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〔特集〕

岡山県飼料増産推進計画」の概要について

岡山県農林水産部畜産課

1.はじめに

 平成12年に公表された「食料・農業・農村基本計画」では,国内農業生産を増大し,食料自給率の向上を基本とした食料の安定供給を図ることが重要な課題として位置づけられています。
 特に,食料自給率の向上を図る上で,畜産分野では,輸入に依存している飼料の自給など,粗飼料の国内供給を増大させることが最大の課題となっています。
 自給飼料の生産は,安全な畜産物の供給,生産コストの低減,家畜排せつ物の適切な処理・利用など,土地基盤に立脚した経営を確立する上で極めて有効な手段であります。
 また,こうした生産基盤は,口蹄疫や牛海綿状脳症等の海外悪性伝染病の侵入防止,自然環境の保全や良好な景観形成,耕作放棄地の有効利用など,多面的な機能も有しています。
 県といたしましては,この自給飼料の増産を具体的に推進するため,このたび,「岡山県酪農・肉用牛近代化計画」等の諸施策と連携を図りながら,新たに「岡山県飼料増産推進計画」を策定し,今後より一層積極的に自給飼料関連施策等を推進することといたしました。
 そこで今回は,この「岡山県飼料増産推進計画」の概要について,皆さんにご紹介したいと思います。

2.計画の概要

 (1) 基本的な考え方

 食料自給率及び耕地利用率の向上,農業における生態系,農村の景観維持を図る上で,自給飼料の生産拡大は,極めて重要であります。特に,本県の耕地利用率は,86%と全国平均の94%を大きく下回っており,未利用耕地をいかに有効利用するかが緊急の課題となっています。
 このため,農地や飼料作機械等のハード面や飼料作の組織化・外部化等のソフト面の整備を通じた自給飼料基盤の強化,本県に適した品種選定及び栽培技術の高度化,岡山県型放牧の推進等を図ることを基本方向として,地域の実情,経営形態に応じた自給飼料増産の効果的な推進を図ります。

 (2) 飼料増産目標

 

 (3) 飼料増産のための推進方策

  @ 自給飼料基盤の強化

   ・農地流動化,遊休農地の活用,作業受委託等により土地利用集積及び団地化を推進する。
   ・転作田や水田裏等の既耕作地における飼料作物の作付拡大する。
   ・土地利用の再編,耕作放棄地及び林地との一体的な整備等を推進し,中山間地域等における飼料基盤を拡大する。
   ・海外悪性伝染性疾病の侵入防止を図るため,稲わら等の未利用資源の活用を図る。
   ・耕種農家と連携し,飼料作のために借入等をした圃場への堆肥散布及び稲わら堆肥交換を推進し,地域資源循環により飼料基盤を拡大する。

  A 生産性及び品質の向上

 本県の気候・風土に適した奨励品種の選定,実証展示ほの設置等による優良品種の早期普及,草地の適正管理及び適宜更新による草地生産力の維持・向上等を推進することにより,単収向上等を通じた飼料作物の増産と生産コストの低減を図る。

  B 飼料生産の組織化・外部化

 地域の実情に応じた飼料作・施設機械の共同化,コントラクター組織の育成強化及び農業公社等の既存組織の活用を図り,省力的かつ効率的な飼料生産を推進する。

  C 岡山県型の放牧の推進及び公共牧場の活性化

 モデル的な放牧経営の育成等を通じ,里山・林野等の立地条件に即した岡山県型放牧の普及・定着を推進する。
 また,公共牧場については,公共牧場等で構成する「公共育成牧場活性化推進協議会」を中心に,広域利用・放牧利用の調整並びに機能強化や経営合理化を図る等活性化を推進する。

 (4) 飼料増産運動の展開

  @ 岡山県飼料増産推進協議会の設置

 農業団体,試験場,県等幅広い関係者からなる岡山県飼料増産推進協議会を設置し,自給飼料生産の有利性・重要性の啓発と関係者が一体となった飼料増産の取組を展開する。

  A 増産に向けた制度・施策の普及,浸透及び取組事例等情報の提供

 自給飼料共励会や研修会等を通じた意識啓発を推進するとともに,生産者,地域指導者等に対して自給飼料関連制度・施策の普及浸透を図る。また,飼料増産に係る取組事例の紹介や技術情報等の提供を行い,地区段階での取組へのサポート体制を強化する。

  B 関連施策における推進活動との連携

 水田農業経営確立対策」等関連施策の推進活動と連携することにより,飼料作物や稲発酵粗飼料の作付拡大を効果的に推進する。

3.終わりに

 自給飼料増産の必要性については,はじめにも述べましたように我が国の食料自給率向上のために不可欠な位置を占めているだけではなく,平成11年に取りまとめられました「水田を中心とした土地利用型農業活性化大綱」において,飼料作物は麦・大豆等とともに転作を超えた本作として位置づけられ,その本格的な生産が農業の持続的発展に資するとされたこと,耕作放棄地等の地域資源を飼料生産に有効に活用すれば農業・農村の振興と多面的機能の発揮に役立つこと,一昨年の口蹄疫や昨年のBSEの発生により,その原因が輸入飼料と疑われていることから自給飼料生産の必要性が再認識されたこと等多岐にわたり大きく,本県の飼料増産推進計画では,平成22年度の目標達成年度には,作付面積を3割程度拡大する目標値を設定しました。
 この目標を達成するには,相当な条件整備と努力が求められることになりますが,県といたしましては国庫事業や指定助成対象事業等の各種施策を積極的に取り入れながら,多くの課題を克服し飼料増産につなげて参りたいと思いますので皆様のご理解とご協力を今後ともよろしくお願いします。

稲発酵粗飼料現地研修会(H13.10.29)