ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2002年9月号 > 特集 豚舎消毒の重要性と方法について

〔特集〕

豚舎消毒の重要性と方法について

岡山県総合畜産センター 環境家畜部 森 尚之

 養豚経営では,今日的な課題として生産性の向上とコストの低減が強く求められており,環境問題,及び衛生対策の充実は差し迫った重要なこととなっている。畜舎の床,壁面などには種々の腐生的な菌が存在している。また,豚が排泄する糞便中には多数の腸内細菌が存在しているばかりでなく,体表の垢の中にも体表微生物が存在している。これらの腐生菌および家畜由来微生物は畜舎の床面上や壁面上に付着している以外にも,塵埃に混じって,あるいは,細菌集落粒子として空気中に浮遊し,豚の体内に侵入して種々の感染症を発生する。したがって,畜舎内の微生物を少なくすることが必要であり,そのためには,畜舎構造,換気,糞尿処理及び消毒が重要である。

1)空舎時の消毒

 豚を飼育し出荷した後,畜舎は一定の空舎期間を設けてから消毒作業を行う。その手順としては,「畜舎外へ搬出できる器材を出す→敷料を搬出→床面に固着している排泄物,塵埃,土塊及び飼料片などを散水してぬらし,デッキブラシで洗い落とす→高圧洗浄クリ−ナ−,あるいはスチ−ムクリナ−で水洗→乾燥後消毒薬を散布,搬出した器材類も消毒→消毒済みの搬出物を運び入れる。」である。
 特に,豚を移動後の空豚房消毒には次の手順が必要である。@除糞は消毒薬の効果を十分に発揮するために糞をよく取り除くこと。A水洗は十分に行い残った糞を床面から剥がし流し去ること。B乾燥は消毒薬の希釈を防ぎ,十分な消毒効果を得るために実施すること。C消毒液散布は豚舎内全面に消毒薬を十分散布すること。水洗による洗浄効果は下表に示したとおりであり,畜舎床面における水洗前後の細菌数は1f当たり数百万個が数万個まで水洗により減少している。

2)飼育時の消毒

 豚の飼育時でも畜舎の消毒は定期的に実施すべきである。まず,糞尿の搬出後,床面を水洗する。ついで天井,壁及び床面に逆性・両性石鹸を用いて消毒液を噴霧する。また,自動噴霧装置を利用した舎内噴霧では,豚体消毒も兼ねて豚舎内環境の汚染度を継続的に低下させるのに効果がある。

3)感染症発病時の消毒

 豚群に感染症が発生した場合,病気の種類に応じて患畜は淘汰あるいは隔離する。同居畜には抗生物質投与か,ワクチン接種を行う。その後,敷料の焼却,消毒薬の散布を繰り返し,芽胞性疾患の場合は生石灰を散布する。

 おわりに,一般的な消毒薬の使用上の留意点について記載したので参考にしてください。

消毒薬の使用上の留意点について

 消毒薬の効果は,濃度,使用温度,処理時間,pHの他糞等の有機物の共存により影響を受ける。使用に際しては,次の事項を考慮する。
 (1) 消毒対象とする病原体の種類及び消毒対象物に応じて最適の消毒剤を選択する。
 (2) 消毒剤は,有機物により効果が低下するので,消毒する前に水洗により糞等のよごれを取り除いておく。
 (3) 使用濃度を守り,混用を避ける。2種類以上の消毒薬を使用するときは,別個に,間隔をあけるようにする。
 (4) 畜舎の消毒は広い区域を同時に行う。特にオールイン・オールアウト方式では,家畜の出荷後,速やかに除糞し,床,壁,天井,器具類等を水洗する。乾燥後消毒剤を噴霧あるいは散布して消毒し,十分乾燥させてから次の動物を入れるようにする。
 (5) 飼育場周囲や排水溝,汚水溜等の消毒にはサラシ粉等の塩素剤を使用することが多いが,サラシ粉が分解して大量の塩素が発生し,塩素中毒を起こすことのないよう注意する。