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〔地域情報〕

「オーストリッチパーク」のダチョウとエミュー

倉敷地方振興局農林水産事業部 畜産係

 総社市赤浜に「オーストリッチパーク」があるのをご存じでしょうか。今回はこの牧場について紹介します。
 オーストリッチ(Ostrich)とは,英語でダチョウ(駝鳥)のこと。しかし,この牧場にはダチョウよりエミュー(Emu)の方が羽数も多くなり,今ではこちらの方が主体となっています。

オーストリッチパーク遠景
名 称     オーストリッチパーク
 園 長     田口 正行
 飼育場     総社市赤浜550
 連絡先(事務所)岡山市吉備津989
           TEL 086-287-3169
 自 宅     岡山市高松258-1

 このオーストリッチパークは,岡山市高松の田口正行さんが個人で牧場を整備し,5年前にオランダからダチョウの雄2羽,雌4羽及び受精卵6個を輸入して開園したものです。また,エミューについては受精卵を4年前にオランダから,3年前にはアメリカ(テキサス州)から輸入して孵化させました。孵卵は専用孵卵器を事務所に設置し,自分で行っています。しかし,ダチョウでは未受精卵が多く,また,孵卵も難しいため繁殖には成功しませんでした。一方,エミューは順調に孵卵でき,現在では67羽の大所帯となっています。

9月19日現在の飼養羽数
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      ダチョウ    エミュー
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 成鳥(♂)          12羽
 成鳥(♀)  4羽      8羽
 2年雛            23羽
 1年雛            24羽
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 合計     4羽      67羽
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艀卵器内部

 給与飼料は粗飼料・濃厚飼料とも,入手の容易なものを組み合わせて給与しています。専用飼料もありますが需要が少ないために割高になるそうです。
 産卵期の成雌への飼料給与は朝だけの1回で,1日1羽当たり,ダチョウには採卵鶏用配合飼料・トウモロコシ・アルファルファミール・ふすま・ヘイキューブを混合したものを1.8〜2.0s,エミューには上記配合からヘイキューブを除いた飼料を1.0s,さらにいずれにもキャベツを少量ずつ給与しています。
 飼育上の問題としては,成鳥同士の喧嘩(蹴とばし)による股関節脱臼などの怪我が起こります。繁殖経営の場合,これを防ぐためにはペアリング(ダチョウでは♂1羽に♀1〜2羽,エミューでは♂1羽に♀1羽)毎の分離飼育が必要です。
 経営状況についてはエミューの素雛供給を主とし,加茂川町ストックファームを始めとして県内外に広く供給しており,現在「オーストリッチパーク湯原」からも引き合いがきています。卵の販売も開始しており,現在は“くちコミ”が主体ですが,今後は道の駅等を販売拠点として供給していきたいとのこと。精肉については近くに適当な処理・検査施設がないことから自家消費のみの状況です。
 ダチョウ肉は赤味を呈し鶏肉よりも鯨肉や牛肉に近い感じがします。エミュー肉はダチョウ肉より美味といわれます。卵もダチョウよりエミューの方が美味。田口氏の見解では繁殖性や肉・卵の味からみてダチョウよりエミューの方が良く,採算性からも日本では今後,エミューが普及していくだろうとのことです。

左からウズラ,鶏,エミュー,ダチョウの卵
ダチョウとエミューの特徴
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       ダチョウ      エミュー
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 生息地   アフリカ    オーストラリア
 体高(♀)   2.0〜2.5m     1.7m前後 
 体重(♀)   120〜150s   55s以上
 性成熟     2〜3年     1.5年   
 卵殻色    黄白色      深緑色  
 卵 重    1,500〜1,600g   500〜600g
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ダチョウの運動場
エミューの2年雛

 ところで,今年8月8日には日本オーストリッチ協議会から新たに設立される日本オーストリッチ事業協同組合の設立総会が開催されました。東京都台東区に事務局(TEL:03-3833-3730)が置かれ,ここでは教育情報事業,生産基盤整備事業,共同購買事業などが行われる予定です。また,エミューについては1997年に日本エミュー協会(TEL:045-593-2176)が発足しています。これからは日本各地でダチョウやエミューの走り回る牧場が見られるようになるのでしょうか。
 ダチョウ,エミューとも,その飼育にはストレス対策と運動のために走り回れるような広い草地が必要なことから,総社オーストリッチパークでは近くに広い草地(牧場跡地など)があればと移転拡大を検討しています。また,今後は近親交配を避けるためにも他の牧場との交流が必要となります。そのためにも,「少しでも仲間が増えれば」と田口園長は願っています。