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〔普及現場からの報告〕

牛肉の消費低迷下における食肉に関するアンケート調査

倉敷農業改良普及センター

 この度,JAきびじ肉用牛部会では消費者への食肉アンケートを実施した。
 JAきびじ肉用牛部会は総社市内の肉用牛農家7戸(うち肥育経営3戸)・388頭で構成されている。今回のアンケートは牛肉の価格低迷に対する方策の検討を目的として,市内の小中学校17校(うち小学校13校)約1,000人を対象に行った。
 アンケートの調査様式は倉敷地方振興局農林水産事業部畜産係が作成。アンケートの調査は総社市経済部農林課が,市内小中学校を通じて児童・保護者を対象に実施。その調査結果の集計及び分析は倉敷農業改良普及センターが行った。

 その質問内容及び結果は次のとおりである。

1 調査内容等

 (1) 調査時期:平成14年3月
 (2) 調査地域:総社市
 (3) 調査対象者:市内小・中学校の各々1学年を対象に無記名で実施
   小学校(13校)中学校(4校)
 (4) 回答者数:1,031名(表1)
(中学生287人・保護者744人)

 表1 回答者の概要

2 調査結果の概要

 (1) 牛肉の消費状況について
   昨年秋以降の牛肉の消費について,牛肉を食べた頻度は「月2回程度」(36%)が多く,次いで「毎週」(29%),「月に1回」(24%)が続き,全く食べていないと回答した人も11%あった。
 (2) BSE検査(検査済み牛肉の流通)について
   全体では,「知っているがまだ不安」との回答が51%あり,「知っており,安全と考えている」と回答した人が32%ある一方で,「知らない」(6%),「信用できない」が11%あった。
   これを回答者別に見ると,生徒では「知っており,安全と考えている」が最も多かったが(47%),保護者では26%と低く,「知っているがまだ不安」が60%にも達していた。(表2・表3)
 (3) 牛肉を購入する時に重視することについて(2つまでの複数回答)
  「BSE検査済み表示」(39%)が最も多く,次いで「産地表示」(28%),「価格」(25%)で「生産者表示のあるもの」(8%)とであった。生徒,保護者別も同じ傾向であった。
 (4) 産地表示等の信頼について
  「信用していたが,最近不安になった」が圧倒的に多く(72%),「信用している」(15%)「もともと信用していない」(13%)であった。回答者別では,生徒で「信用している」が33%あったが,保護者では9%にすぎず,「信用していたが,最近不安になった」が80%にも及んだ。(表4・5)
 (5) 安心して購入する牛肉について(購入先について)
  「大手スーパーの牛肉」が38%で多かった。次いで「地元の肉牛生産者の直売牛肉」(16%),「地元の肉屋」(11%)「地元農協の地元ブランド牛肉」(7%)の順であった。なお,選択肢にはなかったが「生協」が9%と多かった。その他(19%)の意見として,「安心していない」「外国産」「検査済み」「気にしていないのでどこでも」との意見が多かった。
 (6) 地元での肉用牛生産の状況について
   81%が「知らない」と回答。特に生産が行われていない都市部周辺の小中学校での割合が高い傾向にあった。
 (7) 牧場の見学について
   約2割程度の参加希望があった。

表2
表3
表4
表5

3 ま と め

  この度の結果を見ると,牛肉に対する信頼は大きく揺らいでおり,特に保護者では牛肉に対する不安を大きく抱いている。
  一方,保護者ほどではないものの,将来消費者になるであろう児童においても,同様の結果であることから,食農教育等を通じた牛肉の安全性のPRが行われることが重要である。
  さらに,今後の信頼回復のため,消費者,生産者及び行政が互いの立場でコミュニケーションを図っていくことも重要と思われた。
  また,地元で牛肉を生産している農業者を約8割の消費者が知らないということからも,牧場の見学等地元消費者との交流を行い,生産者のPRを行うことが必要である。