ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り2001年10月号 > 堆肥利用の耕種農家を訪ねて(1)

〔シリーズ〕堆肥利用の耕種農家を訪ねて(1)

サンファームハラ
「積んだだけの畜ふんと発酵した堆肥は違う」

社団法人岡山県畜産会 大村 昌治郎

写真1 サンファームハラでハウス栽培されている小松菜
写真2 原 誠一さん

 土づくりや持続的な農業生産方式の重要性等が叫ばれている中,資源循環型農業の推進には,堆肥などの有機物の施肥・利用が欠かせません。一方,畜産農家においては,糞尿の不適切な処理による環境汚染防止を計るため,堆肥化施設の新規投資など費用の増大,さらには堆肥の圃場還元や流通が課題となっています。耕種においても,畜産においても,どちらも堆肥の重要性・必要性は認識されていると思われていますが,なかなか,畜産から耕種へとうまく連携ができていないのが現状のようです。
 そのような中で,すでに耕種と畜産の連携を25年以上も続けられているサンファームハラの原 誠一さんをたずねてみました。サンファームハラの農場は総社市にあり,高梁川流域の砂質土壌の畑で,堆肥を利用して,ほうれん草などの軟弱野菜のハウス栽培をされています。
 このたび,原さんには,平成13年度岡山県良質堆きゅう肥共励会の審査員をお願いしたこともあり,農場におじゃまして,どのような堆肥を利用されているか,うかがってきました。
 すでに,サンファームハラについては,岡山畜産便り1999年11・12月号に,幸農会堆肥利用組合(注 現在は幸農会土づくり研究会に変更しています。)については,岡山畜産便り2000年3月号に掲載されていますが,堆肥の利用についてさらに詳しくうかがってみました。

1 栽培作目と面積

 サンファームハラで栽培している作目は,大衆的に売れるものを栽培されています。現在では,7品種で,ほうれん草,小松菜,ねぎ,春菊,水菜,しろなを,ハウス50aに随時栽培しています。収穫された野菜は,マルナカに9割,ダイエー中四国に1割出荷しています。マルナカには幸農会ブランドで,ダイエーにはサンファームハラブランドで出荷しています。
 ねぎを,他作目の栽培の間にはさむことによって,連作障害を防いでいます。しかし,ねぎを合間にいれると年間の栽培回数が減って回転率は下がるそうです。

2 堆肥の施肥状況

 堆肥を施肥する期間は,10月から6月までの期間です。夏場に施肥をしない理由は,堆肥を施肥することによって,ハウス中の土壌の乾燥害が起きるためです。
 施肥量はハウス(6m×50m=300u)1棟当たりに,農場にある堆肥舎で堆肥化したモミガラ堆肥(水分30〜40%)2トンを収穫後に散布しています。施肥の回数は年に3〜4回ほどになります。
 10a当たりに換算すると,1回の施肥で6.7トンで,年に3〜4回施肥するので,1年間に10aあたり約20〜27トンの堆肥を施肥しています。

3 現在,利用している堆肥について

 地域住民との間で悪臭や害虫発生の環境問題で苦慮していた畜産農家と,長年の農薬や化学肥料の依存により野菜の品質低下や立枯病等の連作障害が発生していた耕種農家が,このような問題を解決するために,ふん尿の農地還元を目的に「幸農会堆肥生産利用組合」を昭和51年に結成しました。
 幸農会堆肥利用組合は,倉敷市の貝原牧場において,オガクズとふん尿を混合したものを,耕種農家が各自持ち帰り,それぞれの堆肥舎で堆肥化を行いながら,25年以上も畜産と耕種の連携を続けてきました。
 しかしながら,貝原牧場が酪農部門を中止したため,「幸農会堆肥生産利用組合」を「幸農会土づくり研究会」に変更して,現在も同じメンバーで活動を続けています。
 サンファームハラでは,堆肥の原料となる家畜糞は,乳用牛糞で,倉敷市玉島の宗田牧場から,糞を2日に1回1トンダンプに運搬してきてもらっています。堆肥舎は,面積が180uで,2列構造〔1列(6m×15m)×2〕になっています。1列はモミガラ置き場として,もう1列は堆肥の発酵槽として利用しています。

