規模は5頭から23頭まで)が,平成11年4月以降に生まれた子牛すべてを人工哺育し,現在までにその育成頭数が95頭になりました。そのうち,全共用に10頭のET子牛育成も行いました。

3 超早期母子分離技術のメリット

 (1) 子牛の下痢減少
 子牛の下痢は,1日3回の哺乳と個体管理で早期発見早期処置することができ,大幅に減少しました。また,下痢をしても程度が軽く,治療費が節減できています。ほ乳瓶になれているので薬が飲ませやすいというメリットもあります。

 (2) 子牛の発育の斉一化
 母乳にたよらないため,母牛の能力に関係なく子牛の発育の斉一化がとれます。また,生時体重が小さい子牛でも十分育成することができるようになりました。

 (3) 母牛の繁殖成績の向上
 母牛の個体差はありますが,平均的に分娩間隔の短縮が可能になりました。一部の農家では11カ月1産も実現できています。

 (4) 施設の効率利用と作業の省力及び単純化
 生後3〜5日でカーフハッチに移すため,何ヶ月も分娩房を独占せず,効率よく施設が使えます。現行の牛舎でもカーフハッチ設置のスペースがあれば,増築等行わないで増頭することが可能です。ふん尿処理は,従来の母子同居に比べ,母子分離の方が楽になり,作業が軽減し,子牛も衛生的に飼えるようになりました。また,母牛には母子分離後すぐに維持期の飼養管理に切り替えるため,増し飼い飼料費が節約でき,作業も単純化しました。
 この技術のデメリットとしては,@朝(昼)夕の代用乳給与作業が増える。A代用乳など子牛用飼料費が増える。Bカーフハッチ設置のためのスペースと経費が必要になる。といったことがありますが,上記のような多くのメリットがありますので,多頭飼育だけでなくても,母乳が少ない場合の子牛にでもこの技術を導入してみてはいかがでしょうか。