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〔普及現場からの報告〕

酪農先進地,北海道におけるカウ・コンフォート

井笠農業改良普及センター 森 山 靖 成

1 はじめに

 家畜の飼育環境は「生産性」や「健康」に大きな影響を与えます。この環境改善についての取り組みが最近活発になりつつあります。
 6月18日から22日にかけて,北海道東部の普及センター(別海町,清里町,士幌町)を訪問し,酪農における生産性向上の基本となる「カウコンフォート」(乳牛の快適性)に焦点を置いた調査をしましたので,参考にしていただきたいと思います。

2 カウコンフォートとは?

 繋ぎ牛舎の場合,特にいえることですが,24時間繋がれっぱなし状態での寝起きや飲食など,行動が拘束される中で,自由度を確保しながらストレスを減らし,その分をいかに乳生産に結びつけるかということです。

3 カウコンフォートの5つのポイント

 牛床,換気,繋留,飼槽,給水の5点セットで牛舎改造に取り組んでいました。

 (1) 牛   床

 2.5uの牛床(1.5×1.7m)が乳牛にとっての生活場所です。その場で寝起きをし飲食(反芻)・排せつ・搾乳・種付け・分娩が行われます。ですから牛床の改善は牛を長持ちさせることにもつながります。
 牛床には柔らかく寝起きの時に痛くないクッション性と尿や漏乳等で傷まない耐久性が求められますので,これらが,マット等牛床の材質を選ぶ上でのポイントとなります。
 乳牛の牛床に対する反応は,前膝・飛節部分のスレや腫れに表れます。
 岡山では,コンクリートに敷料を入れたり,クッション性の低いゴムマットを利用しているところが多く,改善の必要性を感じます。

 (2) 換   気

 北海道でも,ここ3年間の夏季の猛暑により換気扇の導入が当たり前になってきています。
 閉鎖式牛舎の多い北海道では,片方の壁だけに換気扇を設置し,一方向に換気するやり方「トンネル換気」が主流になっています。冬もインバーター調整により24時間稼働させ,牛舎の換気と除湿を図っています。

 (3) 繋   留

 牛は起きあがるとき,首を前に伸ばした反動で後ろ足から立ち上がりますが,この動作に支障のない繋留方式とする必要があります。
 北海道には,こうした動作に制約の大きいスタンチョン方式の繋留割合が高いため,より自由度の大きいニューヨークタイストール方式に変わりつつあります。
 しかし,自由度がありすぎると,となりの牛のエサを盗食する心配がありますが,乾乳牛と搾乳牛をとなりにしないなど工夫をしています。
 なお,繋留方式の改善を行う際には牛の行動観察を十分に行い問題点をよく把握することが大切です。

 (4) 飼   槽

 飼槽は牛の採食姿勢を妨げない構造で,新鮮な飼料がいつでも摂取できるように管理すること(エサ押し,掃き寄せ)が重要です。

 @ 飼料給与・清掃がやりやすい
  (古い飼料がこびりついて腐ると採食量が減り清掃もしづらくなります)
 A 異物(汚物・水)が容易に入らない
 B 給与飼料のロスが少ない

 以上の項目を満たすために,牛床との区切り(胸垂の真下)にエサ止め板(牛床から10〜20pの高さ,木製がベスト)を設置し,延長面の平面飼槽にFRP又はレジコンを最低80p塗ります。

 (5) 給   水

 水は軽く考えられがちですが,必要不可欠な栄養素です。また,水の不足は飼料の食い込み量を制限して乳量にも大きく影響を与えます。
 繋ぎ方式での乳牛は飼料給与と同時に一斉に水を飲み始め飲水量が急激に増えます。
 この時,全頭に十分に水が行き渡るように,また,2頭に1個のウオーターカップで,弱い牛が飲みにくい場合を解消する手段として,連続水槽(大型のステンレス製のトイ)が馬せん棒に固定して設置されています。

4 井笠地域でのカウコンフォートの普及

 (1) 農家の反応

 北海道の調査結果を即座に現地に還元するために,精力的に情報提供し農家の反応を見てみました。
 農家の声としては,
「老朽化した飼槽表面を早く改善したい」
「エサ止め板は,簡単に取り組めそうだ」
「ゴムマットの選定を次回は慎重にしたい」
「連続水槽ってスゴイなあ」
との感想がありました。

 (2) 普及の第一歩

 次に興味を示した農家に対して,現状把握のために,普及員等によるバーンミーティングを行いました。
 現場では,農家に対し,あら探し的な言動を行わず,後日ペーパーにまとめて,牛舎改造のアドバイスをしました。
 盛夏の折でしたが,農家は汗を拭きながらも熱心に普及員の声に耳を傾け,牛舎環境の改善に向けて熱心な意見交換を行っており,地域全体にカウコンフォートについての意識付けができつつあります。
 まず,手始めに飼槽についてFRP又はレジコンの塗り替えとエサの止め板の設置ができる農家をつくったうえで,地域全体に波及していければと思っています。

 (3) 人にも優しい岡山式を

 北海道の事例をそのまま真似てみるのも方法ですが,やはり岡山の気候風土にあったやり方があると思います。
 現地で農家の声を聞きながらカウコンフォートについて推進し,岡山式での実績を出せればと僭越ながら思っています。
 牛が快適になるということは,農家にとっても決してマイナスではないということは間違いない事実です。

 カウコンフォートに興味のある方はお近くの普及センターにお問い合わせください。

参考資料:北海道南根室地区農業改良普及センター(南根室地区農業改良推進協議会)作成資料「乳牛の快適性」ほか