図1 堆肥舎の配置図

 家畜糞の水分調整はモミガラを使って行っており,糞と同量もしくは2割り増し(1.2倍)の容積のモミガラを混合してから,堆肥化を行っています。モミガラは未粉砕モミガラを使用しています。未粉砕モミガラは吸水性は良くないが,通気性改善の面では良好な性質があり,粉砕モミガラは逆の性質を持っているとされています。粉砕しないと吸水性が悪く水分調整できないのではないかと思われますが,原さんは「粉砕モミガラを使わなくても水分調整はできる」と考えられています。
 そのため,十分なモミガラと混合した状態では,水分調整もしっかりとされており,排汁はでていません。
 使いやすい堆肥というのは,「有害物質がぬけたもの」と考えられて利用されています。また,「発酵菌などは必要ない」と考えられ,堆肥化に添加剤を利用していません。
 堆肥化において,堆肥舎とローダーがあれば十分であり,過剰な投資により,利用する堆肥のコストが高くならないように考えられています。

写真3 2日前に持ち込まれた家畜ふんとモミガラを混合したものを,ローダーで,積み込んでいる 写真4 積み込んだ直後の家畜ふんとモミガラの混合物
写真5 約1年間堆肥化したモミガラ堆肥

 使いたい堆肥としての腐熟度の考え方は,「有害物質がでない状態であれば,腐熟していると考えている。」とのことでした。畑からヒトヨダケが生えてくると,堆肥中のリグニンなどの木質が分解されているということが分かるそうです。「積んだだけの畜ふんと発酵した堆肥は違うんだ。そこを分かっていない人が多い」とたびたび,原さんは口にされます。また,堆肥の粒度(粗さ)については,とくに気にしていないそうです。さらに,現在使用している堆肥の,成分分析はまだしていないそうです。

4 堆肥の施用効果について

 一般的に,家畜糞堆肥などの品質の良い堆肥を適量施肥すれば,作物に養分を供給するとともに,土壌の化学性・物理性・生物性を改善し地力を高めることによって,作物の安定増収を望むことができます。
 サンファームハラでは,堆肥は毎年続けて施用しています。堆肥を毎年施肥しても,「土が堆肥を食ってしまう」ので,毎年続けて施用しているそうです。「土が食ってしまう」というのは,堆肥が土に戻っていくことだそうです。
 「堆肥を施用することで,土壌はどう変わりますか?」と尋ねたところ,「排水,保湿・保水性,冬場の保温性,作物の根の張りが良くなる。」と回答がありました。これは,土壌中の有機物含量が高くなった結果,土壌の団粒化が進んで軟らかくなり,土壌の物理性の改善が認められていると考えられます。
 堆肥の施用効果により,野菜の生育は良くなるとのことでした。土壌の団粒構造化のため,作物の根の伸びがよいので,養分や水分の吸収能力が高まるため,野菜の生育もよいのだそうです。
 ただし,堆肥の施肥により病害虫の発生は多くなるそうです。よく発生する害虫は,キスジ,ハモグリバエ(葉に地図のようなすじをつける)などです。堆肥を入れると保温性が高まるため,害虫の幼虫などが土の中で越冬できるので,コガネムシなどの幼虫など害虫は多いそうです。そのため,殺虫剤は粒剤で使用しているとのことでした。
 堆肥の施用による連作障害の発生はないそうです。サンファームハラのような軟弱野菜の栽培は,作物が次々と葉を形成・展開している栄養成長途中で出荷するため,連作障害になりにくいそうです。
 作物の根張りについては,堆肥を入れることで土壌が団粒化するため,根の伸びがよいそうです。
 収量については,堆肥を入れると,株張りが少なく,作物が大きくなるため,回転率が良くなるそうです。
 今のところ,サンファームハラでは土壌分析はしていません。栽培していて,なんらかの害がでてきたら,土壌診断するかもしれない,とのことでした。
堆肥について感じている問題点としては,2点あげられ,ひとつは害虫,もうひとつは夏場の乾燥害でした。
堆肥を使ったことで「野菜の品質や味または消費者の反応は?」とうかがったところ,品質や味などは消費者には受けが良いようそうだが,堆肥を入れたから品質が良くなったとか,味が良くなったということについて,はっきりしたことは分からないとのことでした。日持ちについても,消費者の話によると,日持ちは良いそうです。

