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公開セミナー「明日につなぐ畜産技術」を終えて

岡山県総合畜産センター 経営開発部企画情報科

 岡山県畜産技術協会と岡山県総合畜産センターは共催により,平成14年8月29日に初めての公開セミナー「明日につなぐ畜産技術」を開催しました。当日は一般消費者,畜産関係団体をはじめ,関係機関等から総勢約100名の参加がありました。
 まず,同セミナーで行った研究発表や話題提供の概要をご紹介します。

@「牛のクローン技術について」

(総合畜産センター 有安研究員)

  総合畜産センターで研究している牛のクローン技術について,植物,魚などの例を交えながら紹介しました。クローン牛について理解することができ,安心したという意見もいただきました。

A「生ゴミ等有機資源のリサイクル技術について」

(総合畜産センター 白石研究員)

  循環型社会の構築を目指して,家畜排泄物や事業所等から出る生ゴミのリサイクルを推進するため,総合畜産センターで研究している生ゴミと家畜ふんの混合堆肥化技術について,研究成果や現在の取り組み状況を発表しました。また,家庭でできる生ゴミ堆肥化のポイント等も紹介しました。参加者から,畑を持っていない市街地などでは堆肥化と利用が困難なので,地域で回収するシステムができれば良いという意見がありました。

B「牛肉のトレーサビリティについて」

(県畜産課 菱川主査)

  BSEや食品の偽装表示問題の発生等により,「食」に対する消費者の信頼回復が急務となっている中で,岡山県における「牛肉のトレーサビリティシステム」について話題提供しました。このシステムは,牛肉の生産履歴情報(農家情報,飼料給与情報,衛生情報,流通経路等)が検索できるもので,10月から県産和牛肉を対象として,店頭表示やホームページ「おかやま和牛ランド」による情報提供を開始しています。

C「ドイツの食肉流通事情について」

(総合畜産センター 栗木専門研究員)

  バイエルン州における品質保証プログラム(QHB)について紹介しました。これは,同州産の農産物を対象として原産地や品質を証明するもので,牛肉,豚肉ともに早くから導入されており,トレーサビリティ導入の参考となったと思います。

 以上の発表の後,総合畜産センターで取り組んでいる研究課題のパネル展示や,銘柄食肉,畜産加工品の展示と試食を行い,大変良いPRの場となりました。最後に,参加者に回答頂いたアンケートの集計結果を取りまとめたのでご報告します。
 回答者は,男性13人,女性56人の計69人で,年齢は表1のとおりでした。

表1 回答者の年齢構成

 Q1「今回の公開セミナーの感想」について伺ったところ,およそ9割の方が「理解できた」または「概ね理解できた」と答えられました。
 Q2「県が推進している銘柄食肉についての知識,試食の感想」については図1のとおりで,名前を知っていても,売っている所や食べる所を知らない方が多く,どの銘柄も「もっと宣伝が必要」という意見が多かった。試食の感想は,過半数が「おいしかった」と答え,「今後買って食べたい」という意向も多く,PR効果は大きかったと思われます。

 Q3「BSEの牛が見つかった昨年9月頃と比べて,牛肉を食べる量や回数がどのように変わったか」の質問に対しては,「一時食べるのをやめたが,また食べるようになった」が46%と最も多く,消費の回復を伺えるものの,「減った」が17%と,依然影響が残っていると感じられました(図2)。

 Q4「牛肉の安全にどの程度,不安を感じているか」の質問に対しては,「少しは不安を感じる」が54%と多く,「大いに不安を感じる」という方も併せて,まだまだ信頼回復の手立てが必要と感じました(図3)。

 Q5「食肉を買うときにどんな点を重視するか」については,「産地」,「品質保持期限」,「価格」の順となり,産地表示の重要性が示されました(図4)。

 また,Q3で牛肉を食べる回数が「減った」という方は,50〜70歳代でしたが,うち3割の方が「大いに不安を感じる」と回答されました。一方,「牛肉を一時食べるのをやめたが,また食べるようになった」という方の内,76%は「少しは不安を感じている」ものの,購入時に「価格」よりも「産地」,「品質保持期限」,「銘柄」を重視している方が多いことがわかりました。
 その他,要望,意見としては,「消費者が安心して食肉を食べられるよう検査や研究を進めてほしい」といった安全性に関することが多く,安心安全な畜産物を供給できるよう試験研究機関としても対応していきたいと思います。また,銘柄食肉,加工品や,畜産センターでの研究等について,「もっとPRすべき」という意見も頂きましたので,今回のようなセミナーをはじめ,生産者や消費者との情報交換の場を今後増やす予定です。最後になりましたが,同セミナーにご参加,ご協力いただいた皆様には貴重なご意見をいただきありがとうございました。