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〔畜産会ニュース〕

牛海綿状脳症(BSE)シンポジウムを開催して

社団法人 岡山県畜産会

 平成13年9月に牛海綿状脳症(BSE)が我が国で発生して以来,本年5月までに4頭の発生が報告されております。
 初発から3頭目の発生までは,畜産関係団体,消費者団体等から農林水産省,厚生労働省等国の対応が批判されるとともに,新聞やテレビ等の報道等もあり,社会的に大きな不安を与え,牛肉の需要が激減し,生産から消費にわたり大きな影響をもたらしました。
 国においては,緊急的なBSE対策を実施して,BSE検査体制の整備や生産者,流通関係業者等の救済措置を行う一方,トレーサビリティへの緊急対応,消費者に対する国産牛肉の安全性と消費拡大活動等により,BSEに対する認識も高まり消費も次第に回復してきているものの,今後とも牛肉に対する消費者の安心感を高めていくことが重要であると考えております。
 本県においても県産牛肉の安全性のアピールを目的に消費拡大フェアーが各地で開催され多大の効果をあげておりますが,一層,消費者,生産者等にBSEに対する正しい理解を深めるとともに肉用牛生産振興に資するため「牛海綿状脳症(BSE)シンポジウム」を開催いたしました。(開催内容は表のとおり)

 このシンポジウムには消費者,生産者,畜産関係者,流通,食肉業界等870人が参加して盛大に開催することができました。
 シンポジウムの概要については,先ず基調講演では専門家の立場で,消費者,生産者等にBSEに対する正しい理解を深めるために,世界各国におけるBSEの発生,対応状況等について説明し,検査体制の整った我が国においては,BSEが人へ伝達する確立は極めて低く,限りなく0に近いことを強調されました。
 講師が応用免疫学の専門家ということもあり,用語や表現等,難しく理解できなかったところもあったと察せられたが熱心に聴講しており関心の高さが伺われました。
 講演終了後,昼食休憩では,JA阿新の「牛すき弁当」を配ったが,BSEに対する認識を得たためかどの顔にも美味しさがにじんでいるような気がしました。
 午後からのパネルディスカッションでは,消費者代表から,@英国をはじめヨーロッパで発生している時点で我が国への侵入の予測ができなかったか。ABSEは人にも伝達される危険性があること等についても知らせる必要があった。B農水省の対応のまずさが気になる,これでは牛肉の安全性をいくら強調しても買い控えするのは当然である。Cこれまでの生産者主体の施策を消費者主体の施策へ変更してほしい等の発言がありました。

パネルディスカッションの状況

 これに対して,小野寺教授から,BSEのプリオンは牛には簡単に伝達するが,人へは種の壁があり伝達する確率は100万分の1程度であり,更に英国と日本の発生頭数の差,食文化の違い等から推計すると日本人がBSEに罹る確率は3,000億分の1と極めて低いことが強調されました。
 また,行政側からは,検査体制について,飼料生産工場における原料(肉骨粉),生産農家における給与飼料の立入検査を実施するとともに,食肉処理場におけるBSEの全頭検査,特定危険部位の除去焼却の徹底等世界一厳しい検査体制を敷いて消費者へ安全な食肉を提供すると発言されました。
 次に流通について,行政側から全ての牛に個体識別番号を付け(耳標),この番号で牛各個体の全ての経歴が明確に把握することができるシステム構築に取りかかっていること,将来的には消費者の手に渡るまでがわかるシステムとしていきたいとの紹介がありました。

パネルディスカッションの状況

 続いて,生産者団体からは,行政側から紹介されたトレーサビリティに対する取組について,現在も産直事業等に取組んでおり生産者の顔の見える販売に努めているが,個体識別システムを関係機関との協力のもと,有効に活用し,一層の明確化に努力し信頼の構築をしたいとの発言があり,強い意気込みを感じました。
 生産者の取組では,和牛繁殖経営者の発言は,BSE,牛肉の偽装事件は生産者の死活問題となっており,自給飼料による飼育や優良子牛生産への努力をする一方,消費者等の体験学習希望の受け入れやEメール等で生産現場に対する理解を深めるためにがんばっている状況が訴えられました。
 肥育牛生産者は良い環境で子牛を育て,薬剤を全く使わない飼料で肥育するなど,「安全,安心,信頼」をモットーにするとともに,消費者との交流を大切にしている様子がうかがわれました。
 酪農経営者からは,BSEにはくやしい思いをしているが,消費者と対話しながら経営ができるアイスクリームの生産販売を行っていること,牧場を開放し搾乳体験や,アイスクリームづくり体験等を通じて消費者との交流を深めていること,また,飼い直し肥育していた高齢牛が出荷できずに滞留して困っていることなど,生産者の切実な訴えと消費復活への必至の取組がうかがわれました。
 最後に会場からの質問状等に対する回答も行われました。
 締めくくりとして,パネラー各人からBSEが人に感染することはほとんど無に近く,また,BSEが発生したことを冷静にとらえて,いたずらに混乱しないよう対応したい等の提言がなされ,シンポジウムを閉会しました。
 今回のシンポジウムを振り返ってみて感じたことは,生産者,消費者にとどまらず,全ての人びとが大きな関心を持って参加して下さったこと,シンポジウムを通してBSEに対する認識を深め,安心して牛肉が食べられる「安堵感」をもたれたことに加え,消費者の方々が生産者や食肉販売者に対する信頼感をもつことができたものと思われたことです。
 このようなイベントは,参加した方々にとどまらず,口コミで輪を広げることができるものと思いますが,今後も,機会をとらえて実施していくことも必要であろうと感じました。

熱心に聴講する参加者