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搾乳牛に発生した Salmonella anatum 感染症

津山家畜保健衛生所 小阪 和正

 サルモネラ菌は,不顕性感染から致死性の急性劇症菌血症や内毒素血症まで,牛の広範囲な疾患を引き起こします。牛のサルモネラ症は主に子牛に発生していましたが,最近では成牛,特に搾乳牛における発生が増加しています。牛のサルモネラ症を起こす細菌の血清型は主に Salmonella typhymurium(ST)と S. dublin(SD)の2種類です。しかし,その他の血清型によるサルモネラ症の発生報告が増えています。また健康な牛からも多様な血清型のサルモネラが分離されています。
 津山家畜保健衛生所管内において平成12年1月〜4月にかけ,酪農家3戸に成牛型サルモネラ症が発生しました。このうち2件は ST が原因菌でしたが,残りの1件は S. anatum(SA)が原因菌でした。SA の発生状況は次のとおりです。
 ○ S. anatum 感染症の発生例
 発生農家は92頭の乳用牛を飼養しており,その内訳は搾乳牛64頭,乾乳牛17頭及び育成及び子牛11頭でした。
 発症牛の症状は下痢(水様性及び血便)・発熱・乳量の減少であり,一部の牛には呼吸器症状がありました。発症牛は搾乳牛だけに限定しており,発症頭数は47頭でした。
 病性鑑定の結果,発症牛の糞便と環境材料から SA が分離さました。またウイルス検査を実施したすべての牛から牛 RS ウイルスと,一部の牛から牛コロナウイルスの感染が確認されました。これらの結果から下痢の原因は SA であると考えられ,発症の要因としては牛コロナウイルスと牛 RS ウイルス混合感染および搾乳ストレスがあったと考えられます。
 発症牛は抗生物質の投与により症状は無くなりました。しかし不顕性感染牛が長期間存在しました。
 疫学調査を実施しましたが SA の侵入経路は判明しませんでした。
 我が国における牛の SA 感染症の発生報告は過去にありませんでした。しかし,牛から SA が分離された報告は,北海道において健康な乳牛及び肉用牛からそれぞれ1例ずつ,2例の報告があります。一方,人において SA は毎年のように食中毒の原因菌として分離されています。このため安全な畜産物を生産するために注意すべき感染症の一つである思われます。
 最後に,SA を含めたサルモネラ症は早期に発見し,対策をとる必要があります。このため異常牛を発見したら最寄りの家畜保健衛生所へご相談下さい。