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強害雑草ワルナスビの対策について

岡山県総合畜産センター 草地飼料科 串田 晴彦

1 はじめに

 10年程前から,飼料作物の栽培において外来雑草が話題になってきました。最初に知られるようになったのは,トウモロコシ栽培におけるイチビの被害です。トウモロコシの中にハート形の葉をした草があり,コーンハーベスターで収穫するときに独特の臭いがしてきます。
 イチビ以外にも牛乳の臭気(風味)に悪影響を及ぼすカラクサナズナ,家畜に有毒なアルカロイド(毒物)を含むヨウシュチョウセンアサガオ(別名:シロバナチョウセンアサガオ)などがよく知られています。これらは,以前から帰化植物として確認されており,その増加の原因は,輸入飼料に混入していた種子が家畜に給与され,その結果,家畜の体内を通過し,排出された種子が堆肥の発酵過程で十分加熱されず,発芽能力を有したままほ場に還元されたことによるものと言われています。ちなみにワルナスビの種子は60℃以上の発酵温度が確保できれば発芽能力は失われると言われています。このため,未熟のふん尿が多量に施肥されるケースの多い,飼料作物の栽培でとりわけ被害が表面化してきたと考えられます。

2 ワルナスビの特徴

 ワルナスビは,写真1に示すように葉や茎に棘のある植物で草丈は1mくらいまでになります。また,多年生で根が縦横に伸びて群落を形成します。地下茎と種子で増殖し,地下茎はロータリー作業などで細断されても発芽能力を持っています(写真2)。そのため,飼料畑や放牧地などに侵入した場合,放棄される例も少なくないと言われています。

写真1 茎や葉のトゲ
写真2 細断根からの再生

3 実証試験

 総合畜産センターでは,県東部(勝英管内)で生育が確認され,代表的な強害雑草として知られているワルナスビの防除に関する実証試験を日本原高校のほ場で行いました。
 まず,除草剤による防除として市販されている薬剤(これまでに試験例の少ないものや新しいもの)などによる土壌処理及び茎葉処理について試験しました。

1)土壌処理では,薬剤を散布しなかった対照区と4種類の薬剤(表1)処理をした区を比較しました。プラウとロータリーによる耕起・砕土した後に,背のう型の散布機で2反復の処理を行いましたが,表2のとおり薬剤の散布効果はほとんど認められませんでした。

2)茎葉処理については,伸長期と開花期で比較しました。茎葉処理は,表3の薬剤を6月下旬の伸長期に,表4の薬剤を8月上旬の開花期にそれぞれ2〜3反復して小型のスプレーで散布しました。

  試験の結果は表5のとおり,伸長期処理ではMDBA400区で処理前後の本数の割合が最も低くなりました。しかし,処理後8日目には新しい個体の発生が確認されました。
  次に開花処理では表6のとおりMDBA液剤とグルホシネート液剤により,処理後35日で茎葉全体が枯死しました。しかし,処理後58日目で枯死した株からの再生が認められました。また,翌春の発生は全区で見られましたが,前年に比べた発生率では,MDBA400区で,他の区に比べ高い抑制効果がありました。

3)土壌処理の試験では,対照区(無処理区)は薬剤散布をしなかったため雑草が繁茂し,結果としてワルナスビの発生が抑制されたこと,さらに日光の遮断により生育が阻害されるとした研究報告もみられることから,長大作物による遮光がワルナスビの生育に及ぼす影響について調査しました。
  草種は,ソルガムとトウモロコシを用い,県内で流通している種子(ソルガムはスーダン型のウルトラソルゴー,トウモロコシはスノーデント127S)を用いました。播種方法は散播(ソルガム)と条播(トウモロコシ)にしました。また,ソルガム区にはトウモロコシを混播(トウモロコシ条播後にソルガム散播)して両草種の比較も行いました。なお,ほ場へのワルナスビの侵入は写真3に示すような状況でした。

写真3 ワルナスビの侵入状況

  日射しの強さの度合(光量)は,各調査区内の最も草丈の高いワルナスビとソルガム及びトウモロコシの頂部で測定し比較しました。これらの測定は,試験期間中の伸長期(播種後67,89日),刈取適期(播種後112日)に行い,その結果は,表7のとおりで,試験区(ソルガム区)の方がワルナスビに届く光が弱い結果となりました。

  ワルナスビの遮光による発育抑制について,今回の実証試験では,ワルナスビの本数,乾物重量ともに試験区(ソルガム区)の方が対照区(トウモロコシ区)より少なく,草丈の高いソルガムの方が効果があると認められました(表8)。

  また,遮光の効果判定として混播したトウモロコシは,表9に示すようにほとんど収量はありませんでしたが,ソルガムはほぼ一般的な収量でした。一方,同様にワルナスビの侵入したほ場に単播したトウモロコシは湿害を加味してもワルナスビの影響を受けたと考えられました。

4 おわりに

 ワルナスビは,強害雑草として全国的に防除方法が検討されていますが,効果的な方法は報告されていません。そこで,飼料畑等で飼料生産を続けながら,被害を抑える方法を日本原高校のご協力を得て検討してきました。この試験では,薬剤による画期的な効果を見つけることはできませんでしたが,ソルガムによる日光の遮断効果により,ワルナスビの生育が抑制され,飼料作付の継続が可能であることが確認できました。
 草地への侵入については,他の研究成果に期待することとなりますが,根により拡散し群落を形成するなど植生を十分理解して早期の対応が最も重要であると考えます。