ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り2001年11・12月号 > 堆肥利用の耕種農家を訪ねて(2)

〔シリーズ〕堆肥利用の耕種農家を訪ねて(2)

邑久郡邑久町 金居正彦さん
堆肥はマルチの役目

社団法人岡山県畜産会 大村 昌治郎

 ときおり,無性にブドウが食べたくなるときがありませんか?それとも果汁が発酵したワインの方がいいですか?ブドウを生で食べるなら,ピオーネ。ピオーネといえば,岡山ですよね。岡山県が日本一の出荷量を誇るピオーネは,巨峰の改良品種のなかで最高品質といわれています。大粒で,果肉はしまり甘みが強く,種がないのが特徴です。「堆肥利用の耕種農家を訪ねて」の2回目は,前回の軟弱野菜栽培農家に続いて,今回は果樹農家,それもブドウ(ピオーネ)栽培農家を取り上げてみました。

写真1 金居正彦さん

1 栽培作目と面積

 今回お話をうかがったのは,金居正彦さん。金居さんは邑久郡邑久町においてピオーネをハウス栽培されています。ピオーネの栽培に堆肥を利用されていますので,金居さんがどのように堆肥を利用されているか,農場でお話をうかがってきました。ブドウの他にも,金居さんの農場では,ミカン,ナシを栽培されています。
 現在,金居さんは岡山県農企業者クラブの副会長を務められ,平成12年度および13年度の岡山県良質堆きゅう肥共励会の審査員として参加していただきました。
 金居さんは昭和58年からブドウの栽培を始められました。その当時はネオマスカットやベリーAなどの品種を栽培されていました。その後,ピオーネに移行していきました。そのときからハウス栽培をされました。栽培面積は40aですが,良質のピオーネをつくるのに,手が掛かるのであまり面積を多くすることができないそうです。余談ですが,ピオーネよりもマスカット・アレキサンドリアの方がさらに手が掛かり,たいへんなんだそうです。
 金居さんは,7月から8月中旬にかけてピオーネを出荷しています。ハウス栽培なので,露地栽培に比べ早く出荷できるそうです。7月の夜と昼の温度差があった方が色づきがよくなり,味が良くなるそうです。ピオーネの収穫量は10aあたり1.8トンぐらいにまでなります。
 金居さんの農場ではブドウ以外に,ミカン(60a),ナシ(10a)を栽培されています。ミカンやナシは親の代から栽培されているそうで,引き続いて金居さんも栽培されています。ミカンは10月10日ぐらいから出荷をはじめ,12月いっぱいで収穫を終了します。それから収穫したミカンを保管しておき,翌年3月ぐらいまで徐々に出荷していきます。ミカンにも,できれば堆肥を入れたいのだそうですが,手が足らないので,今のところミカンには堆肥を施肥していないそうです。

写真2 ハウス内のブドウ棚

2 堆肥の施肥状況

 金居さんの農場では,ブドウに堆肥を入れています。その堆肥は同じ町内の酪農家から購入しています。購入価格は2トンダンプ1杯が3,000円で,直接,自分でダンプに積んで持ち帰っています。堆肥は秋に施肥しますが,年間に10杯20トンを持ち帰り,ブドウ作付面積40aに使っています。10aあたりでは5tほど施肥する計算になります。堆肥の施肥方法は,木の周り半径2mぐらいに堆肥をマルチのように表層散布します。
 金居さんの農場は,傾斜地にあるため,施肥作業は大変そうですが,それでも堆肥は欠かせないそうです。近所のブドウ農家も堆肥は入れていると言われていました。
 堆肥を置きっぱなしにしておくと,カナブンの幼虫が住み着きます。そうすると,カナブンの幼虫が,ハウスに堆肥を施肥した後に,成虫になってしまい,ハウスの中で傍若無人に飛び回ります。そのカナブンがブドウの房にはまり込んで,商品価値がなくなるので,カナブンには要注意だそうです。

写真3 金居さんが農場で使っている堆肥

3 堆肥の施用効果について

 堆肥を施用することで,土壌を改良できると,金居さんは言われます。土壌の物理性の改良が目的で,堆肥を施用するそうです。土壌が改良されるため,保温性,保湿性,排水性,保水性が良くなります。ブドウには,水が必要で,生育のためには保水性がよくないといけないし,木が病気にならないように排水性もよくないとブドウの木は元気に育たない。堆肥を施用すると木が元気になる。木が元気になるから,ハウスで加温した状況でも,病気や連作障害にならない力があるそうです。さらに,堆肥はマルチの役目にもなるそうで,特に冬場における保温性があると言われています。このようにマルチの役目をするため,ブドウの根が張って,根が上の方にくるので管理しやすいと言われていました。ただ,人によっては,ブドウの根は上の方にこない方がよいとも言われているらしいです。
 金居さんは元肥としては,油粕等を使います。堆肥には,肥料としては期待していないそうです。肥料成分はありますが,腐植としての利用を第一に考えているとのことでした。
 堆肥の連年施用による連作障害は今までには起きたことがないそうです。堆肥を施用しても,土に食われてしまうそうです。だから毎年,堆肥を施用することができます。
 また,堆肥の施用効果として,収量が増えたとか,味が良くなったということは,特に感じないそうです。

4 最 後 に

 金居さんは,良い堆肥であれば,もっとたくさん入れてもよいと考えられています。これからは,いかに良い堆肥を,必要なときに手に入れるかが課題だそうです。必要なときには,みんなが必要なので,牧場に堆肥がないことが多いそうです。
 畜産からの堆肥の情報はないそうで,自分で見つけるしかないと金居さんは言われます。そういうことから,さらに畜産側が堆肥を流通したいと思っていたら,もっと畜産から耕種に向けて,積極的に堆肥の情報を流す必要があると強く感じました。