ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2002年10月号 > 特集 ブロイラー農場より摘発された腫瘍性病変 |
食鳥肉の衛生確保を図るため,平成4年より公的な食鳥検査制度が開始され,それまで不明であった疾病が順次解明されてきた。
平成5〜13年にかけて,当管内の食鳥処理場より依頼があったブロイラーの病性鑑定について,特に腫瘍性病変を有するものを中心に病理組織学的に考察した。
延べ8年間で計46検体が搬入され,そのうち明確な腫瘍性病変を有するものは22件であった。
その内訳は原因別にウイルス性のものが7件,細菌性のものが2件,原因不明の各種腫瘍が13件であった(表1)。
また原因不明の各種腫瘍は,血管腫:5件,血管肉腫:1件,横紋筋肉腫:2件,神経節細胞腫:1件,その他4件であった(表2)。
1)マレック病
腫瘍性病変を有したもののうち,件数が一番多い疾病であり,肝臓において表面各所に大豆大の乳白色結節が認められた(図1)。
組織所見では,大小さまざまなリンパ細胞の腫瘍性増殖が認められた。
1)大腸菌症
肝臓は全体的に腫脹し,針頭大の暗赤色の壊死巣が散在していた(図2)。
組織像では巨細胞性肉芽腫像が認められた。
1)血管腫
肝臓において,腫瘍は明らかな小胞に別れ,海綿状を呈していた(図3)。
2)横紋筋肉腫
肝臓全体に大豆大の結節が多数認められた(図4)。
1.8年間にわたり,管内の食鳥処理場から依頼のあったブロイラーの病性鑑定を実施した。
2.搬入された検体46件のうち腫瘍性病変を有するものは22件だった。
3.原因別の内訳はウイルス性が7件,細菌性が2件,原因不明のものが13件であった。原因不明の腫瘍のうち主なものは血管腫が5件と一番多く,横紋筋肉腫の2件,血管肉腫と神経節細胞腫が1件,その他4件であった。
4.マレック病など発症までには至らない疾病の,農場における浸潤状況把握が可能となった。
5.腫瘍のうち原因不明が多く認められ,55日前後という極めて短期間のブロイラー飼育においても,未だ明確でない多様な疾病が含まれていることが推察された。
6.今後もこのような検策を継続していくことにより,生産性に大きな障害となる疾病の発症を防ぐことと,適切な衛生対策情報を迅速に農家へ提供していくことが重要と思われた。