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「食卓と土壌をつなぐ有機リサイクル」シンポジウムを終えて

岡山県総合畜産センター 飼料環境部長 谷田 重遠

 1月29日,岡山市のテクノサポートで家畜ふん尿と食品製造業及び一般家庭から排出される有機物の堆肥化をすすめるため開催しました。出席者は,県及び市町村の廃棄物担当者と畜産関係者をはじめ約150人で満席の状況でした。
 飼養規模の拡大に伴って家畜のふん尿の処理利用は,畜産農家だけでは対応できない状況がみられるようになっています。一方,昨年「食品リサイクル法」が制定され,食品加工業,食品流通業においても再利用と減量化が当面の課題となってきました。市町村においても,ダイオキシンの関連から焼却処理の改善が求められるなど,有機廃棄物の処理・利用に関する環境は大きく転換していることからこのシンポジウムを開催しました。

1.地域,企業の取り組み事例

 基調講演では,家畜ふんと生ゴミの堆肥製造で全国的に有名な山形県長井市の「レインボープラン」について,市役所企画調整課の寒河江主査に経過と今後の方向などお話し願いました。このプロジェクトは,市民参加型のまちづくりを進めるなかで,農業を地域の共同財産と位置づけ,地域の食糧自給を高めるとともに地域環境の保全を農業と結びつける方策としてスタートしています。ただ,農家,農協だけでなく商業者,医師,女性を中心とした消費者などで300回を越える討論を経て,現在の方式が完成しています。
 また,同様に岡山県船穂町の紹介でも,平成8年から町内600世帯が自主的に生ゴミの堆肥化に参加するシステムが出来上っています。各家庭では,ビニールなどを除いて堆肥化可能な生ゴミを分別して専用容器にためています。シルバー人材の人たちが,容器を週1回収集して堆肥製造を行っています。しかし,この収集容器の購入費は,参加者の半額負担で氏名が記載されていて異物混入があった場合,警告の用紙が添付されるそうです。このシステムの推進に7船穂町農業公社の果たす役割の大きさと参加町民の皆さんの高い環境意識に会場全体が強い印象を受けました。
 流通企業の代表として話題提供を願ったイオンモール梶iイオン倉敷SC)では,惣菜部門の残さなどを堆肥化し,センター内の樹木への施肥や顧客へ無料配布されてます。堆肥製造に係るコストは,100%会社の負担で実施されています。
 家庭から出るゴミは,自治体が収集処分するものと多くの住民は思いこんで何ら疑問を持っていません。また,企業は利益追求が至上目的としての活動が当然と考えられています。しかし,一律の合理性や収益性だけでなくそれぞれの地域,企業の意識や価値観によって様々な取り組みがはじまっています。

2.畜産,農業の方向

 家畜ふん尿は,以前の小規模頭数ではそれぞれの堆肥舎で処理し,大半が自作農地で利用されていました。その後,補助事業による共同堆肥舎が建設され,現在は市町村単位で大きな家畜ふん尿処理施設の整備が進んでいます。
 最初に述べましたように,畜産経営の現状をみると,地域の畜産農家のみでふん尿を処理し,堆肥製造そして円滑な販売を行って行くことは,大変な努力が必要と思われます。話題提供で講演していただいた,邑久郷堆肥生産組合の千葉さんのお話しでも,畜ふん堆肥の積極的な利用にむけた地域の支援が上げられていました。
 一方,「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」が平成11年10月に施行されて,化学肥料や農薬の使用を抑制した野菜などの農産物が求められています。全国環境保全型農業推進協力員の吉岡さんから,旧高松農協の有機無農薬野菜の生産事例を紹介していただきました。畜ふんを利用することでトマトの甘みが増すなど野菜生産のメリットと食に対する安全性が話題になっているなかで,高松農協で取り組んだ土づくりと農産物生産の基本的な考え方を紹介いただきました。

話題提供(邑久郷堆肥生産組合)
パネルディスカッション

3.総 括

 総合畜産センターでは,「地域社会における畜産経営」を大きな研究テーマとして平成8年から豆腐粕や菌床粕(シメジやエノキ栽培粕)など食品廃棄物の飼料化や生ゴミと牛ふんの堆肥化などに取り組んできました。今回,(社)岡山県畜産会と共催でこれら研究活動の一環として関係者のご協力を得てこのようなシンポジウムを開催しました。
 市町村の廃棄物担当者の方々にご協力願ったアンケート調査では,一般廃棄物の処理経費(市町村予算)は,1世帯当たり年間5万円以上になっています。また,これら処理方法について将来不安を持たれている市町村も少なくない状況にあります。センターの研究成果として説明しました生ゴミ収集システムもこれらの対応策としての1つの提案と考えています。また,畜ふん堆肥流通については,畜産経営のより真摯な取り組みを求めるとともに,耕種農家及び農協等関係者の積極的な対応がポイントといえます。
 今回のテーマを推進するには,畜産農家や耕種農家が地域における農業の価値,市町村をはじめとする住民が地域環境を守るなどの意識を強く持つことがスタートと思われました。具体的な取り組みは,自治体や市民団体,消費者,農業者そして農業団体など何れが中心になろうとも地域のコンセンサスが得られる方式をねばり強くつくりあげることと考えます。総合畜産センターとしましては,前述した研究スタンスで支援することとしていますので,それぞれの地域で積極的な検討を期待します。