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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

真庭家畜診療所蒜山支所
野矢 秀馬

 「農場から食卓まで」という言葉がよく唱えられ,食品の生産から流通,消費に至るまでの衛生対策に焦点が当てられている。
 肉や牛乳を生産する畜産業において生産現場での衛生対策は畜産関係者にとって大変重要なことは言うまでもない。
おりしも畜産界を揺るがす病原性大腸菌O−157,口蹄疫,乳製品による集団食中毒,BSE(牛海綿状脳症)等の大きな問題が,たてつづいておきている。そしてマスコミの報道により消費者の畜産業を見る目もかなり厳しくなっているのも事実である。また,風評被害も大きいものがある。
 日本人はあまりにも清潔になりすぎて,免疫力が低下しているともいわれているが,ヒトの口に入る食品や加工食品の素を生産している現場で,衛生担当をしている我々産業動物臨床獣医師は単に病気の治療ということのみならず,衛生的な食品の生産という観点からも診療業務ということを考えなくてはならないものである。
 臨床獣医師の業務は診療業務が主体であるが,予防できる病気は少しでも減少させ,生産性の向上に努めることはいうまでもない。ただ単に「治してなんぼ。治ってなんぼ」の考えは過去のものになっている。病気を減少させることは良質な生産物を生産する方法の一つであり,畜産農家の増収につながり,経営の安定になるものである。
 以前私は豚の診療業務に携わったことがある。豚は群管理である。群管理では伝染性の病気は群全体のダメージにつながり,経営にも大きく影響するものである。よって豚の衛生管理は牛と比較してかなりきびしいものがある。また牛においても大型経営のものは群管理となっている。生理的にも管理的にも牛と豚は異なるが,牛においても豚のような衛生対策が必要となってくるものである。豚の衛生管理に見習うべきものが多いように思う。一般的にみると,家畜の体形が大きくなるほど衛生対策がルーズになっているように感じる。このように感じるのは私だけであろうか。
 家畜はヒトと違い,一般に畜舎や放牧場から外に出ることはまれで,他の群との接触は少なく,ヒトでいわれているような「清潔すぎることは病気だ」ということは当てはまらないと思われる。
 我々臨床獣医師は業務のために農家間を移動するが,獣医師が伝染性の病気を持ち歩かないように注意しなくてはならない。すなわち「持ち込まず。持ち出さず」である。
 最近,消費者と生産者は互いに顔が見える関係を求め,消費者は生産物の安全性を強く求めている。
 家畜の安楽性を考え,病気予防,生産性向上,経営安定に寄与し,よりよい生産物を生産し消費者に提供することは,我々獣医師にも課せられた義務でもある。
 いろいろな方法が示されているが,合理的で実のある方法を見つけなければならない。
 意識改革が確かに必要な時代となった今日このごろ,特に思うところである。