5 畜産との連携するため,誰がどこにどのように働きかけたらよいでしょうか?

 持続的な農業生産方式の重要性など,資源循環型農業の必要性が言われているなか,耕種と畜産の連携をするために,どのようにやっていくべきかうかがってみました。「自分たちは,後継者グループで一緒になったときに,自分たちで働きかけてやってきた。今でもその関係は続いています。むりやりに行政的に連携をしても,うまくはいかないだろう」と言われました。幸農会のように,必要性からうまれた農家どうしの自然発生的グループで,自分たちがおかれている問題点を解決するために,家畜ふん尿・堆肥を利用して野菜を栽培しようとしたため,うまくいったのではないかと考えられています。一方通行ではだめで,お互いに必要性を感じたときというのが,うまくいくためのポイントかもしれません。
 さらに,お互いにメリット(畜産は家畜糞を処理できる,耕種は肥料・土壌改良材として堆肥を利用できる)もあるし,デメリット(投資や労働力などの負担)もある,ということを十分納得した上で取り組んできたそうです。

6 今後,堆肥利用を促進するために何が必要でしょうか?

 耕種農家に対して,堆肥についての情報はほとんど入ってこないそうです。原さんは,農家や堆肥センターなどの売り込みの努力が足りないのではないかと感じられています。今のところ,口コミでしか堆肥の情報が入ってこないと言われていました。
 そこで,畜産農家は少しでも堆肥を使ってもらうために,地域の耕種農家などに使ってもらうように宣伝していくことが必要になるでしょう。
 原さんは,「本当に売り込もうと考えるのなら,堆肥を利用したいと思っている生産組合などに,1年はただで使ってくれといって,堆肥を置いていくぐらいのことをしなければならない。」と言われています。
 原さんは,まだまだ,「使う側(耕種)と出す側(畜産)の認識が違う。」と考えられています。だから,堆肥の魅力を教えるところや人が必要だと言われます。「自分たちは,幸農会として,農業祭で堆肥の無料配布をしている。堆肥は無料なのだが,袋を一袋100円で買ってもらって,自由に袋詰めしてもらっている。すぐに堆肥はなくなるよ。」と,畜産と耕種が連携して一般の人に対しての堆肥の普及にも努力されています。

7 岡山県良質堆きゅう肥共励会に参加して

 原さんには,平成13年度岡山県良質堆きゅう肥共励会の審査員として,参加していただいたので,共励会についての感想を聞いてみたところ,共励会全体については,「良い取り組みである。」と感じられていました。また,「共励会の意義はとてもあるので,一般の耕種農家へ知らせるなど,積極的に共励会や堆肥の売り込みするなど,やったあとのケアが必要だろう。」と耕種側に対する,畜産の取り組み姿勢を見せた方がよいことを言われました。

 最後に,はじめて,サンファームハラへ行き,長時間にわたって,原さんから,堆肥についての考え方などを聞かせていただきました。長年の幸農会土づくり研究会として,堆肥の利用について,研究をされており,耕種としての意見・考え方をうかがうことができました。今回,原さんにうかがってきたことが,畜産関係の堆肥の流通に関して少しでも寄与できればと考えています。
 近い将来,サンファームハラは農場面積を3ゥ(うちハウス面積は2.5ゥ)にする計画を持っておられます。そのときには,さらに堆肥が必要になるので,堆肥舎を増設して対応されるようです。耕種と畜産の連携をさらに深めながら,さらなる発展をされることでしょう。