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〔地域情報〕

矢掛町における河川敷を利用した自給飼料増産の取り組み

井笠地方振興局農林水産事業部畜産係

はじめに

 自給飼料増産は従来から取り組まれてきた課題ですが,一昨年発生した口蹄疫の感染ルートとして輸入粗飼料の可能性が示唆されたことがきっかけとなり,粗飼料の自給率向上について関心が高まっています。
 今回は,矢掛町が取り組んでいる河川敷を利用した自給飼料増産対策を紹介します。

1.河川敷を利用した牧草栽培の概要

 県の南西部に位置する矢掛町を東西に横断し高梁川に流れ込む小田川は,農畜産業及び地域住民の生活と密接な関わりのある川です。
 この小田川では,平成3年度から,河川改修整備工事後の低水護岸敷において小麦が栽培されましたが,翌年度からは自給飼料増産のため牧草を栽培するという取り組みが行われています。

2.自給飼料生産について

 河川敷の牧草管理は矢掛町畜産公社が行っています。牧草の刈取りは,5月,8月及び10月の年3回行われ,収穫した牧草は矢掛町育成牧場の飼料として供給されています。栽培されている牧草はイタリアンとオーチャードの混播牧草で,生草で年間約5000s/10a(ロールベール乾草約5コ分)の収量があります。草地面積は平成3年度の取り組み開始時1.5haでしたが,平成13年度には9.1haにまで拡大されました。
 河川敷での牧草栽培で苦労する点は,圃場に石が多く,ロータリーモアーの刃の消耗率が高いことだそうです。(表及び写真1参照)

写真1 牧草の収穫風景

3.河川敷管理について

 通常,河川敷管理として3年に1度程度の割合で雑草・雑木の伐採が必要になりますが,牧草栽培により管理伐採が不要になります。
 また,護岸土壌保全に加えて,牧草栽培により美しい河川景観が創出され,地域の人々のレクリエーションの場として活用されています。
 今年は,9月28日に「小田川グリーンフェスティバル」が開催される予定であり,フェスティバルでは牧草ロール製作実演や熱気球体験試乗など広い河川敷を利用した多彩な企画が用意されています。

4.今後の展望

 この取り組みは,自給飼料増産及び河川敷管理の両面から,経済的に有効な継続的手法と言えます。さらに,地域住民からも,散歩,釣り,憩いの場等としてより一層小田川が親しみやい川となったと好評とのことです。こうした点から,矢掛町では河川敷の草地利用をさらに促進すべく,面積拡大を図りたいとのことです。
 また,こうして栽培された牧草を利用し,自然に恵まれた豊かな環境と整った育成施設を備えた矢掛町育成牧場を,足腰の強い良い牛を育てるためにぜひご利用ください。(写真2)

写真2 矢掛町育成牧場の放牧風景